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第9話 俺の事どう思う?

お読み頂きありがとうございます!

本日は2回の更新に変更します。

 レックスは13人がひざまずく中、重々しく口を開いた。


「面を上げよ」


 体勢はそのままで顔を上げると13人の視線がレックスに集中する。

 それに気圧されないように虚勢を張りながら威厳に満ちたと思われる泰然とした態度で言った。


「まずは情報収集に携わった者たちはご苦労であった。情報は共有してあると思うので頭に叩き込んでおけ。だがこれで終りと言う訳ではない。引き続きこの世界の調査を行っていくつもりだ。プレイヤーとその眷族、未だ知れぬ強者の存在、様々な拠点、国家……ありとあらゆる情報を得るための体制を構築せよ。また、この『黄昏の王城(トワイライト・タワー)』は非常に目立つ。先刻の慮外者りょがいもののように敵対するやからが出てくることは想定して然るべきである。こちらについても警戒体制を早急に構築し警戒度を最大限引き上げよ。当面の間は慎重に動き、何処どことも敵対しない方針とする!」


『はは!!』


 全員が真剣な表情で返事するが、誰も視線を合わそうとはしない。

 頭を少し下げて伏し目がちな態度を取っている。

 レックスは何故、目を見てくれないのだろうと思いながらも、言いたくない言葉を思い切って吐き出した。普通に考えたら自意識過剰な質問であり、レックスは羞恥心に殺されそうになる。


「貴様らに召集を掛けたのは他でもない。余のことをどう考えているか端的に述べよ」


 そう告げると彼らはようやく頭を上げてレックスの目をジッと見つめる。

 どの表情も緊張の中にある程度の余裕が感じられた。

 位階レベル100からくる自分の強さに対する自負からくるものだろう。


「まずは第1階を守護せし者、鬼武蔵」

「ははッ……その御力はまさに無双、その才たるや打てば響き、花実兼備と言うに相応しき御仁かと存じます」


「第2階を守護せし者、インサニア」

「はッ、その覇気は天をも衝かんばかりであり、『黄昏の24将』なる御方々(おんかたがた)の中でも白眉たる存在であると考えます」


「第3階を守護せし者、ジークフリート」

「は、神々をも滅ぼせし力を持つ至高の存在なり」


「第4階を守護せし者、ルリ、ルラ」

「は、はい! 偉大なる24人の御方おんかたをまとめていらした凄い御方おかただと思います!」

「えっと……とんでもなく強くて誰も勝てない御方おかたです!」


「第5階を守護せし者、オメガ零式」

「ハハッ!! 『黄昏の24将』の頂点に君臨セシ、人間族を超越スル御方でアルと思いマス」


「第6階を守護せし者、メフィスト」

「は! まさに覇王の中の覇王! その武力、魔力はもちろん、慈悲深さや叡智をも兼ね備える風雲児でございます!」


「第7階を守護せし者、ヴィクトル」

「ははァッ! 陛下の武の前には万物がひれ伏しましょう!! お仕えできる喜びを噛みしめております!」


「第8階を守護せし者、レジーナ」

「はいな。その叡智は誰も及ぶことはなし。人の身にして『全族協和・八紘一宇』を謳うんは、まさに人の器にあらしまへん!」


「第9階を守護せし者、ガブリエル」

「はい! あたしたちを最後まで見捨てることなくいてくださった慈悲深き御方かと!」


「ジルベルト」

「は。剣技においても魔法においても陛下に伍する者はなく、まさに最強たる至高の存在と言えましょう。陛下に仕えられることに勝る喜びはありません。私が仕えるのは陛下のみでございましょう」


「ドラスティーナ」

「『黄昏の24将』なる御方々(おんかたがた)の絶対なる盟主。われが仕えしはマグナ覇王陛下と創造主たる、たいらー元帥様のみ」


「最後はルシオラだな」

「至高なる御方々が去って行かれる中、唯一我々を見放さず日々見守り続けて頂いたご恩は忘れることはないでしょう。更にお1人で国を護り続け雌伏しておられたのは、今日この刻を待っていらっしゃったのですね! 愛しの我が君!」


「……」


 全員の考えを聞いたレックスは思わず沈黙してしまった。

 表情には何とか出さないようにできたと思うが、想像以上の評価に愕然とさせられる。同時に胸に去来する嬉しさも感じていた。


「(こいつら、僕のことをちゃんと見ていたのか……かつての記憶もあるようだし、彼らの期待には応えなくてはならない……)」


 ここでオフにしていた【覇王の覇気Ⅹ】を解放するレックス。


 気のせいか、場の雰囲気がピリピリしたものに変わった気がした。

 覇気の発動は忘れていただけなのだが、意見を言わせる前に使用するよりは良かっただろうと思う。それでは強制的に言わせただけの言葉になってしまうし、そんなものに価値などない。


「貴様らの思いは受け取った。その忠誠、真に大義である! 各々のこれからの働きに期待する」


 レックスは【拠点内転移】を使うと10階の玉座の間兼執務室に転移した。

 目の前が一瞬で荒野から荘厳な室内へ変わる。

 取り敢えず落ち着こうと玉座へと座ると、今あったばかりの出来事が思い出される。


「しかし……あれはちょっと褒め過ぎじゃないか? あんなに持ち上げられるなんて思わなかった……むしろちょっと怖かったな。ゲームの時はあいつらの中で僕はどう言う風に見えてたんだよ……。でもまぁ信じるしかないよな。本心なんて誰にも分からないんだし、それが設定からきているものなのか、ゲーム内での行動からきているものなのか、それとも他に何か要素があるのか」


 少し憂鬱になりながらそっとため息を吐く。

 が、それよりも不安なのはあれほどの期待に応えることが出来るかと言うものだ。当然だがレックスは覇王のように振る舞う一般人であって、実際の覇王ではない。天才でもなければ少し頭が回る程度の何処にでもいる日本人なのである。


「とにかく絶対に失態は見せられないな……ボロが出ないように頑張るしかないか……うう、ファイトだ僕。これは胃に穴が開くレベルだな」


 レックスはしばしの間、玉座で精神を落ち着けた後、執務デスクに移って報告書の束に目を通し始めた。




 ◆ ◆ ◆




 レックスが去った後、ルシオラたちはひざまずいたまま動けずにいた。


 主君の前でその印象を告げるなど有り得ない。

 その意図は読めなかったが、言葉を間違えることはなかったようだと全員が安堵していた。


 最初に立ち上がったのはドラスティーナであった。

 その額には珠のような汗が浮かんでいる。


「ふう……流石の覇王陛下と言ったところか……あれほどの威圧感を浴びたことなどないわ」


 流石のドラスティーナも畏怖を抱いたようで、ルシオラと罵りあいをしていた時とは打って変わって真剣な表情をしている。

 鬼武蔵は得心がいった様子で何度も頷いている。


「あれが【覇王の覇気】ですか……今までのマグナ陛下はその力を抑えていたと言うことですね」

「えッ……じゃあ、ボクたちに怖がらせないようにしてくださってたってこと?」


 ルリが驚いているが、それは皆同じ気持ちであった。

 全員が主君が今までまったく全力を出してさえいなかったことに戦慄していた。

 あのようなオーラを叩きつけられれば、気を抜けば精神に大きな負荷が掛かるのは避けられない。特に精神体であり、受肉化して世界に存在している天使族や魔神族などは更に大きな影響を受けることだろう。


「まさかあれほどトハ。流石は頂点に立たれる御方ダ。あの力の波動は凄まじかっタ」

「怖かったぁ……死ぬかと思った」


 ルラが心の底から安堵している一方で、オメガ零式はその忠誠心を増々高めているようだ。


「あのまま戦っても押し潰されるだけだな! 精神的にも肉体的にもすり潰されちまうぜ」


 好戦的なヴィクトルも頭の中でレックスとの模擬戦でもしていたのか、素直に負けを認めている。とは言え、その表情は清々しい。


「ふふふ……あれはマグナ陛下が我々の忠誠心に応えて下さったのよ。その御力の一端を見せることでね」


 最後に立ち上がったルシオラが我がことのように嬉しそうに言った。

 この言葉に皆の顔が納得した様子に変わる。

 流石は守護者執政官インペラトルと言ったところかと感心し始めている。


「わたしがさっき受けた覇気よりも凄まじかった! これはとんでもないことよね!」

「メフィスト……? 貴女、以前にも受けたことがあったのかしら? なんて羨ま……じゃない、妬ま……じゃない、素晴らしいご褒美じゃないの」


 残念なルシオラが顔を出したことで、上がった株は一瞬にして急降下する。


「貴様は本当に残念な奴じゃのう……まぁ良いわ。ではな」

「ドラスティーナ。ちょっと待ってもらいましょう。陛下のご命令を忘れたのかね? 情報収集体制と警戒体制の構築……言われたことだけやっていれば良いと言う話ではないでしょう。我々も独自で〈黄昏の帝國トワイライト・アルカディア〉のお役に立てるようなことを発案すべきでは?」


 用事は済んだとばかりに消えようとしていたドラスティーナを鬼武蔵が引き止めた。


「ふむ……それもそうよな。取り敢えず我は眷族を使って情報収集を行うとしよう。ルシオラには他のことは任せた」


「ちょ――」


 ルシオラが制止しようとするが、ドラスティーナは一瞬で黒い霞になって6階から姿を消した。

 いつものマイペースなのは知っているのだが、流石に良い顔をする者はいない。


「仕方ないわね。後で話しておくわ。では詳細は後で詰めるとして、まず最優先事項を言うから聞いておきなさい」


 先程の言動からは大きくかけ離れたルシオラがそこには存在した。

 腐っても守護者執政官インペラトル


 『黄昏の24将』なる者が決めた守護者ガルディアンのまとめ役だ。

 全員が彼女に敬意を示す態度を取る。


 対等ではあっても立場は違う。

 敬服はするが臣従する訳ではない。


「では――」


 ルシオラは早急に取り組むべき事案から伝えるべく口を開いた。

ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日は12時の1回更新予定です。


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