告発文書 3
ラングレーのライト兄弟を批判する記事は、それから二、三日紙面を賑わせた。記者達は、興味本位にライト兄弟が不正を犯したと暴き立てる。
メディアはウィルとオービルへの取材もなしにウィルとオービルを責め立てた。
ライト兄弟への取材申し込みがあったのは、ラングレーの批判記事が掲載されて四日後の事だった。
オービルは取材を申し込んだ相手に対して、怒りを剥き出しにし、自分達が正しいと主張しようとした。だがウィルがそれを止める。
「今の段階では教授の真意が明らかではないのでコメント出来ない」
そう丁重に取材を断った。それがのちに身を結ぶ事になる。ガトゥの計画が思い通り運ぼうとしていたのだ。
やがて祐樹とガトゥが前もって新聞各社に送ったラングレーを告発する文書。それがメディアの目に止まった。
それはウィルが取材を断って数日経っての事だった。一紙、また一紙と祐樹とガトゥの主張を取り上げ始める。
初めは穏やかなトーンだった。一担当記者による「以下のようにラングレー教授のライト兄弟批判に疑問を感じる」などの結び。
その程度の控え目な論調だった。ただ世論の反応は凄まじい。ライト兄弟を批判する流れは、事実を追求するものへと一気に傾いた。
ライト兄弟を疑うだけでは飽きたらなかったのだろう。人々も歴史に残る発明を待ちわびていたのだ。
すると新聞各社は徐々にフェアな報道を始めた。もう一度各メディアの前でライト兄弟が飛行実験を成功させればよい。
そう記者達の姿勢は変わった。ウィルは駆け引きに期せずして勝利したのだ。
その証拠にライト兄弟宅へ、実験を再開するように求める手紙が殺到した。ライト兄弟宅の郵便箱は、励ましの手紙で溢れかえった。
ある時には郵便配達夫まで拳を振り上げてこう言ったほどだ。
「ラングレーの権威を打ち砕いてください」
ウィルとオービルは人々の声援に力付けられ、手をがっしりと握り合った。一方ラングレーの立場は一変する。
「フェアな人物」というイメージが危機に晒され、「保身を図った権威」というレッテルを貼られたのだ。
実際にはラングレーにも間違いはない。
彼は「紫紺の羽根団」が書いて、祐樹が忍ばせた「偽の論文」に振り回されただけだ。
この状況にウィルとオービルの二人は複雑な気持ちを隠せずにいた。
もちろん二人は自分達が疑われるのを望んではいない。だが一方でラングレーの失墜も望んではいなかった。
祐樹は切なさで心が締め付けられた。ラングレーの「ミス」も「失墜」も全て祐樹に原因があるからだ。
祐樹は胸が張り裂けんばかりの想いでいた。だがそんな気持ちに浸る暇さえ与えずに「彼」はやってきた。
そう、ガトゥだ。
ガトゥは買い物に出掛けた祐樹を捕まえるとすぐにタイムワープをした。風が「振れて」、祐樹は時間と場所を移動した。




