表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/86

ガトゥ再来 1

 朝方の四時半頃だろうか。風が激しく「振れる」音がした。ガトゥか、紫紺の羽根団か。どちらかが祐樹達のもとを訪れたのだ。

 祐樹は上体を起こすと身構える。祐樹が大きな音を立てたので、梨奈もすぐに目を覚ました。二人は訪問者の顔を確かめる。その人物の顔は、おぼろげながら分かる。ガトゥだった。

 ガトゥは強引に祐樹の体を起こすと手短に用件を告げる。

「一つのトラブルは克服出来た。良くやった。次のシチュエーションだ。この便箋にライト兄弟への別れの言葉をしたためろ」

 ガトゥの容赦のないやり方に、梨奈は険のある声で反発する。

「ガトゥさん? あなたのやり方は横暴よ。よく説明もしないで、私達に協力させるなんて」

 ガトゥは少しも表情を変えない。厳しい顔つきで、梨奈にも便箋を差し出す。

「詳しく話をしているヒマはない。タイムワープを使った紫紺の羽根団との駆け引きが熾烈を極めている。君も別れの文章を書き記せ」

 祐樹と梨奈はやむなく黙って、便箋を受け取る。ガトゥは二人を落ち着かせる。

「不自然な兆候を残さずに彼らのもとから姿を消すんだ」

 梨奈は、ガトゥのどことなく漂う暗い影に、もう一度憎まれ口を叩く。

「完璧な秘密主義なのね。協力しなければ私達を未来へ帰すつもりはないのね」

 ガトゥは梨奈の言葉に何も反応しなかった。それはガトゥからの、二人への無言の要請だと祐樹と梨奈には思えた。仕方なく祐樹と梨奈は極短めにウィルとオービルへ別れの言葉を走り書きする。

(ウィルさん、オービルさん、再実験の成功おめでとうございます。俺達はしばらくの間、故郷へ帰ります。短い間でしたがお世話になりました)

 梨奈は自分で書き記した文章を一度覗きこむと、不服を漏らす。

「小器用な文面でイヤ。もっと時間を掛けたかった」

 ガトゥは二人から便箋を受け取り、封筒に仕舞い込むと、ベッドの上に添える。ガトゥは祐樹達の肩に触れる。

「なにぶん時間がないのでね。分刻みの争いになるんだ。少し乱暴な手段に訴えてでもこうするしかなかった」

 状況を何とか飲み込もうとする祐樹はガトゥに尋ねる。

「次はどの場所、どの時間に行くんですか?」

「四年後だ。以前君達を連れて行った場所だ。セルフリッジ中尉の死を食い止める」

 ガトゥは静かな闘志を胸に秘めている。その決意は祐樹と梨奈の心を打ち、揺り動かした。次の瞬間には、三人は目を閉じた。すると風が「振れた」。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ