表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/86

暗転 2

 祐樹がよろめきながら辿り着いたビルの隙間、陽差しがさえぎられた路地裏で、ガトゥは快く祐樹を出迎えた。

 ガトゥは、祐樹がトパーズの取材を、無事乗り切ったことに満足していた。これで紫紺の羽根団の計画も止められる。そうガトゥは楽観しているようだった。

 祐樹は、ダデュカ達が襲ってきたことについては何も話さなかった。まるで祐樹は、親に暴力されているのを打ち明けない子供のようだった。

 ガトゥはひとしきり今後の駆け引きを予測した。彼の頭の回転は早く、次の手、次の手を考えていた。トパーズの記事、ライト兄弟の再実験など。

 するとガトゥは話の最中、ふと祐樹の左頬のかすり傷に気づいた。ガトゥはその傷跡だけで何が起こったのか、理解したようだった。晴れやかだったガトゥの顔に陰が滲む。

「奴らが来たのか?」

 祐樹は口を閉ざす。祐樹は紫紺の羽根団はもちろん、ガトゥをも完全には信頼していなかったからだ。どちらも手際よく自分を利用している。祐樹にはそう思えてならなかった。

 祐樹が多少なりとも、ガトゥに肩入れしていたのは、ライト兄弟への愛着があったからだ。ライト兄弟への思いが祐樹のスタンスを決めていた。ガトゥは祐樹の肩を揺らして、もう一度尋ねる。

「奴らが来たんだな」

 祐樹は本心を打ち明けないつもりでいた。口をつぐみ、黙り込む。ガトゥは冷静に振舞う。

「ダデュカとレリュ。彼らから、『私達』の住む未来社会について聞いているだろう。私の言葉との違いにも気付いているはずだ」

 ガトゥは祐樹に何ら強制するつもりはなさそうだった。余裕をもってガトゥは祐樹に選択権を与える。

「祐樹。君には選ぶ権利がある。どちらに協力するかは君次第だ。君には自由がある。強制も、拘束もしない」

 祐樹はガトゥの勧めも100%信用はしなかった。ガトゥも紫紺の羽根団と同じ。「自分」の理想を守るためには祐樹一人くらい死んでも構わない。そう考えているはず。祐樹はそう推し量ると、事実だけを並べる。

「ウィルさんとオービルさんがしっかりと評価されて欲しい。それが俺の望みです」

 祐樹は、自分にタイムワープの能力が身につきつつある余裕からか、こうも付け加える。

「でも俺はどう動くか分からない。ダデュカ、レリュは梨奈を人質に取っている。展開次第では、俺は誰につくか分からない。それが本音です」

 ガトゥは少し祐樹に同情する素振りを見せる。それなのに彼の人間味は厚いヴェールで覆われていた。ガトゥは祐樹を諭すようにこう口にする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ