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2度目の人生はゲーム世界で~NPCと共に国家ごと転移したので覇王ムーブから逃げられません~  作者: 波 七海
第一章 大混乱編

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第25話 レックス、大いにすれ違う

いつもお読み頂きありがとうございます!

 セル・リアン王国の北を目指しながらも、レックスは毎日、ルシオラからの報告を聞くために【転移門ゲート】で本拠地に帰還していた。


 現在、玉座の間には守護者ガルディアンたちが集まっている。

 レックスの隣にはルシオラ、鬼武蔵、ジルベルトが控えていた。

 最初に口を開いたのはルシオラ。

 出てきたのは謝罪の言葉だ。


「陛下、本日は虎狼族の帝王ヴァルガスが挨拶に来るはずだったのですが……申し訳ございません。【転移門ゲート】で迎えに行ったのですが、既に王城を出た後だったらしく連れてくることができませんでした」


「まぁ良い。挨拶などいつでも構わん。それでウラーヌス帝國との戦争はどうなったのだ?」


「陛下のご意志の通り、虎狼族のほとんどを殲滅致しました。しかし陛下のご慈悲により新帝王ヴァルガスをまとめ役とし国家を残す方向で動いております」


 レックスは「ご意志って何だ?」と思ったが、取り敢えず黙っておいた。

 言わぬが花である。

 無論、表情に出すのも駄目だ。


「講和の条件は責任者たる帝王の首、領土の割譲、宝物庫の全てと素材の供出と言うことになりました。なお、我が国とウラーヌス帝國は敵対関係にあると見せかけるように動いております」


 なんで敵対しているように見せかける必要がするのか理解できない。

 レックスの頭の中は?で埋め尽くされていた。

 隣で跪いている鬼武蔵に目を向けるが、視線が絡まると彼は不敵に笑う。

 増々意味が分からないレックスだが、ここは全力でいく。

 そう全力で知ったかぶりをする刻――それが今。


「と、取り敢えずは話を聞こうか。そう。そうだな……全てだ。お前たちの意図から考えまで全て話すのだ」

「全てでございますか?」


 ルシオラが不思議そうな表情になるが、鬼武蔵は合点がいったと言う笑みを浮かべている。


「では私から。陛下にとってウラーヌス帝國など脅威にもならない他愛のない国家です。それが偉大なる陛下を侮辱までして見せた。ですが陛下は仰った。やり過ぎるな、と。我々はそれを実行に移し、虎狼族を殲滅せず一定数残し、その取りまとめを帝王にさせることにしたのです。いずれは陛下に平伏し服属させることも視野に入れておりますが、今は情報を得る刻。我が国が人間族の敵とされる虎狼族と対立する姿勢を見せることで、周辺国の溜飲を下げることにも繋がります。そして領土の割譲……これは陛下が確認しておられた素材の確保の観点から譲れない事項だと判断致しました。宝物の供出は単なるついでですが、中には良い物があるかも知れません。お時間のある時にでも陛下にご確認頂ければと存じます」


「(へぇ……僕はそんな凄いことを考えていたのか……ってあるかい! 全く何も考えていなかった訳だが……)」


 守護者ガルディアンたちからはレックスに対する称賛の声が上がっていた。

 ほとんどの者が呆気に取られたような表情でレックスの深謀を知って感心している。


 だが――レックスは沈黙したまま。


 鬼武蔵の表情が焦りを含んだものに変わる。

 場に張りつめた空気が纏い緊張が走った。

 

「素晴らしい! よくぞ我が意を酌み取ったと褒めておこう! 流石は鬼武蔵だ!」


 それを撃ち破ったのは他ならぬレックスの言葉。

 表情を引きつらせていた鬼武蔵の表情が緩む。

 安堵してようやくいつもの不敵な顔付きに戻ったと言ったところだろう。


「ははッ!! ありがとうございます! まだまだ非才な身ではございますが、何とか陛下のお考えを理解できたようで正直ホッとしております」


 一方のレックスは鬼武蔵もこんな表情するだなぁと場違いなことを考えていたのだが……。

 ひたすら畏まる鬼武蔵に楽になるように促す。


「それではウラーヌス帝國の案件はこれで良いな。エリザベートには引き続き、統括官レガトスとして外交を担当してもらうつもりだ。通達を出しておくように」


 ルシオラの返事が玉座の間に響く。

 そして話を変えて違う事案の報告を口にする。


「では次ですが、陛下のご威光のお陰でサンドベルグ王国が和平の道を積極的に模索するように態度を軟化させました。講和もあり得るかと」

「それは吉報だな。だが、例え講和がなったとしても油断はするな。引き続き王国の調査を行うように」

「御意にございます」


 いい兆候だとレックスは安心する。

 表情には出さないが、内心ではウッキウキである。


「後は守護者ガルディアンたちを各地に偵察として派遣しております」

「ふむ。十分に気を付けさせるようにな。強者の存在があれば、第1に逃げに徹することだ」


「御意にございます。現状、神聖ヴォルスンガ教国より南へはガブリエルが、北には鬼人族の国があるとの情報を得ましたので、ヴィクトルを送っております」

「ヴィ、ヴィクトルか……そうか……まぁよかろう(あんな脳筋送って大丈夫なのか……? 喧嘩して問題起こす未来しか見えないんだが……)」


 それなら空を飛べて頭も回るレジーナでも良かったような気もするのだが、自分より頭がキレるはずのルシオラたちの決めたことなので口出ししないことにした。


「他に何かあるか?」

「いえ、全力で情報収集と地図の作成、高位階者の調査を行っております。すぐに資料をお見せできるかと存じますわ」


「うむ。頼むぞ。皆には期待している。現状、和平路線で行くのは決定事項だ。それを心に留めておけ」

「陛下、そのことで1つお聞きしたいのですがよろしいでしょうか?」


 レックスがこれで締めようとすると、鬼武蔵が相変わらずの不敵な笑みを浮かべたままで口を開く。


「何だ? 言ってみろ」

「はッ! 陛下は和平をお望みかと思いますが、それを理解していない者もおります。それを教示して頂けませんでしょうか?」

「ふッ……良いことを教えておこう。選択肢は1つだけではないのだ! そして戦いは武力だけではないと知れ!!」


 選択肢は多い方が良く――多過ぎても駄目だが――常に備えてどのような方向へも動けるようにしておくべきだ。国家間の外交なのだから戦うだけではなく、話し合いで解決したいところだ。武力を背景にした恫喝外交だけでは駄目で、様々な切り口から平和的な外交を試みる必要があるとレックスは考えていた。


 その力強い言葉に鬼武蔵を始め、守護者ガルディアンたちが衝撃を受けている。

 誰もが口を開けない中、鬼武蔵だけが言葉を絞り出す。


「な、なんと……そこまでお考えでしたか……流石は……流石は至高なる御方おんかた!!」


 皆の心に響いたようで何よりだ。

 そうなんだよ。

 なんでも武力で制圧すればいいってもんじゃないんだよ。

 別に異世界に来てまで他国を攻める理由なんてないしね。

 それを理解してくれれば十分だとレックスはしっかりと自身の考えが守護者ガルディアンたちに伝わったことを喜んだ。


「さてな。宿に戻るか……それでは後のことは頼んだぞ。この地に楽園を作ってやろう。理想郷アルカディアは天にあるのではなく〈黄昏の帝國トワイライト・アルカディア〉の地にあるのだ!」


 場の全員が感動に打ち震えてしまい、何も言葉を発することもできずにいた。

 レックスは【転移門ゲート】の闇の中へと消えていく。


「お休みになるなら自室で休んで頂きたいわ……」

「探求者としてか弱き者たちの目線で過ごそうと言うお考えなのでしょう。それに他にも何かの意図をお持ちのはず」


 跪いていた守護者ガルディアンたちが立ち上がり、めいめいに話し始める。

 自身の守護階層に戻ろうとする者もいたが、鬼武蔵の話は終わっていなかった。


「全員、待ちたまえ。今からマグナ陛下のお考えを伝える。計画を立て次第、実行に移すからそのつもりでいて欲しい」

「ええ、そうね。私もまさかそこまでお考えとは思いもよらなかったわ」


 鬼武蔵がルシオラと顔を見合わせて笑い合う中、守護者ガルディアンたちは置いてけぼりにされた感じがして良い気がしない。

 ジークフリートが少し苛立った様子で声を荒げた。


「何なんだ? オレにも分かるように教えてくれ。勿体ぶるんじゃねぇよ」

「ああ、すまないな。ジークフリート。陛下の先程のお言葉の真意についてだよ」


 それが?と言った態度で憮然とした表情のままのジークフリート。


「陛下は『選択肢は1つだけではないのだ! そして戦いは武力だけではないと知れ!!』と仰った。あれは陛下が我々に気付きを与えるために仰ったのだよ」


 この場で理解している者はルシオラだけだろう。

 ドラスティーナがいれば彼女も理解しただろうが、現在サボリ中だ。


「分からないかね? 我々はついつい戦闘となれば力押しになりがちではないかな? 思い出してみたまえ。陛下は戦いは武力だけではないと仰ったのだよ? つまり表で和平交渉をしていようが、裏で動くなとは仰っておられない。裏で動けと言うのが陛下のご意志だ。故に我々は裏で……謀略、情報戦を仕掛け、裏から敵国を支配すると言う訳だね。理解できたかな?」


 しばしの沈黙。

 それを破ったのはルリであった。

 それを皮切りに堰を切ったように守護者ガルディアンたちが騒ぎ出した。

 どれもレックスを絶賛するものばかりだ。


「な、なるほどぉーーー!」

「すすす、凄いね! お姉ちゃん! 僕驚いてもう何が何だか分かんないよ~」


 ルリに賛同して何処か興奮気味にルラが言った。


「流石はマグナ陛下、偉大なる御方ダ。そこマデお考えトハ……」

「うちには思いつかんわぁ。こんな御方おんかたに仕えられてホンマに幸せやなぁ」


 オメガ零式は戦闘マシーンなので脳筋よりなのか、ただただ感動するのみだ。

 比較的、理知的なレジーナでもそこまでは想像していなかったようで感心し幸せを噛みしめている。


「わたしは知ってたけどね! 陛下がこんな小さい領土で満足するはずがないもんね!」


 メフィストは何故か偉そうに胸を張って威張っている。

 特に取り乱すこともなく、平然に言うのはインサニア。


「ま、陛下なら当然かもね」


「そうだな。だが陛下には武力も見せて頂きたいモンだ。オレの戦い方の参考にもなるだろうしな」


 ジークフリートは苛立った態度から一転して冷静になったようだが、それでもレックスの武力を量りたい様子だ。


「とにかく立案次第動くつもりだからそのつもりでいてちょうだい。では今日はこれまでよ」


 ルシオラが解散を告げると明るい表情で各自の守護階層へと戻って行った。

 後に残されたルシオラとジルベルトも自分の個室に向かう。


「どこまで考えていらっしゃるのかしら……まさに全てにおいて突出したお力をお持ちの御方おんかた……」


 すぐにご期待に応える働きをせねば!と気合を入れながら自室への広い通路を歩くのであった。

ありがとうございました!

次回、レックスは迷宮都市でミノタウロスと戦う。

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