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アラサーからのダンジョン探索~英雄は目指さない。マイペースに遊びながら稼ぎます~  作者: 迷子
第一章 脱サラ探索者デビュー!

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第14話 パーティークラッシャー姉妹①ー(2)


「この辺りでいいかな。それじゃあチヨちゃん。お願いできる?」

「はいっ!」


 当然ながら、俺たちは七海姉妹の能力に関してタケさん達から聞いている。そして特に俺達に足りない能力を持っているのが、チヨちゃんの方だ。


 ちなみに、俺達の能力は彼女達に伝えていない。俺達というか、俺のスキルは秘匿すべきものだからな。信用できるかも分からん相手には絶対言いたくない。


 そのことは真帆さんもむしろ賛同してくれて、言わない方がいいと向こうから言ってくれた。ふっ、この不平等条約が許される立場よ。


 パーティー間に微妙な緊張感を漂わせる中、ダンジョンの入り口からそれなりに歩いたところで、早速チヨちゃんの力を借りることにした。


「ピーちゃん、お願いねっ」

「ピッピー!」


 チヨちゃんの言葉に、肩に止まっていたシングバードが一鳴きして空に羽ばたく。


 小鳥型とはいえ魔物を肩に留まらせながら、ダンジョンの外でも連れ歩く姿でもう想像出来る人もいるだろう。


 チヨちゃんは〈調教師テイマー〉。魔物を従え操る特殊職だ。


 小さな羽を懸命にばたつかせ、シングバードが空を飛ぶ。空から敵を見つけてもらい次第、俺達がそこへ駆けつけると言う形だ。


 小さな鳥ゆえに戦うことは苦手らしいが、こうやって索敵役として彼女はパーティーに貢献していたらしい。まさしく俺達が求めていた人材である。


 見通しの良い草原地帯なら、空から鳥の視力で索敵は反則的だよな。これなら確かにレベル上げが捗る。


「敵を見つけたらここに戻ってくるの?」

「いえ、【意思疎通】っていうスキルがありまして、一定の距離ならピーちゃんの意思が伝わってくるんです。だからすぐに知らせてくれるんですよっ」


 それはちょっと凄いな。トランシーバーが使えるようなもんだろ?


 ダンジョン内は特殊な空間のせいか、電子機器の利用はともかく通信関係が使えない。ビデオ撮影はできるけどライブ配信は出来ない、みたいな。そんな環境で魔物だけとはいえ、離れた相手に意思伝達が出来るのは勝手がだいぶ違う。


 むぅ、と。伊波は唸るような声を漏らした。


「情報交換が出来て、空から敵を捕捉し続けることも出来る。道中の安全確保も出来るよね。このフロアでの索敵は完璧になるな」

「警戒しながら進むのは神経を使うんだよな。正直それが無くなるのはかなり助かる」

「話には聞いていたけど、これはかなり有用だよな。この子以上の索敵役って居ないんじゃないか?」


 チヨちゃんの評価は俺たちの中で鰻登りだった。マジでこの子を手離すことになった奴らはバカだろ。


 本心からの感想を言っていたのだが、何故かチヨちゃんはびっくりしたようにこっちを見ていた。そして、照れくさそうに笑う。


「えっ? えっ、えへへへ。そうですか? あっ。でも、私戦えないから……」

「そこは得意不得意の問題でしょ。というか、テイムの魔物を増やせばそこも解決できるんじゃないの? 草狼はテイムしないの?」

「それが出来るならとっくにやらせてますよ」


 はぁ、と七緒さんはため息を吐く。俺への嫌味というより、諦めからかな。


「〈調教師〉にはテイム出来る数や、魔物の種類といった制限があるそうです。今のチヨだと、あの鳥一匹しかテイム出来ないんですよ」

「具体的に言うと、私は一匹しかテイムできないです。あと、魔物も鳥系だけしか……」


 ああ~、なるほど。

 数的にも種族的にも、草狼はテイムできないのか。そりゃそうか。でないとシングバードをわざわざテイムしないよな。戦闘も索敵もこなせる草狼だったら理想的だったし。

 

 たらればだけど、最初に草狼のテイムが出来ていたら、今頃この二人もこんなに苦労してなかっただろうな。運が悪いというか、なんというか。


「でも、それって今だけの話だよね?」

「えっ? えっと、それってどういう……」


「レベルが上がればテイム出来る種族も数も増えるでしょ? そうなったら一気にチヨちゃんの戦力は上がるよね」

「えっと、それは……そうですね?」


 仮に草狼までテイム出来たら、それこそ戦闘も任せられるし。あのシングバードもそのうち戦えるようになるだろ? 


 真帆さんが言っていたレベル五まで上がればってのも、たぶんそのあたりを見越していたからだろう。そこまで行けば俺達に頼る必要もなくなる。


「アンタね。そんな簡単に……ふぅ」


 呆れながら何か言おうとした七緒さんだが、疲れたように首を振ると、また黙る。


 なんでや。別に変なこと言ってないだろ。五レベルくらいなら誰だっていくだろ。


「ところであの子、ピーちゃんって言うんだね?」

「はいっ! “ピグマリオン二世”でピーちゃんですっ!」


 ピグマリオン二世!?


 予想外の変化球が来たな。泣き声とかじゃないんだ?


「意外とカッコイイ名前だったのね。というか二世って、まさか先代が居たり? ――いや、これ無神経だな。ゴメン」

「いえっ、お気遣いありがとうございますっ! でも大丈夫ですっ! ピーちゃんが最初の友達ですのでっ!」


「あっ、そうなんだ。ん? じゃあ何で二世なの?」

「その、幸いまだピーちゃんは死なないで済んでいますけど、いつか死んじゃうこともあるだろうから、あまり情が移ると良くないかなって思ってあえて……もちろん死なせないようにしますし、出来ればずっと一緒に居たいですけどねっ!」


 おっ、おう。思ったより現実的な目線での命名だったのか。

 この子、可愛い顔して意外とシビアな考え方するな。頼もしいわ。


 チヨちゃんの頼もしさに感嘆していると、ほう、と伊波が感心の声を上げた。


「二世云々はともかく、ピグマリオンというのは洒落た名前だね。君がどういう風に可愛がっているのかが良く分かる。ピーちゃんにもそれが伝わるといいね」

「えっと、確かにピーちゃんのことは可愛いと思ってますけど。何か意味がある名前なんですか? ピーちゃんって呼びたくて、検索して出た名前の中から選んだだけなんですけど」

「……あとでピグマリオン効果で調べるといいよ」


 賢しげに語って全然違った時、気まずいよな。

 ちなみに俺もピグマリオンって知らない。あとで調べよ。


「ところでピーちゃんって、魔物だけど何を食べさせてるの? 名前つながりでやっぱりシャトーブリアン?」

「魔物でも、食べる物は見た目通りで大きく変わらな――シャトーブリアン!? そんな私だって食べられない物あげるわけないじゃないですか! 今の私達のご飯ってお米とモヤシ炒めがメインですよ?!」


 ここにもモヤシの民がいらっしゃいましたか……。

 まさかそのせいで真帆さん達も力になろうとしてるのか?


「チッ。これだからオタクは……」


 ボソッとぎりぎり聞こえる声の大きさで、七緒さんが呟く。

 いや、これは言われても仕方ないわ。チヨちゃんが話しやすくてつい、いつものノリになってしまった。


 これは流石に恥ずかしい。気を取り直して……ん? もしかして今のネタ分かったの?


「あっ、ピーちゃんから連絡が着ました。こっちだそうです」


 そう言って、チヨちゃんが歩き出す。その護衛を務めようと、さり気なく川辺が傍に寄った。


 チヨちゃんは周りを見ることなく、スイスイ足を進める。ついていくこっちがビビる程だが、同じくスタスタと歩いている七緒さんを見る限り、敵が居ないことを確信しているのだろう。


 戦っている他のパーティーや、複数で固まっている魔物を遠目に見ながら十分ほど歩いた所で、ホバリングしているピーちゃんを見かける。その真下あたりに、角ウサギが草陰に潜んでいた。


「おお。マジで居るじゃん。何週間ぶりだ?」

「本当にそれくらいだよな。川辺、準備は?」

「いつでも来い!」


 珍しく川辺はやる気に溢れている。なら、いけるなってことで――うりゃ!


 俺が投げた〈鈍化薬〉は上手く決まり、角ウサギの周辺に粉が舞う。くしゃみをしていた角ウサギが俺達の存在が気づくが、そうしている間に川辺が既に接近していた。


「――しゃあ!」


 ボゴンッ! と完璧に角ウサギの頭部を捉えたメイスが、一撃で頭蓋を砕く。ピクピクと若干震えたウサギに速やかにトドメを刺し、はい、一丁上がりと。


 ビッ、とメイスに着いた汚れを払い、川辺はカッコつけた。


「ふっ、他愛もない」

「――すごーい! こんなにあっさり! 川辺さんつよーい!」

「えっ、そう? まぁ楓太の援護もあったし、一対一ならこれくらいね」


 やや大げさと言えなくもないチヨちゃんの反応に、川辺はデレデレとした顔を見せる。お前まんまとやられてるじゃねぇか。探索前の態度はどこ行った。


「よし、そんじゃ剥ぎ取るわ。チヨちゃんは次の獲物を探してくれる? 他は護衛を頼むわ」

「あっ、はいっ。それじゃあピーちゃん。次もお願いねっ」


 ピー! と応え、また遠くに羽ばたいていくピーちゃん。働き者で素晴らしい。これから過労死させちゃうレベルで頑張らせちゃうぞ~! ぐへへへっ!


 内心で一人芝居しつつ解体をしていると、おそるおそると、七緒さんが声をかけてきた。


「あのっ、小畑さん。口を出すようで申し訳ないのですけど、さっきのマジックアイテムですよね? もしかして、支部の売店でも売っている〈鈍化薬〉じゃないですか?」

「そうですよ。よくわかりましたね? あれ使う人がほとんどいないから、棚にも置かれてないのに。粉状にしたら何のアイテムか分からなくないですか?」


「私達でもレベル上げを出来ないかと、いろいろと調べてましたから。アイテムを使うってことも考えたんです。形状は効果を見て、もしかしたらと予想しただけで……だけどその、たかが角ウサギの一匹相手にアイテムを使うのはやりすぎじゃないですか?」


「ああ、確かにそうかもですね。でも怪我無く済ませられるならそっちの方がよくないですか? 伊波の【魔術】も節約出来ますし」

「それはもちろんそうなのですけど。そうか、【魔術】……伊波さんは〈魔術師〉なんですね。それなら……いや、でも……」


 ぶつぶつと七緒さんは呟き、また何か悩み始めた。

 何を考えているのかは知らんが、まぁ絡んでこないならそれでいい。


「さて、解体終わりと。チヨちゃん、次の獲物はどうかな?」

「ごめんなさい。単独の魔物は居ないみたいです。他の人達が戦ってたりしてます。近くに草狼は居るみたいなんですけど、三匹も固まっていて」


 草狼が三匹か。確かに多いが……。


「どう思う?」

「いや、今の俺と伊波なら行けんじゃね?」

「僕もそう思う。一回試してみたいな」


 だよな。意見が合って良かったわ。


「じゃあチヨちゃん。その草狼の所まで案内して」

「えっ? えっ……え? く、草狼が三匹ですよ?」

「ちょっと! 流石に無茶じゃ――」

「僕らに合わせるという約束だ。そして僕らは無理なことはしない。いけると思ったからやるだけだ。嫌ならここで帰ってもいいよ」


 伊波が切って捨てるように言うと、ぐっ、と七緒さんは言葉を飲み込んだ。


 またこいつは容赦ないな。まぁしかし、揉めるのも面倒だしな。このままでいいか。どうせ短い付き合いだし、結果で納得してもらった方が早いだろ。


 うろたえつつも先導するチヨちゃんについて、五百メートルくらい歩いただろうか。


 先ほどと同じくピーちゃんが飛んでいる真下に、ポツンと草狼が見えた。が、一匹だけで他には見えない。ピーちゃんがゆっくりとチヨちゃんの肩に戻ったところで、確認する。


「一匹しか居ないけど? 三匹じゃないの?」

「ここからだと見えないですけど、岩陰にもう一匹。あと、戦い始めたら近寄って来そうな距離にもう一匹いるみたいです」


「そういうことか。凄いねチヨちゃん。俺らだけだったら危なかったかも」

「えっ、えへへっ。ありがとうございます。でも、お礼ならピーちゃんに」


「うん。ありがとうなピーちゃん」

「ピピッ! ピーッ!」


 円らな瞳を輝かせ、嬉しそうに鳴くピーちゃん。可愛い。思わず指で頭を撫でてしまう。命懸けの戦いですり減った神経が癒されるぜ。俺ほとんど戦ってないけど。


「三匹ですけど、本当に大丈夫なんですか? まともに戦えないんですよ私達。いくら川辺さんが強くても、三匹は流石に無茶では?」


 そしてこっちは可愛くない。小鳥以下の価値しかないよ、お前。


「大丈夫だから、見てて。たぶん上手くいくから」

「大丈夫って、最初に薬を投げるだけでしょあなた。なんの保障にもならないんだけど」


 ……俺は大人。俺は大人。大丈夫、何を言われても気にしない。今だけの我慢。終わったらさようならすればいい。


 七緒さんには答えず、二人に目をやる。すると、向こうも目で頷いてきた。


 準備が出来ているなら――!


「――しっ!」


 一匹だけ見えている草狼に、〈鈍化薬〉を投げる。上手く破裂し粉が舞うが、どうやら投げた段階で気づかれたようだ。


 隠れていた草狼と合わせて二匹、粉を避けるようにしてこっちに突っ込んでくる。さらに少し遠い所から、もう一匹が近付いてくるのも見えた。


「わっ、あっ、ああ! 小畑さん! 来てますよっ!」

「ちょっと、どうするのっ?!」


「慌てんな。こっちには来ないから大丈夫」

「来てるでしょうが!」


 青ざめるチヨちゃんを庇うように、七緒さんがダガーを抜いて構える。美しい姉妹愛だ、と観察する余裕がある。


 なんせうちには全く頼りになるようには見えないが、実は素質あるデブが居る。


「かかってこいやぁあああああああ!!!!」


 川辺が雄叫びを上げると、そのデカい身体が赤く光る。若干目に痛い光がなんとも鬱陶しい。味方である俺がそうなのだから、敵にはなおさらだろう。


 防御を固めるデブに、三匹の草狼が殺到する。童話でさえ子豚三匹に狼一匹なのに、これは明らかにオーバーキルだろう。そんな冗談を思考する余裕があるほど、川辺は安定していた。


【挑発】持ちが意識してスキルを使用すれば、攻撃してくる方向すらコントロールできる。タケさんからコツを伝授された今の川辺なら、防御に専念すればこれくらいはできるってことだ。


「――おらっ!」


 そこを俺が追い薬よぉ!


「――クシュンッ! クシュッ! クシュッ!」

「――ぶひゃぁあ! へぶしっ! お前後で覚えておけよ?!」


 一か所に集まった狼ならば、〈鈍化薬〉も躱せまい。三匹纏めて薬を吸い込み、その動きがさらに鈍くなる。そうなると、川辺がより楽になる。


 川辺も薬を吸う羽目になっているが、これはコラテラルダメージというものよ! 大丈夫、対策は既に打っているから!


 そしてここまでお膳立てして時間をかければ、こっちの切り札の準備が整う。


「――アイスダガー!!」


 川辺の誘導により一か所に纏まっている狼達に、伊波の【魔術】が突き刺さる。


 太い氷柱が胴体に刺さった草狼は、最早抵抗する力はない。あとは虫の息となった草狼達を、順番に川辺がトドメを刺していく。


 こちらに被害はなし。草狼三匹を相手に、またもや短時間であっさりと戦闘を終えた。


 あっけない勝利に、七海姉妹はポカンとした表情を見せる。が、すぐに正気を取り戻すと、興奮した様子で戦った二人を褒め称えた。


「こんなにあっさり……すごーいっ! 川辺さんも伊波さんも凄いですっ! 今までの人達と全然違いますっ!」

「驚きました。本当に強かったんですねっ。実力を疑ってごめんなさい」


「おっ、おう? まぁ、俺は盾になっただけだから。そんなに大したことねぇよ」

「僕はただ場を整えられたところに【魔術】を放っただけだ。出来て当然だよ」


「そんなことないですよっ! 少なくとも今まであんなに簡単に倒した人は居ませんでしたからっ! 自信持ってください!」

「謙虚なんですね。そんなに強いのに驕らないなんて素敵だと思います。でも、川辺さんは薬を一緒に受けていましたけど、大丈夫なんですか?」


「ああ、大丈夫。仕掛ける前に、さり気なく解毒剤を飲んでたから」


 そうこれが今回の秘策。あらかじめ巻き込まれそうだと判断した時は、先に解毒剤を飲んでおくように打ち合わせしたのだ。そうすればフレンドリーファイアを気にせず俺もアイテムが使えるからな。


 よっぽど二人の強さに感動したのか、姉妹揃って称賛が止まない。美人達からチヤホヤされ、なんだかんだアイツらも満更ではなさそうだ。


 しかし、チヨちゃんはともかく七緒さんまであそこまで褒めるとは。誰だこいつってレベルで態度が変わってるし。今の戦闘がそれ程の価値があったのか?


「確かに上手く戦えたと思うけど、今のってそんなに凄いの? あれくらいなら他に出来る人もいるんじゃない?」

「――はぁ? 同じパーティーに居て、この凄さが分からないんですか。あなた今まで何を見てたんですか?」


「――――――」


 ああ、もういいわ。


 自分でも驚くくらい、スッと心が冷めた。何気なく聞いただけで、まさかここまで酷い軽蔑の目を向けられるとは思ってなかったわ。


 あれだな、自分に話しかける俺は下心があるとか思われてんだろうな。あと、所詮荷物持ちとか、アイテムを投げているだけとかで舐められてんのかな。


 少しでも円滑に進むよう、あえて話を振っていただけなんだけど、コイツには最低限だけで話しかけるのもやめよ。歩み寄る気がないなら気を使う必要ないわ。めんどくせぇ。どうせ五レベルまでの我慢だしな。いや、なんだったら今日で解散でもいいし。


 顔に出ないようにしつつ、チヨちゃんの方に話を振ってみる。


「何度か違うパーティーを経験したんでしょ? その時はこんな感じに出来てなかったの?」


「全然ですよっ! こんなに安全に戦っている人達なんか居ませんでしたっ! 小畑さんみたいにアイテムなんか使えないし、川辺さんみたいにどっしり構えている人が居なくて、皆で一斉に攻撃するばかりで! 伊波さんみたいに【魔術】を使う人もいたんですけど、魔物に当てるどころか味方に当たりそうになったりして危なっかしかったんです!」


 思った以上にチヨちゃんは熱弁してきた。これは前のパーティーの戦いがよっぽどだったんだろうな。


 今の内容だと、川辺みたいな【挑発】持ちが居なかったんだろう。だから敵をコントロールできない。魔物も動き回るから、【魔術】も当てられないって感じか。


 そうか、気づかなかったけど、【魔術】って当てるのに技術が要るものなのか。思った以上に【挑発】が強いな。これがあるだけで【魔術】も活きて、戦術的に戦えるようになる。今更ながら川辺がこの段階で取得できたことが本当にデカいぞ。


「そうやって戦っているうちに、怪我する人が増えちゃうんです。そうなるとポーション代で赤字になって、どんどん空気が悪くなって。私は戦えないから、せめて応援したりしたんですけど、そうするとなぜかチームワークが更に悪くなってギスギスして……もうどうしようもありませんでした」


「そっか。大変だったね……」


 う~ん。それはたぶん、君に良い所を見せようと全員が前に出たがったんだろうねぇ。んでもって、必死にこっちを見ないようにしている七緒さんはそれに気づいていた感じか。

 

 この子自身は悪くないし、素直に人を褒められる良い子なんだけどな。やはり生粋のサークルクラッシャーか。危うすぎる。


 納得できたところで、解体に入るか。チヨちゃんのおかげで魔物と戦えるようになったなら、処理をどれだけこなせるかだ。


 俺が解体を始めると、チヨちゃんが遠慮がちに声をかけてきた。


「あの、私も手伝います!」

「いや、いいよ。俺がやるから大丈夫」


「でっ、でも、三匹分有りますし、二人でやった方が早いですよっ。私、戦えない分、役に立てるように解体は出来るようになって――」

「大丈夫だから。余計なことしないで」


 任せたら解体の経験値を積めなくなる。そんなの冗談じゃない。気持ちはありがたいけど、俺の為を思うなら警戒に集中してくれた方が――あっ。


 やべっ、と思って顔を見た時には、遅かった。

 チヨちゃんはじわっと涙目になりながら、なんとか笑み浮かべていた。


「え、えへへっ。余計なお世話でしたね。ごっ、ごめんなさっ……」

「ちがうっ! ゴメン、今のは俺が悪かった!」

「最低……」


 妹を泣かせたせいで、七緒さんからゴミを見るかのような目を向けられる。くそっ、これは流石に俺が悪いから何も言えねぇ。


 若干呆れながらも、伊波がフォローしてくる。


「誤解しないでやってほしい。ちゃんと目的があってやってることだから、他意はないよ」

「そうっ! 本当にそうなんだよ! チヨちゃんの気持ちは嬉しかった! でも俺の言い方が悪すぎた! 本当にごめんね!」


「そっ、そうだったんですねっ。私の方こそ、過剰に反応してしまって……ピーちゃんを飛ばしてもいいですか?」

「うん。お願いね。それで次は七緒さんに任せるから、よろしくね」

「…………」


 七緒さんはもはや返事すらせず、嫌そうに小さく頷くだけで応える。

 もうマジで早く帰りたいんだけど。


 ♦   ♦


【探索のヒント! その十】

〈調教師〉

 魔物を従え、仲間とする持つ者。なお、従える方法とその動機は問わない。

 スキルの種類、熟練度により、テイムできる魔物の数、種類、質が大きく変わってくる。

 能力のほとんどが仲間となる魔物に依存している為、自身の脆弱性がネックになるのは他の生産職と変わらない。しかし〈調教師〉自身に力は必要ない。

〈調教師〉の力は魔物である。そして魔物をどのように考えるかによって、成長する能力、戦闘のスタイルが大きく変わってくる。

 魔物を使い捨ての道具と見做すのであれば、テイム出来る数とテイム成功確率があがっていくだろう。

 魔物を家族と受け入れ、愛情を注ぐのであれば、種族の規格を超えた成長を見せるだろう。

 即席で数十、数百の軍団を従える冷徹なる魔王となるか。

 神と錯覚するほどの強大な魔物の寵愛を受ける、心優しき巫女となるか。

〈調教師〉の心根次第で、いくらでもその姿は変わる。


 ある意味、最も本人の性質が問われるジョブであることは間違いない。



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― 新着の感想 ―
油断してたら命を落とすのに安全策と役割分担は当然よね それを踏まえた上で直接戦える奴らの方がチヤホヤされるのはまあ仕方ないにしても 縁の下の力持ちは重要なのに評価されにくい 分かりにくいからこれもまた…
このバカ姉は妹のチヨちゃんと違って潜在的な部分に『自分は(他の女性より外見が)優れてる』的な、ある種の自尊心がある=無意識に他人を見下してるんでしょうね。 じゃなきゃ強○されそうになった恐怖を差し引い…
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