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オービルの独白 1

 ……翌朝、状況は劇的に変わった。トパーズの書いた記事が新聞に大きく取り上げられたのだ。

 書き方は控え目でありながら、人の心をとらえて離さない魅力があった。記事は、ライト兄弟の実験が成功したことと、ラングレーがどうして過ちを犯したかを指摘していた。

 記事は当新聞社主催の下、ライト兄弟の飛行実験をもう一度行うと締めくくられていた。記事を読んだウィル達は手を叩き合って喜んだ。

 梨奈もすっかりウィルとオービル、二人に魅了されていて、自分のことのように喜んだ。ただ一人祐樹だけが、この騒動の行く末について、不穏な予感を抱いていた。

 トパーズの記事の反響は大きく、その日の午後には多くの記者団がライト兄弟宅へ押し寄せた。記者団はライト兄弟に会見を開くように求め、ウィルとオービルはそれに応じた。

 記者団の関心はライト兄弟とラングレーの争いがどのようして始まったのかに向けられていた。ウィルは一つ一つ質問へ丁寧に答えていた。ラングレーとの争いはすれ違いがあるだけで、両者に悪意はない。最後には和解出来るだろうと話した。

 ウィルは記者団のどんな質問にも冷静だった。だがオービルは苛立たしげだった。オービルにウィルが視線を送って、それとなく宥めたほどだった。

 会見はウィルの気配りでスムーズに進み、質問は、最大のポイント、ライト兄弟が本当に空を飛んだのかに及んだ。

 二人は、決して嘘の実験成果を発表したりはしない、自分達は「空を飛ぶ」事自体が嬉しいのだ、と答えた。だが会見も終わりに差し掛かった頃、不意に、最後の質問が飛ぶ。

「ラングレーを名誉棄損で訴えるか。飛行機事業でどれぐらい収益を見込んでいるか」

 この質問には、さすがのウィルも表情が硬くなる。

「現時点ではコメントする段階にない」

 ウィルは寂しげにそう答えただけだった。ウィルとオービルは一週間後にもう一度、飛行実験を行うと約束して会見を終わらせた。

 会見を終え、家屋へ戻ったウィルとオービルは少し塞ぎ込んでいた。二人を元気づけるにはそっとしておいた方がいいと祐樹は思っていた。

 キャザリンも席を外し、祐樹と梨奈も屋外へ出た。祐樹と梨奈は意識せずに、飛行機の格納庫へ足を運んでいた。

 格納庫で陽差しを浴びるフライヤー号は鈍く光り、その能力が認められるのを今にも待ちわびているようだった。

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