素敵な文章
彼女の為なら、命だって惜しくはない・・・
そんな格好のいい台詞を、心から言える、
そんな強い男になりたい。
そんな事を、思い続けてもう何年たったんだろう・・・
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「で、居酒屋の面接どうやったん?」
と電話越しに聞こえるのは、水本の声だった。
「あ、うん、明日から来てくっれって・・・
なんか、気に入ってくれたみたい。」
水本《みずもと》は、僕の中学時代の同級生、
高校を卒業後、専門学校に行き、
今は、車の整備士をしている。
「まぁ、とりあえずのバイトにしても、早く定職探せよ、
もう25歳にもなるんやから、いつまでもフリーターってのもな、
だいたいお前は・・・」
こいつは、電話をかけてくると決まって僕に長い説教をする、
「仕事は決まったのか?」
「実家には帰っているのか?」
「彼女とは会っているのか?」
「自炊もしろよ!」
まるで、母親の様な説教をする。
まぁ、25歳にもなって自立していない僕に説教してくれるのは、
こいつぐらいなもんだ、
親ですら、最近は何も言わなくなった。
たまに電話をかけてきては、暇つぶしでも長々と説教をしてくる水本には感謝している。
「おぅ、分かってるよ・・・
明日から行く、居酒屋のバイト、仕事覚えたら正社員にしてもいいって言ってくれたし。」
「そうか!良かったやん!ほな、とりあえず週末に誰か誘って飲みに行くわ!
安くしてくれる様に店長に頼んでや!」
「アホか!入りたての俺が、そんなん言える訳ないやろ!?」
「ガハハ!冗談やん!じゃ、週末な!」 ガチャ・・・・
と、いつも長々と説教をし、数日後の約束をしたら、
自分勝手に電話を切るのも毎度の事だ。
水本とは、学生時代から、そんな男であり、僕の親友だ。
僕は、今日の面接で、明日の初出勤にノートを持ってくるよう言われたのを思いだし、
近所のコンビニに向かった。
この辺りは、大阪市内とはいえ、繁華街から離れた緑の多い場所だ、
近所には大阪城を囲む、大阪城公園があり、
犬の散歩や、ジョギングをする人、観光客、
あとは、住所が大阪城公園という青いシートで暮らす人達で一年中賑わっている。
僕も、ここを気に入っているし、彼女もここを好きだと言っていた。
僕は、その公園を横目に、歩いた。
彼女に、仕事が決まった事を伝える、素敵な文章を考えながら・・・