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六刻




「佐藤くん」

―――佐藤くんの言葉をとめたのは糸子だった。

「あ、ごめん遮っちゃった!えと、と何?」

 遮ったことを慌てて謝り、先を促す糸子。

「え、あの、その―――土岐原どして俺と一緒に?外見てたの?……それとも誰か見てたの?」

 佐藤くんはしどろもどろに言葉をつっかえながらいい、いったあと顔を真っ赤にした。ついでに時計も赤くなり始め、ぐんぐんとデジタルの数字が進む………もう11時だ。

「えと」

―――同じように、糸子も顔を赤く染める。つられて赤くなったのか、それとも自ら赤くなったのかわからない。でも、ガラス窓にうっすら映る自分の時計が赤くなっていた。すりガラスで見えにくいが、針が進んでいるように思える。そしてアクロバティックな動きが激しい。……そして、このアクロバティックな振り子少女が、弟諸君がこの間の連休に、きたる父兄参観日にむけて製作していた振り子だと思い至る。画用紙とクレパスを使って、班で仕掛け絵本をつくるらしい。弟達は確かアクロバティックな少女を題材にした飛び出す絵本をつくる!とかわめいていた。振り子みたいにぐるんぐるん振るんだとか。あの振り子時計みたいに製作途中で壊れたりしないかとひやひやした思いがある。

「あの………」

と、糸子ももごもごと先が続かない。しかしじっと佐藤くんが見てくるので、勇気を出して発言する。

「佐藤くんが………えっちゃん見てたから」

と、もごもごとぼそぼそと発言してみれば、さらに佐藤くんが赤くなり、時計も真っ赤になり、ついにあと数分で12時!というところで止まった。それを見て絶句しながら、うすうすとひとつの答えに糸子は気づき始め、すりガラスに映る自分の時計を見てさらに絶句した。佐藤くんの頭上の時計のように一気に赤くなり、一気に針が進み、「「「「姉ちゃんがんばれー」」」」と何故か弟諸君の励ましとともに時計が煙をたてて消えた。……何故アラーム音が弟諸君?

「…………えと」

 顔を真っ赤にしながら、糸子は佐藤くんを見て、今まで生きてきたなかで一番に勇気を振り絞って一言。

「佐藤くんが、好き………だから、佐藤くんがえっちゃん見てるの気になったの………」





―――さぁ、この先は語らずとも皆様はおわかりだろう。佐藤くんの時計がどうなったかは、皆様のご想像どおり。糸子は見事に時計の針が揃う場所を手にいれた………かつての両親が手に入れることができなかった場所を手にいれたのだ。


 そして、えっちゃんの頭上の時計も同日に消えたことを追記しておこう。えっちゃんの想い人は、佐藤くんがよくつるむ相手の一人で、えっちゃんが体当たりよろしく想いを告げて時計が消えた。そう、えっちゃんにも春が来た。





―――糸子は自身の春呼び時計が消失して以来、まだ様々な人の春呼び時計が見えている。今は、この間ふたり揃ってお世話になったふるたんぼの頭上。体育系教師ふるたんぼ先生に似合わず、とても可愛らしいキャラクター時計。




 ……出現すれば必ず春が来る春呼び時計。あなたの頭にも、あるかもしれない。

もう一話、番外編があります。

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