祐樹の告白 2
祐樹の肌は血の気を失い、青白くなっている。すると扉を開けて寝室に入ってくる女性がいた。それは梨奈だった。梨奈は穏やかな口調で祐樹に話し掛ける。
「祐樹。平気? ウィルさんもオービルさんも心配してたよ。祐樹がずっと黙り込んでたから」
梨奈はベッドに腰掛ける。梨奈は祐樹の受けた衝撃の大きさを感じ取っているようだった。
「……私も、ショックだった。こんな終わり方をするなんて想像しなかった」
祐樹の体はこわばり、手はかじかんだ。祐樹はかすれた声を出す。
「俺の、せいだ」
梨奈は祐樹を落ち着かせようとした。梨奈は、梨奈には分からない祐樹の責任感を宥めようとしていた。
「あなたのせいじゃないよ。祐樹とは何の関係もない。メディアがラングレー教授を追いつめてしまった。ただ、それだけだよ」
それでも最早一人では、重荷に耐えられなくなった祐樹は声を絞り出す。
「俺が、殺してしまった」
「違うよ」
梨奈が毛布越しに祐樹の体に触れる。祐樹はもう一人きりでは事実を支えられなくなっていた。
「あるんだ。関係が。ラングレー教授の告発にも、教授の死にも。全部俺のせいなんた」
祐樹はもう一人孤独に、秘密を胸へと仕舞い込んではいられなかった。祐樹は隠していた事実を全て梨奈に話して聞かせる。
一連の事件のいきさつ、紫紺の羽根団、ガトゥ。彼らの未来社会。そして祐樹がこのどう騒動に関わったのかを、全て梨奈に打ち明けた。
梨奈は静かに耳を傾けていた。梨奈は、祐樹がガトゥと紫紺の羽根団にいかに利用されていたかをわかったようだった。
梨奈は祐樹の髪の毛に触れると囁き掛ける。
「どうして、もっと早く教えてくれなかったの? これからは二人で解決していこう? 何でも私に相談して」
そして力強く告げる。
「そうすれば未来へ、21世紀の日本へきっと帰れるはずだから」
祐樹は緊張が解れた。祐樹は優しい梨奈の言葉に励まされた。祐樹は今一度心を奮い立たせる。それから二人はしばらくの間、話し込んだ。ガトゥや紫紺の羽根団とどう対するか。そして何よりどうすれば無事に未来に帰れるかについて。
祐樹も梨奈もいいアイデアは簡単には思い浮かばない。でもトラブルを二人で解決しようとする事で幾分心は軽くなった。
梨奈は疲れ切った祐樹を力づける。祐樹は挫けそうだった気持ちをもう一度立て直すことが出来た。そして祐樹と梨奈はシンプルな約束をした。
一つは、紫紺の羽根団、ガトゥ、どちらであれ、コンタクトがあれば梨奈に知らせる。もう一つは彼らから指示があれば、それも梨奈に知らせるというものだった。
祐樹は少し悔しかった。梨奈を守ると決意したのに、逆に彼女に救われたからだ。祐樹の気持ちを察したのか、梨奈は祐樹の髪の毛にそっと利き腕の左手を添えた。
彼女は軽く祐樹の髪の毛に触れただけだった。だがそれだけで祐樹の気持ちは安らいだ。
祐樹はその夜、久し振りにぐっすりと眠れた。伸び伸びとした気持ちだった。だがその平穏はある人物の訪問によって脆くも打ち砕かれた。




