第11話 公式も思ったより当てにならない①
タケ、と呼ばれた大男に連れてこられたのは、個人経営の居酒屋だった。
こじんまりとした店だが清潔感はある。やや薄暗いところが、逆に特別感を感じさせてワクワクしてくる。
知る人ぞ知るみたいな店なのか? こういう店ってびっくりしそうな値段のメニューを用意してあるイメージあるわ。時価、みたいな。それは寿司屋か?
チェーン店が精々の俺らじゃ来なそうな店だ。まぁ、今日は奢ってくれるそうだし気にしないでおこう。
「あれ、タケさん。いらっしゃい。調子はどうです?」
「おう店長。幸いまだ怪我なくやれてるよ。奥の部屋いいか?」
「はい。空いてますんでどうぞ」
「悪いな。ついでに注文も適当に頼むわ」
顔見知りなのだろう。気やすい態度で会話してそのまま奥に進む。
細い通路を通って、本当に店の一番奥の部屋。そこは他から孤立しているような座敷部屋だった。
緊張しながら俺達は席に着く。その様子を察してか、大男はほぐすように笑った。
「どうだ。良い店だろ?」
「そ、そうですね。良い雰囲気のお店だと思います」
「さっきのあいつは元探索者でな。怪我が理由で現役を引退した奴なんだ。幸い、日常生活に支障はないから、探索者時代の稼ぎを使ってこうして店を開いたんだよ」
後遺症が残った元探索者……。
自分のやっていることは自覚してるつもりだが、そう聞くと現実を付きつけられる。他人事じゃないからな。
「で、仲間内の間で密談できる場所が欲しいよなって話が出てな。店を出すならって、有志で出資してこの部屋を作ってもらったんだ。元探索者仲間で信用できる奴だし、盗聴対策も完璧。ここでなら他に漏れる心配はないぞ」
「は、はぁ。なるほど」
おいおい、そんな厳重な所に連れてきてもらったのか。こら半端な相談できん。【人物鑑定】と【魔物鑑定】で釣り合うか?
「さて、改めて自己紹介な。俺はタケって呼ばれてる。んで、こっちの女がマホ。もう一人がアキラ」
「あ、はい。小畑です。よろしくお願いします。で、こっちの二人が――」
「川辺です。よろしく」
「伊波です。よろしく」
それだけ言って、二人は小さく頭を下げる。
お前らいつもより口数が少なくないか? まさか怖いからって俺に全部丸投げするつもりか? クズ友が!
「おう。よろしくな。支部でもチラッと言ったけど、お前らのことは東から聞いていてな。そのうち声をかけようと思ってたんだよ」
そういえば、そんなこと言ってた気がする。ただ、東さんに聞いたからってわざわざ?
「今の探索者は若い奴らばかりでな。三十代以上の探索者は少ないんだ。そんな所に俺と同世代の新入りが入ったって聞いたら、そりゃ仲良くしなきゃって思うだろ?」
なるほど、確かに探索者は若い連中ばかりだもんな。俺も同じ立場ならそう思うかもしれない。
「それに、東が言ってたんだよ。探索者には珍しい、良識的な信頼できる大人だってよ」
東さん……。
「あと、小物っぽくて見てて面白いとも言ってたわ」
東ぁあああああ!!!
東さんへの怒りを燃やしていると、マホさんの苛立った声に頭が冷やされる。
「私もその話は聞いてたから期待していたんだけどね。正直がっかりだわ。まさかうちのタケに喧嘩売るなんて」
「す、すみません……」
「そこまでにしろって。しかし、マホの言う通りではある。なんせ聞いた人となりと違う非常識な行動だからな。しかも〈錬金術師〉だろ? なおさら意味が分からんわ。実際のところ何をやったんだ?」
「そのですね。最近〈錬金術師〉以外にジョブを取得しまして……」
「は? もうセカンドジョブが手に入ったのか? え? レベルは?」
「三です。低くてすみません」
「いやいや、まだ探索者になって一ヶ月だろ? ペースとしてはまぁ普通……というか三でセカンドジョブが取れる奴なんかいるのかよ。ちなみにそっちの二人も何か特別だったりするか?」
「いえ、僕はただの〈魔術師〉ですが、川辺は……」
「えと、凄いのかは分かりませんが一応〈戦士〉で、ついこの間【挑発】を覚えました」
「えっ、【挑発】? 本当に?」
「それは~……本当に凄いね~……」
マホさんとアキラさんは目を丸くして川辺を見る。そしてタケさんは感心の声を上げた。
「マジか? すげぇなお前。俺も覚えたけどよ、レベル五になってからだぜ?」
「え? そうなんですか? やっぱり珍しいんですかね」
「おお、自信持っていいぞ。実は仲間内だと俺より早く【挑発】覚えた奴っていなかったんだよ。だけど記録抜かれたな。お前たぶん良い〈戦士〉になるわ」
「ええ〜、そうっすかね〜?」
タケさんと川辺は二人ですげぇ盛り上がってた。というか、タケさんも【挑発】待ちの〈戦士〉か。どうりで良い人っぽいと思ったわ。
そんな二人に毒気を抜かれたのか、マホさんは苦笑してこっちを見る。
「なるほどね。悪かったわ。厳しいこと言って」
「いえ、明らかに俺が悪いので。同じ立場だったら怒りますよ。大事な仲間ですもんね?」
「ああ、やっぱり分かるか。うん、そうなんだよね。ちょっと照れくさいけどね」
やはり伝わる人には伝わるな。【挑発】持ちは信用できる。本人も、その仲間も。それが分かって、あっとゆう間に俺達の間で緊張が薄れていった。
盛り上がっていたところで正気に戻ったのか、タケさんはごほんと咳払いをする。
「話が逸れたな。それで、小畑さんは何のジョブを手に入れたんだ?」
「えっと、実は〈鑑定士〉なんですけど」
「〈鑑定士〉……ん? えっ、は!? おい、まさか【人物鑑定】か!?」
「嘘、本当にあるの!?」
「信じられない~……」
な、なんだ? なんか思っていた以上の反応だな。
いや、でも即座に【人物鑑定】に行きついたってことは。
「嘘じゃないんだよな? よし、試しに俺に使ってみろ」
「えっ。いや、でも」
「いいから。ほら」
怖いくらい真剣な表情だ。これは逆らえん。それじゃあ、お言葉に甘えて
【人物鑑定】――〈失敗。抵抗されました〉
「あの、失敗したんですが」
「いいから成功するまで続けてみろ。いくらでも付き合うから」
「そ、それじゃあ……」
ここまで言うのなら遠慮なく。高レベル相手にまたとない訓練になりそうだし。
【人物鑑定】――〈失敗。抵抗されました〉
【人物鑑定】――〈失敗。抵抗されました〉
【人物鑑定】――〈失敗。抵抗されました〉
【人物鑑定】――〈失敗。抵抗されました〉
【人物鑑定】――〈郷田武 男 三十五歳〉
あっ、成功し――情報量が増えた!? 性別と年齢か! これも役に立つかと言われたら微妙だけど、スキルが成長したのはでか……い……。
郷田武……ごうだ……たけ……。
「――んふっ」
「あっ、笑ったな。ってことは見えたか。こりゃ本物だな」
「うん、本物だね。間違いない」
「無理もないよ~……初見は誰でも笑う~……」
納得するように頷くタケさん達。
その反応に、川辺は不思議そうにする。
「えっ、なに? もしかしてこの顔で薫とかそんな名前だったりするパターン?」
「ぷっ! あっはははは! タケが薫はないでしょ!」
「その顔って……ふふっ、言うね、君っ……!」
「その反応なら違うのですね。で、楓太。実際どうなんだい?」
「んふふっ! ふふっ、ちょっと待て。あの、タケさん。小さい頃なんて呼ばれてました?」
「ちと恥ずかしいが、よく見ると名前の漢字が一字違いなんだよ。だから一字変えて“シャイアン”」
もうダメだった。思わず机に突っ伏して腹を押さえる。
子供のセンスって侮れないよな。絶妙にえぐい。
嫌そうな、でも同時に嬉しそうな。そんな微妙な表情でタケさんは言う。
「小、中、高の進学とかクラス変えの度にそのあだ名で呼ばれてな。皆面白がるんだが、すぐに呼びにくいわってなってタケになるんだ。少し我慢すれば変わるし、俺のことをすぐに覚えてもらえるし、当時は嫌だったが今振り返ると便利だったな」
しみじみと語るタケさんは、懐かしそうで暗いものが見えない。大人になって乗り越えたらしい。凄いわ、俺なら黒歴史になる。
「ところで、見えるのは名前だけか?」
「あ、はい。名前だけだったんですけど、今タケさんを【鑑定】したら情報が増えました。ええっと」
チラッと、マホさんを見る。マジで悪気はなかったんだが、迂闊としか言えない。
「戒田真帆。女。二十きゅ――」
「おい! 殺すぞお前!!」
「ひっ!! す、すいませんっ!! つい!!」
「つい、で乙女の年齢をバラそうなんて覚悟できてんだろうな!?」
違うんです。マジでそこまで考えてなかったんです! 出来心ですらなかったんです!
俺は目で助けを求めるが、仲間は薄情だった。
「いや、今のはお前が悪いだろ。情報量が増えたのはびっくりしたけど」
「僕だってやらないよそんなこと。君、いくらなんでもデリカシーに欠けすぎじゃない?」
「すまんな。コイツもアラサーだから、焦って気性が荒くなってるんだ。許してやってくれ」
「冬眠前のクマみたいな扱いすんなっ! あとアラサーとか言うな! あたしはまだ二十代だ!」
「もうリーチかかってるでしょ~……少なくとも乙女じゃないよ~……」
アキラさんの言葉に、真帆さんは凄い目で睨み付けた。
助け舟を出してくれたようだが、二人の間で今にも争いが始まりそうだった。情報一つでここまで相手陣営をがたつかせるとは。【人物鑑定】、俺はなんて恐ろしい力を手にしてしまったんだ……ッ!
しかし、と呆れたように伊波は言う。
「情報が増えたと思ったら、今度は性別と年齢か。また扱いが微妙だね」
「いや、ニューハーフと若作りを見分けられると考えれば……おまえ、どんどんハニトラに強くなってない? そんなに女が怖いの?」
「何でもかんでも女ネタに繋げんのやめねぇ? お前らが騙されてる時、助けてあげないよ?」
ギリギリまで放置してそのまま地獄見せるよ? その方が面白いし。
「俺の時は何度もやったのに、【鑑定】のレベルが少し上がるだけで実力が近い真帆は一発か。やはり情報取得系のスキルは元々成功率が高いんだろうな」
「その言い方だと、スキルにもレベルがあるんですか?」
「いや、そこまではっきりとは分かってねぇよ。便宜上レベルって呼んでるだけだ。熟練度かもしれないしな。ただ、経験上それに近いものがあるのは間違いない」
なるほど。やっぱり皆同じことは思っていたんだな。
「ところで、アキラを【鑑定】してみてくれ」
「あっ、はい。いいですか?」
「いいよ〜……」
そう言って、アキラさんはグラビアっぽいポーズを取る。この人、結構愉快な人だな?
【人物鑑定】――〈失敗。抵抗されました〉
【人物鑑定】――〈失敗。抵抗されました〉
【人物鑑定】――〈■■■ ■ ■■■〉
あれ? 成功した感触はあるのに、見えない?
「どうだ?」
「いや、【鑑定】は成功しているんですけど、文字が隠れて見えなくなってます」
「はぁーん、そうなるのか。なるほどなぁ。おい、解いてやれ」
はーい……とアキラさんはのんびりとした返事をする。が、何かした様子もない。
なんだ? 相当のんびりした人なのか……ん? えっ、あれ!?
「アキラさん、もしかして女性ですか?」
「そうだよ~……見れば分かるでしょ~……」
「ん? んん? そうだよな? どう見ても女の人だ。あれ、でも何で? 俺さっきまでどっちか分からなかったんだけど」
「僕も分からなかった。というか、アキラさんの性別を気にもしなかった感じだ」
俺だけではなく、二人も同じことを思ったらしい。
今となってはアキラさんが小柄で可愛らしい女に見える。だけど、さっきまでは全く分からなかった。
首を傾げる俺達に、タケさんは笑う。
「アキラは斥候系のジョブでな。そして斥候系のジョブには【隠蔽】のスキルがある。これは敵から身を隠したり認識をずらしたりするスキルなんだが、どうやら【鑑定】に対しても効果があるみたいだな。【人物鑑定】を使える奴に会ったことが無かったから知らなかったぜ」
「これが【隠蔽】ですか。存在は知ってましたけど、こんなに自然に騙されるんですね。というか、そんなスキルを普段使いしてるんですか?」
「ちっこい女で探索者をやってるとな、舐めて突っかかってくるバカが居るんだよ。探索者の強さに見た目なんざ関係ないってのにな」
ああ、なるほど。だから普段から使って性別を隠してるのか。さっきの感じだと、性別だけじゃなくて興味すら薄れる感覚だった。あれなら絡まれることもないだろう。
川辺も納得したのか、心なしか力のこもった声で言った。
「確かに、アキラさんだったらちょっかいかける奴が居てもおかしくないっすね。ビジュアル的に」
「そうですね。見た目はかわいい女の子という感じですし」
「ふふふ~ん……照れちゃうな~……」
さらっと言った伊波の一言に、アキラさんは体を抱き締めてクネクネとひねらせる。
嬉しそうなところ申し訳ないけど、そいつ人間には興味ないので、子供を見て可愛いとかそういう目線ですよ。川辺はガチだけど。
「騙されてるわよ、アンタ達」
「真帆ちゃ~ん……嫉妬はみっともな~い……」
「このっ……ッ!」
勝ち誇ったようなアキラさんに、真帆さんは死人が出そうな目で睨み付ける。
しかし、騙されている? ……ふむ。
【人物鑑定】――〈■■■ ■ ■■■〉
あっ。隠された。
「いやん……えっち……」
「ぐっ! す、すいません」
アキラさんは気にした様子が全然ないけど、【鑑定】を使ったことがバレると気まずいな。
「レベルが上がればアキラの【隠蔽】も破れるだろうな。小畑さんなら気にしないから、これからはアキラと会ったら【人物鑑定】をやってみるといい。格上が相手ならレベルも上がりやすく──あっ。もしかして支部で俺に【人物鑑定】を掛けたのは、レベル上げの為か?」
「はい。そういうことです」
「なるほどな。気持ちは分かるけど、ちょっと迂闊だったな。俺じゃなかったらどうなってたか分からんぞ。囲われて強制的に仲間にさせられるならまだいい方で、下手すりゃ脅されて奴隷扱いになってただろうな」
げっ。マジでそんなことやる奴が居るのか?
運が良かったな。タケさんじゃなかったら詰んでいたかもしれん。
「ああ~、いやでも使わないとスキルは育てられなくて……そうか、盲点だったな。【人物鑑定】は意外と育てるのが難しいかもしれん。役立つのは間違いないが、探索者に必要かと言われるとな。んん~、対人戦の技術が要らないって訳でもないんだが……」
「アキラみたいに、高レベルの知り合いに頼んで練習台になってもらうとか……いや、安全を確保された上だと経験値が違うか。こうして考えると本当に難しいわね。【魔物鑑定】だったらこんなことを考えなくても済むし、仕事でもそのまま使えたのに」
「あの、実は【魔物鑑定】も持っていまして」
「「はぁ!?」」
自分のことのように悩んでくれる二人に申し訳なくなり、つい【魔物鑑定】のこともばらしてしまった。どうせ相談するつもりだったからいいんだが、目がマジになってちょっと怖い。
それに比べ、アキラさんはおお~……と感心する声を上げる。今はこの人だけが癒しだ。
「両方持ってるんだ~……凄いね~……【魔物鑑定】で性別が分かったら役に立つよ~……オスとメスで価値が変わる魔物がいるから~……」
「なるほど! それは気づかなかったです! さすがアキラさんっ!」
「良かったね楓太。ようやく真っ当な役立て方が見つかったよ」
「うるさいよお前はっ」
いちいち嫌味っぽいインテリ風ガリめ。
しかし川辺。お前本気で狙い始めてないか? 大丈夫か? おそらくその人はその気になれば俺達を数秒で挽肉に出来る実力者だぞ。お前がフラれるのは構わないけど、頼むから絶対に怒らすなよ。
タケさんは驚きを通り越し、はぁ~、と呆れたように長い息を吐いた。
「いや、本気で驚いたな。理想の【鑑定】セットかよ。本当に居るんだなこんな奴。しかも貴重な〈錬金術師〉か。知られたら争奪戦が始まるなこれ」
「どうしよう。本気で囲いたくなってきたわね。なんだったら今から全力で支援しても……」
「えっと、そう言われると嬉しいんですけど、実際のところ〈鑑定士〉とかそのスキルとかって、どういう扱いなんですかね?」
真剣に悩む二人に、俺は思っていることを全部語った。
他の〈鑑定士〉の実情や、過去に【人物鑑定】はなかったのかという疑問。協会から発表されている情報に、それらのスキルがないことから推測した、スキルが秘匿されているのではという疑い。もしかしたら危険視されているのではという不安。
最悪、命を狙われるのではないかというような、人に話すには恥ずかしい被害妄想じみたものまで、全て。
それらを一切バカにせず、最後まで聞いたタケさんはうむと一つ頷いた。
「やはり大人だな。良い意味で慎重だ。そしてその姿勢は正しい。結論から言うと、小畑さんの危惧はだいたい当たってる」
「えっ!? それじゃあ本当に……!」
協会で情報が秘匿されてるのか? 陰謀論でもなんでもなかったと?
「どこから話すべきかな……うん、まず協会や国の公式情報なんだけどな。あれは一応、正しいと言えば正しい。だが全てが判明している訳じゃない。十分にデータを取って検証して、これは間違いないと確定した情報だけが載せられるんだよ」
「そうなんですか? 結構いろいろと発表してますけど、全部じゃないと? 自衛隊や有志の探索者が協力しているんですよね?」
それだけ本気でやって、まだそれだけの情報が揃ってないのか?
「そもそも検証しようにも、そのデータが不十分なんだよな。当然だが、検証するデータのほとんどが自衛隊員の者がメインになるだろ? だけど自衛隊員が取得するジョブのほとんどが〈兵士〉になるんだ」
「ああ。話には聞いたことありますね」
〈兵士〉――軍関係の者が取得しやすいジョブだ。これといった特徴は無いが、なんでも平均的にこなせる能力を持っているそうで、便利なジョブらしい。
自衛隊員も大抵がこのジョブになるらしく、発覚した当時は“自衛隊は軍隊ではない”という主張が詭弁に過ぎなかったとネタにされていた。
「ああ、そういうことか。自衛隊員のデータばかりだってことは、〈兵士〉のデータばかりが集まるってことですね」
「その通り。自衛隊でも他のジョブを取れる奴はいるんだけどな。〈兵士〉に比べると絶対数が少ないんだよ。そりゃ検証も中々進まんわな」
「更に言うとね。有志の探索者ってのも、本当のことを言っているかなんて怪しいもんよ。だって自分だけが持っているかもしれない優位性を手放すなんて真似、誰だってしたくないでしょ? むしろ独占したいって思うのが普通じゃない。その方が儲けやすいし」
うん。そりゃそうだ。俺だってそれもあってばらさない方がいいって思ってる訳だし。
「そんな訳で、有志の探索者ってのも知られて困らない奴らばかりの情報が集まるんだよ。〈戦士〉や〈魔術師〉だとか、そういうメジャーなジョブの奴らとかだな。そいつらにしたって、全部は話してないと思うぜ。当事者でないと分からない使い勝手とか、ちょっとしたコツみたいなもんとかあるしな。かく言う俺もいくつか切り札的な物がある」
おぉ。一般では知られてない奥義とか、めっちゃカッケェ。なおさらタケさんが強者っぽく見える。
こういう所があるのは、戦闘職だけだからちょっと羨ましい。
「んで、その上で秘匿している情報があるのかって話だが、これも当然ある。晒すとまずい情報なんて公開する訳がない」
「というか、これはジョブやスキルに限らず国は当然やるでしょ。都合が悪い情報は国民に隠すのが政治じゃない? 小畑さんだって、それを分かっているから警戒してるんでしょ?」
「いや、俺はそこまでは……」
俺も伊波に言われてようやく気付いたからな。
伊波に目をやると、タケさん達も注目する。それを受け、伊波は小さく頷いた。
「――当然です」
「えっ? お前、前に居酒屋で……どの面で……」
こういうのに気づくのはやはり伊波だ。頼りになる。それに比べて俺や川辺は駄目だな。ちょっと根が単純なところがある。
それを察してか、小さくタケさんは笑った。
「なるほど、思慮深いんだな。やっぱり〈魔術師〉はそういう奴がなるのかな。んでだ、秘匿される都合の悪い情報ってのがどういうもんかって話なんだが、単純に危険だからってのがある。例を出すと、洗脳系のスキルを持っているやつだ」




