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第8話 守護者集結

いつもお読み頂きありがとうございます!

 『黄昏の王城(トワイライト・タワー)』は全12階層からなる城に分類される本拠地である。


 12階は〈黄昏の帝國トワイライト・アルカディア〉の盟主であるレックスの私室と寝室であり、11階は他のメンバーに割り当てられた部屋と宝物庫や練兵場、ノリと勢いで作られた様々な施設が存在している。


 10階は玉座の間が大部分を占めており、食堂や守護者執政官インペラトルルシオラや戦闘執事バトラーのジルベルトを含む戦闘聖女アトラス、一般メイドたちの部屋がある。


 1階~9階までは侵入してくる賊徒共を排除するための様々なステージが用意されており、それはまさにこの世の地獄と言われるほどだ。


 レックスはタワー6階のステージに足を運んでいた。

 と言っても転移したのだが。

 この階層は多くの侵入者と戦うことのできる広大な場所となっており、祝福と呪詛の地獄と設定されている。


 味方プレイヤーや『黄昏の王城(トワイライト・タワー)』の仲間たちには祝福バフを、敵対者には呪詛デバフを与える。敵が足を踏み入れると、6階にいる〈黄昏の帝國トワイライト・アルカディア〉のメンバーとその眷族全員を倒さないと先へ進むことも撤退することもできない障壁が展開される。


 守護者ガルディアンは悪魔族のメフィスト・フェレス。


「これは……マグナ様! このような場所によくぞおいで下さいました!」


 レックスの来訪をすぐに察知したメフィストが上への階段を護るためだけに建てられた砦から出てきて慇懃な挨拶をして見せた。

 丁寧だが、その見た目に反することなく、元気溌剌とした言動だ。

 セミロングの燃えるような赤い髪と瞳が特徴的な強化と弱体化の能力ファクタスに特化した悪魔デーモンであり、もちろん強力な魔法を使うこともできる。


「メフィスト、しばらく場所を借りるぞ。その内、守護者たちが集まって来るからな」


「へぇ! 全員が集まるのですね!」

「ああ、そうだ」


「しかし少々早いのではありませんか!? 大変です! お待たせすることになるのではないですか!?」

「構わんよ。少し試したいこともあるしな」


 レックスの言葉は彼女の表情を訝しげなものに変え、思わず聞き返してくるメフィスト。


「試したいこと? ですか?」

「うむ。ちょっと俺に弱体化の力を使って欲しくてな」


「えええええ!! マグナ様にですか!? 何故そのような……?」

「環境が変わったからな。言っただろ? 異世界に転移した可能性が高いとな。そこで旧世界とは世界の理(ルール)が異なる場合があるので検証したいんだ」


 予想外の答えだったようでやたらと大袈裟に驚いて見せるが、特段隠すことでもないのでレックスは有りのままに伝える。


「ああ! なるほど! 承知致しました!」

「あ、威力は弱いので頼む(本気出されたら死にそうだしな……)」


 強力な弱体化能力を使われた場合、下手をすると死んでしまう可能性があるので手加減してもらわなければ困るのだ。

 レックスは脆弱な人間族なのである。


「では参ります! 【呪詛Ⅰ】」


 メフィストの口から呪いの言葉が紡ぎ出され、レックスの耳に届いた。

 すぐに体に変調をきたすのが分かる。

 スタン、毒、暗闇、沈黙、石化、挑発、混乱、錯乱、恐慌、服従、行動阻害、移動阻害、時間遅延、時間停止、攻撃力低下、防御力低下、俊敏力低下、命中率低下、特攻低下、位階低下、技能使用不可、能力使用不可、強化無効化、耐性無効化、祝福無効化、回復無効化、蘇生無効化、狂化、死霊化、即死などなど。


「(ヤバい! これは入ってる入ってる! 低位でコレかよ!)」


 人間族は基本的にデバフに対する耐性が少なかったり、持っていなかったりする者が多い。職業クラス次第でそれを得ることは可能だが、それでも限界があるため、ほとんどの者は装備品で対策するのだ。


 現にレックスはその多くを装備品によって防いでいる。

 その上、耐性強化までしているのだが、それを上回る能力ファクタスを使用されると軽く貫かれる。


「マグナ様、大丈夫ですか?」


 すぐに呪いの言葉を止めるメフィストであったが、レックスは小さいながらもデバフをその身に受けてしまった。

 それを目にして彼女はすぐにデバフを解く能力ファクタスを使用する。


「【解呪Ⅹ】」


 レックスが受けたものは攻撃力低下や防御力低下などの主にステータスが下がるデバフである。


 流石に耐性を無効化されては意味がないため、装備している物は神話級ロギアであるが、神器セイクリッド・アームズを覗けば最上級の品である装備を突破してくる辺り流石の能力ファクタス、【呪詛】である。


 ちなみに武器からアイテムまで世界最強レベルの力を宿す神器セイクリッド・アームズ神話級ロギア聖遺物級レリク伝説級ヒストリエ遺産級クレロスの順に強さのグレードが存在している。


「あーやっぱり強力だな。メフィストの能力ファクタスは(分かったぞ! 恐らくこの6階の力も働いているのか。メフィストが敵だと認定した時点で僕に強力なデバフが掛かっている……)」

「お褒めにあずかり光栄です! ですが昔から我々の力は意識的に切っていたものと思っていたのですが、わたしの勘違いでしたか!? あわわわ……」


「え? そうだったか?」

「はい! 今もわたしは陛下の【覇気】を浴びて猛烈にダメージ入ってますから! もう死にそうです!」


 【覇王の覇気】は『覇王』が無意識に放つ能力ファクタスの1つで様々な影響を与える。

 彼女は特にそんな素振りを見せていなかったのだが……。


「マジか!ってすまないな。えっと切る切るっと……」


 意識を集中したレックスが能力を切ると言う感覚を掴もうとしているとメフィストが頭を下げて謝罪した。


「実験するならマグナ様の能力で既にダメージ入ってますって言えば良かったですね……申し訳ございません」

「いや、こちらこそすまなかったな(フレンドリィファイアはあり、と)」


 元気だったのが一転してしゅんとする彼女にレックスも悪いことをしたなと反省する。それにしても感情豊かで表情がコロコロと変化する娘である。


「では他に何か試しますか!」

「いや、オンオフの切り替えの感覚も分かったしこれで良い。ありがとう」


 感謝の言葉が嬉しかったのかテレテレと頬を染めるメフィスト。


 それにしてもルシオラを始め、他の守護者ガルディアンや一般メイドにまで覇気を浴びせていたと考えるとゾッとするレックスである。だが、今から守護者たちの忠誠を確かめるためには力を見せ付けておいた方が良いのかも知れない。


 力で屈服させても心からの臣従でなければ意味はないとは思うが止むを得まい。

 そう考えたレックスは後で【覇気Ⅹ】を発揮することに決める。


「おや? 私が最初のようですね。陛下、お呼びにより参上致しました」


 レックスが思考に身を委ねていた中、1番にやって来たのは鬼武蔵である。

 相変わらず丁寧な態度で大人しめな印象を受ける。


「(やっぱ、黒スーツに刀ってのはいいな! 燃えるなぁ)」


 次はルシオラが転移して来た。

 彼女はレックスに会えた喜びから咲き乱れる花々のような満面の笑みを浮かべている。


 そこへすぐ新たな守護者、いやもう1人の守護者執政官インペラトルであるドラスティーナが姿を見せた。美しい艶のある黒髪をポニーテールにした紅よりも深き赤の瞳を持つヴァンパイアの王であり、背中が大きく空いた漆黒のドレスを身に纏っている。


 そんな彼女を見た瞬間、ルシオラの態度が一変した。


「あら? 誰かと思えばドラスティーナじゃない? 陛下の召集に大人しく従うなんてどう言うつもりなのかしら?」

「ルシオラか……何やら異常を感じたのでな。ちと足を運んでみた」


 ルシオラの挑発的な言葉にも特に反応を示すこともなく、ドラスティーナは平然と言ってのける。


「本当に勝手なことよね! 貴女、守護者執政官インペラトルとしての自覚が足りないんじゃないの?」


「相変わらずピーピーと煩い娘だ。我はたいらー元帥様により創造されし存在。貴様は理解しておるのか? 至高なる御方おんかたのご意思により生み出されたわれを愚弄すると言うことは『黄昏の24将』たる方々の全てを侮辱する行為だとな」


「あら、娘ですって? まぁ確かに貴女よりは若いわねぇ。貴女なんてただのおばさんでしょ? それに如何いかにたいらー元帥様と言えどももう姿も見せてくれないじゃない? 貴女もう見放されたんじゃないかしら?」


「言うようになったな小娘が……我が見放されたとな? そのようなことは有り得ぬが、貴様を創造された御方おんかたの方こそどうなのだ? お隠れ遊ばした期間はたいらー元帥様よりも長いではないか」


「あんだってぇ!? 仕事もできない年増のババァが! だから創造主様に見放されるのよ! 理解してりゅ?」


が出ておるぞ。このアバズレ魔神デヴィルよ! 淫乱処女ビッチ娘はこれだから困るのだ!」


 守護者ガルディアンたちが集まって来るが2人の口喧嘩は収まる気配はない。

 レックスもこのような一面を見るのはもちろん初めてだ。


「(うーん。これは創造主の影響を受けてるってことなのか? 設定がそうなっているからなのか? そう言えばたいらー元帥さんと鮮血鬼★バルバトスさんはあまり仲が良くなかったような気がする……)」


 守護者たちが2人に向ける視線には呆れが混じっているように感じられる。

 となると、皆その関係性を理解していると言うことだ。

 非常に興味深い現象であり、もっと突き詰めて理解を深めていきたいところである。


 守護者たちが全員そろったようなので、いい加減に罵り合いを止めさせようとレックスが口を開きかけた時、オメガ零式が低いが強い声で言った。


「下らンことで喧嘩するのはヤメロ。偉大な盟主たるレックス・オボロ・マグナ陛下の御前おんまえダゾ!! 控えロ!!」


 流石に事態を思い出して我に返った2人が揃って頭を垂れる。


「陛下、お見苦しいところをお見せして大変申し訳ございません」

「至高なる御方おんかた、何卒お許し下さい」


 レックスとしては大して気にしてなどいない。

 むしろ後学のためにもっと様子を見ていたい衝動に駆られたほどだ。


「良い。全員を整列させよ」


 ここに守護者ガルディアンを取りまとめる守護者執政官インペラトル2人と守護者11人が一同に会することとなった。


 いよいよ各守護者の忠誠を量る刻が来た。

 恥ずかしいが、単刀直入に聞いてみるしかないだろう。


 レックスは満を持して口を開いた。

次回は羞恥心に殺されそうになるお話。


ありがとうございました。

また読みにいらしてください。

明日は12時の1回更新です。


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