第4話 拠点防衛戦 ②
すみません!
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――拠点・ロヴェーナの街付近
ロヴェーナへ向ったのは、レジーナ、インサニア、オメガ零式、ガブリエルの4人である。
こちらに攻めてきた軍もおかしな様子を見せていた。
やたらと周囲を索敵しながら慎重に進軍していたのだ。
まるで初めての土地に足を踏み入れたかのように。
この周辺は少し小高い丘の上に街があって西には大河が流れており東側は湿地帯になっていた。当然、初めて外に出る守護者たちにとっても興味深いらしく、皆が周囲をキョロキョロと窺っている。
「外ってこんな風やねんなぁ。あたし初めて外に出たんやから新鮮やわ。うーん空気が美味しいってこう言うことやねんな!」
悪魔族のレジーナは初めての経験に顔を輝かせながら怪しいエセ関西弁ではしゃいでいた。彼女の腰から伸びる黒い羽が無意識の内にパタパタとはためいている。強い風に靡く金色の長髪が闇夜の中でも煌めいて非常に美しい。
「何を言っているのかしら? わたくしたちは皆そうでしょう?」
呆れたようにそう言ったのは闇精霊族のインサニアだ。
とは言え、彼女も少しそわそわはしているのだが何とか平静を装っていた。
彼女は特徴的な外見をしており、闇精霊族なのにアルビノで白髪で緋色の瞳と言う変わった設定を持っている。これも創造主が奇をてらった結果だ。
「そだよー。あたしたちは『黄昏の王城』の守護者なんだからさ」
光り輝く12枚の翼を持つ天使族のガブリエルはそう言いつつも嬉しそうで、その表情に満面の笑みを湛えている。
いつもは『黄昏の王城』の中で退屈な日々を過ごしていた気がしていたし、自分の創造主からも長い間放置されていた記憶があるから。
「お喋りはここまでダ。敵は我が殲滅してくるから待ってイロ」
「ちょいちょいちょい! 陛下には相手の戦力を見極めて来ぃなって言われてんでしょうが!」
女3人がいつまで経っても煩いので、緑と茶の斑色をした機械族のオメガ零式が手っ取り早く自分だけで動こうとする。
彼の魔導砲があれば兵の五○○○程度、一瞬で塵へと変わるだろう。
レジーナに突っ込まれたオメガ零式に、インサニアも釘を刺す。
「情報が欲しいって仰ってらしたのだし、少なくとも指揮官クラスは捕縛すべきだと思うけれど?」
「うんうん。それにいくら急に現れたからって敵じゃないかも知れないし! 敵だとしても皆殺しにしちゃうのは可哀そうかなって思うんだケド……」
甘いことを言うガブリエルが、今度は3人の標的になる。
ロヴェーナに攻め込んできたと言うことは〈黄昏の帝國〉と敵対する道を選んだことを意味する。
偉大なる『黄昏の24将』に創造された身としては決して許せるものではない。
「いやいや、問答無用で攻めてきたあいつらに温情なんか掛ける必要ないやろ?」
「その通りだと思うわ」
「如何にも……畏れ多くも陛下の国に攻め込んだのダ。代償は大キイ」
「えーーーー!? これあたしが間違ってるのーーー?」
3人から突っ込まれて今度はガブリエルが半泣きになってしまった。
この辺りの認識は種族から来るものが強く影響している。
朧はまだ知る由もないことだが。
「当然ダ……敵は滅ぼさねばならナイ。陛下の敵となる者はナ」
「わたくしが闇夜に紛れて捕縛してくるからオメガは兵たちを殲滅しておきなさいな」
「なるべく殺すなっちゅーご命令だと思ったんやけどな……」
まるで当然のように殲滅しろと言い出したインサニアに、レジーナが苦言を呈した。指揮官の捕縛は命令通りだが、敵兵を殲滅するのは違うと思ったからである。
「そーだよね? オメガくん敵兵は実力を見る程度にして倒しちゃってよ。後はあたしが全員捕らえるからさ!!」
「よかロウ。ではさっさと片付ける。インサニアとガブリエルは頼ム」
そう言い捨てるとオメガ零式は戦車形態になると、1人前線へと赴いて行った。
「それではわたくしも言ってくるわ」
「待ってや! うちも行くわ。指揮官の位階次第じゃ危険があるかも知れへんもん」
慌てて待ったを掛けたレジーナの方を振り返るとインサニアは睨みながら不満げな声を上げる。その端整な表情も何処か歪んでいるように見える。
「あら。それはわたくしの実力を疑っている、と言うことでいいのかしら?」
「違うわ! 念のためやん念のため! ったくあんたら陛下のお言葉ちゃんと聞いててんか?」
至高なる〈黄昏の帝國〉の盟主レックスの言うことは絶対である。
何せ、『黄昏の24将』のまとめ役であり、皆から覇王と呼ばれていたほどなのだから。
インサニアは渋々と言った感じでレジーナの提案を了承した。
「それじゃ、後は任せたで? ガブ」
「任された!」
ガブリエルが敬礼しつつ天使の笑みで送り出すと、前線からは大きな爆音と振動が伝わってきた。
言うまでもなくオメガ零式が魔導砲をぶっ放した音である。
それを聞いて敵兵が消滅してく姿を想像し、哀れに思うガブリエルの心には疑問が浮かんでいた。
「うーん。あたしは皆は好戦的過ぎると思うのよね」
そんなことを思われているとは露知らず、オメガ零式は横薙ぎに放たれた拡散魔導砲で一気に敵兵を殲滅していた。直撃を喰らって文字通り消滅する者、体が千切れ飛びただの肉片へと変わる者、衝撃で大きく吹き飛ばされる者など末路は様々である。
「弱いナ……位階は10もないのではナイカ? 人間種と言うコトもあるのダロウガ」
無機質な声でそう分析しながら、容赦のない攻撃が兵士たちへと降り注ぐ。
彼らの肉体は無惨にも弾け飛んだり、四散したりと周囲の大地抉れ、血だまりと肉片で覆い尽くされていた。
魔導砲を斬ったり、跳ね返したりするほどの猛者は見当たらない。
「ほーい! オメガくんはここまでー! 後はあたしが集団で捕縛するからねー!」
天空から聞こえるガブリエルの大声に、オメガ零式がようやく攻撃を中止する。
【捕縛】
魔法によって直径1kmは有ろうかと言う光り輝く天使の輪のような物が出現したかと思うと、どんどんと輪が縮んでいく。あっと言うまに兵士たちはその輪に絡め取られて身動きすらできなくなってしまった。
最早、戦場に動く影はない。
一方、指揮官の本陣へ向かったインサニアとレジーナであったが、こちらも一方的な殺戮の場となっていた。
「指揮官を出しなさい」
出会い頭にそう告げたインサニアの言葉は、相手に馬鹿にされた上、嘲笑、無視された。
むしろ美しい女が2人も現れたことで兵士たちは争うように群がってくる始末。
人間の愚劣さにはため息しかでない彼女であったが、仕事は仕事。
きっちりと彼らを躾けてやった。
そこにはもう人間と呼べる者はいなくなっていた。
インサニアがキレ掛けていることに気付いたレジーナは、先回りして指揮官に【魅了】の魔法を掛けて保護しておいたので問題はないはずだ。
帰り際に目が座っているインサニアが、ボツリと苛立ちの混じった声で漏らす。
「まったく、これだから人間は愚物なのだわ。この世界から奴らを駆逐してやりたいわね」
「陛下も人間なんやで? 言動には気を付けた方がええよ?」
「理解しているわ。陛下はあれとは違うもの。人間は賢者と愚者の差が大きいのかしらね」
レックスはまずは情報を集めると言っていた。
指揮官が纏うマントには複雑な紋章が描かれているが、当然彼女たちには何処の国の物かなど分かるはずもない。
ここは偉大なる覇王レックスに任せておけば心配などないのだ。
目的を達成したインサニアたちはすぐに本拠地『黄昏の王城』へと急ぐのだった。
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