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教室にはいると、やはりクラスは今日来る転校生の話で持ちきりでした。
「ねぇねぇ、知ってた?今日、転校生がくるんだって!!しかも、私たちのクラスに!!」
「え、マジで!?」 「おいおい、知らなかったのか?お前。それより・・・・」
『女子なのか!?男子なのか!?』
「どうも、男子らしいのよ。それも、ヨーロッパからの帰国子女!!」
「なーんだ、男子か。残念・・・」
と、話をしていた男子はがっくりと肩を落としていましたが。
しかし、なるほど、帰国子女とは・・・・なかなかいい設定じゃないですか。そこにIQ180で小さいのがコンプレックスというのを付け加えたら、どこぞの生徒会役員みたいですね。性別は違いますが。
と、そこで先ほど話をしていた中の一人が、私に気づいて駆け寄ってきました。
「おはよう、善子ちゃん。善子ちゃんは知ってるかな?ほら、今日このクラスに・・・」
「転校生が来るんだよね。男子で帰国子女の。」
「なぁ~んだ、聞いてたのか。ちょっと残念。」
そういうと、天谷祥子ちゃんは長めに結んであるポニーテイルを揺らし、苦笑いしました。
祥子ちゃんは、このクラスでは情報屋のような存在で、新聞部で鍛えている情報収集能力 ー祥子ちゃんは新聞部の副部長なのですー を発揮して、いろいろな噂を集めるのが得意らしいです。
茶髪のポニーテイル、少し焼けている肌、そして、なぜかいつもつけている眼帯。ネタを求めて東奔西走している姿はなるほど、確かにクラスメイトが彼女のことを『村雨高校の走る海賊』と呼ぶのもうなずけます。
「そういえば、どうして祥子ちゃんは眼帯をしているの?」
私が聞くと、彼女は表情を暗くさせ、
「あ、うん・・・まぁ、ちょっとね・・・事故っていうか・・・まぁ、そんなことがあってね・・・」
・・・なんだろう・・・なぜか気にかかります。祥子ちゃんは、一体なんの事故に巻き込まれたのでしょう。しかし、詳しく聞こうとしたとき・・
キーンコーン カーン コーン・・・・
KYなチャイムが鳴り響き、祥子ちゃんは「て、チャイム鳴っちゃったよ!!早く席に座らなきゃ!!」と言い、自分の席に戻っていきました。私の席は廊下側の列の一番後ろの席・・・つまり、後ろ側のドアから一番近い場所ですが、祥子ちゃんは窓側の一番前の席・・・私とは正反対の場所なので、話を聞くのはなかなか難しいのですが・・・
「やばいやばい、もうチャイムが・・・って、どうした?善美。ドアの前で突っ立って。早く入りなよ。」
「あ、うん。ごめんごめん。」
後ろから、遅れて教室に到着した通子ちゃんがきたということもあり、私は席に着くことにしました。祥子ちゃんの事故に関しては気になりますが、やはり今は転校生。一体どんな人なのかな・・・・?