僕は有田。よろしく
僕の、親友と彼女との出会いは中学2年生の春でした。
二人とも、当時の僕のはすごく衝撃のある出会いで・・・
今でも、その当時を思い出すと心がキュンとなります。
彼女との出会いは、中学2年生の春。
中学生になって初めてのクラス替えの時だった。
あ・・・水本との出会いも同じ日だった。
始業式の日、決められた新教室に集まると、みんながそれぞれに自分の知った顔を探す、
「おお、また同じクラスやん!」
「あいつ何組になったんや?」
あっち、こっちで、再会や出会いに、大声が飛び交っていた。
もともと人見知りで、友達の少なかった僕は、
ポツリと自分の席に座り、新しいクラスメートの顔を、
チラチラと見る程度だった。
そんな中に、彼女はいた。
窓際の席に座る、その子。
彼女の後ろで揺れる教室の白いカーテンが一層、彼女を綺麗に見せた、
その子の周りには大勢の女子がいた、
みんな笑顔で楽しそうだが、
その子の笑顔は、それを見た者をも幸せにさせる輝きがあった。
クラスの男子もチラチラとその子を見ている様だ。
こういっては、他の女子に失礼かもしれないが、
その子は別格だった。
肩の上で揃った少し茶色いその髪は窓からの日差しでキラキラ輝き、
白い肌に浮かぶ大きく黒い瞳は吸い込まれる様だった。
そうか、僕は一目惚れしたんだ・・・
他人事の様に冷静に、それでいて夢の中の出来事の様に、
恋をした。
突然現れた初恋に、心がフワフワして、
なんだか心地良い気持ちになっていた僕を、
ひときわ大きな声と、ひときわ大きな動きで、
邪魔する、変な奴がいた・・・
水本たった。
なぜ変な奴だと思ったか、それは、
当時、髪を染めてる同級生はいたが、
パーマをあてていたのは水本だけだった。
それも、なぜか、大阪のおばちゃんの定番ともいえる、
ゆるいくるくるパーマ。
それは、不良の先輩にも一目置かれるほどの
強烈なインパクトだった。
「こいつは小学生の頃の友達やねん!」
「お前、見たことあるな?誰やった?」
「お前こいつ知ってるか?」
ひときわ大きな声で、友達の輪を広げていく。
「俺は水本。よろしく!」
「俺はハンドボール部の水本。よろしく!」
「俺は水本、高川小学校やってん!よろしく!」
友達の友達は皆、友達だ、世界に広げよう友達の輪。
聞いた事のある言葉だったが、目の前でそれを見たのは
初めてだった。
僕みたいに、人とうまく付き合えない奴もいれば、
こんなに簡単に人と向き合える奴もいるんだな・・・
と感心しながら、その様子を見ていたら、
水本と目があった・・・、
僕は、目立つ髪型の水本を何度か見た事はあったが、話した事は無い
当然向こうも僕を知らないはず、
まぁ、先ほどから水本の自己紹介は耳に入ってきていたから、
この男の、名前、大体の住所、部活、兄弟構成まで僕は知っていたけど・・・
「お前は何組やったんや?」
え?
確実に僕に、話しかけている!
まじか!?
水本の奴、いきなり話しかけてきやがった!!
まだ、心の準備できてねぇ~よ!
さっきまで、初恋で心がフワフワして気持ちよかったのに・・
「一年の時、何組やったんや?」
水本は、もう一度聞いてきた。
(はやく答えなきゃ!)
「3組ぃ」
あ、ひっくり返った!
声が裏返ってもた!
水本の後ろの奴らが、クスクス笑ってる・・・
俺の声を初めて聞いたであろう奴らが、
まさかの裏声に笑ってる・・・
「そうか、じゃ佐々木|≪ささき≫と同じクラスやったんやな」
え?水本は全く笑っていなかった、
僕の、情けない「3組ぃ」を何も無かったようにその後も会話を続けた。
「俺、水本。よろしくな!」
「あ、うん。僕は有田|≪ありた≫。よろしく」
こいつ、いい奴なのかも
なんか見た目は変わってるけど、悪い奴じゃないな。
会話をしながら人見知りの僕は、どんどん水本の魅力に惹かれていった。
それと同時に、水本との会話の最中もずっと気になってしかたなかった
窓際の彼女、彼女への思いもすごい勢いで膨らんでいた。
これが彼女と水本との初対面、
どういう訳か、その数か月後、水本とは気が合って、気づけば
クラスでは誰もが≪ニコイチ≫と呼ぶほど、いつも一緒にいた。
それとは逆に、僕が彼女と初めて話をできたのは、まだまだ先の事だった。