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16. 俺はわおん(レオン視点)


よっ、俺はレオン。

エイルメーア王城騎士団のセオドア隊所属、グレンの相棒だ。


グレンとは同期で騎士団に入って、それからは一緒に過ごすことが多い。

アイツは「相棒じゃねぇ」って言うけどな。

ハハッ、照れ屋かよ!


これでも俺たち、魔獣と戦うときは背中を預け合える仲なんだぜ。

そうやって強くなってきたんだ。


グレンは昔からそこまで愛想が良くなかった。

騎士団に入ってからはガタイも良くなったから、どちらかっつーと近寄り難い方だと思う。

いろいろあったしなぁ……。


おっと、過去の話は置いといて。


グレンのやつ、最近変わったんだよ。


森で拾ったサクラって子の保護者になったんだ。

別の世界から来たなんて、確実に面倒事に巻き込まれる。

深入りするな、って言おうと思ったら、アイツ「放っておけねぇだろ」なんて言い出した。


いや、もともと面倒見のいいやつだけど、まさか本当に引き取るとはなぁ。


サクラも変わった子で、俺たちに気を遣うことはあっても、怯えた様子は殆どなかった。

それどころか、熱があんのにグレンを追って森に入るわ、アイツをオジサン呼ばわりするわ、ほんとすげぇ子だよ。

あれで俺より十以上年下か……。


今じゃすっかりグレンに懐いてるし、騎士団にもどんどん馴染んでる。

最近じゃガルドの手伝いもしてるって話だ。


グレンも無関心なようで、何だかんだサクラのことを気に掛けてやってる。


サクラが魔力酔いで倒れたときはすごい形相で医務官を呼びに行ったらしい。

あのデカい体に凄まれた医務官、可哀想なくらい縮み上がってたってさ。


この前なんてサクラ、魔獣の姿になったんだぜ!?

幼獣の姿だったから街のやつらには気付かれなかったけどな。

サクラの黒髪と、着てたピンクのワンピースの毛色。

犬にも狐にも見える顔に、猫みてぇな体や仕草。

鳴き声は「ギャウ」ときたもんだ。


で、グレンときたら、一発でサクラだって見抜きやがった。

あのデカい体で、片手に乗るんじゃねぇかってくらい小さくなったサクラを抱くグレン、笑えたぜ。


あんな馬鹿面、なんて言ってたけどさ。

そのあと「……すぐにわかったっつの」って呟いてたの、俺には聞こえたからな!


今日の夕食のスープだって、野菜がいつもよりほんの少し小さかったのを見て「これ切ったのサクラだろ」って。


ガルドに聞いたら、本当にサクラが切ったらしい。

どんだけ観察力あんだよって感じだよな。


ルミネスタに開いたばっかのチョコレートの店、真っ先にサクラを連れてってやったみたいだし。


街のコたちに聞いたら、あのチョコレートってやつ、めっちゃ高けぇらしいじゃん。


銅貨一枚でルミの実を二つか三つ買える。

銅貨百枚で銀貨一枚ぶん。

ちなみに銀貨百枚で金貨一枚ぶんな。


で、例のチョコレートは一粒で銀貨一枚だと。

いや、いくら珍しいからって高くね!?


サクラの話だとグレンのヤツ、チョコレート二粒買ってやったらしい。

ほーんと、何だかんだ甘やかしてんだよなぁ。


ま、立派に保護者してるってことだ。

昔のグレンからは想像もつかねぇよ。



今は夜勤の最中なんだけどさ。

あ、夜勤っつっても、今回は普通の夜勤じゃなくて、ちょっとイレギュラーなやつ。

違法な薬だか魔石だかの取り引きが行われるって情報があって、俺とグレン、魔術師団のアレンで潜入捜査してる。


潜入先はなんと、仮面舞踏会。

アレンは場慣れしてるだろうし、俺も綺麗なコと堂々と踊れるから別にいいけど。


グレンは眉間のシワがどんどん深くなるのが仮面越しでもわかる。


「チッ……香水くせぇ……」


女にもダンスにも興味ないし、上っ面だけの会話も嫌いなんだとさ。


そうは言っても任務だしな……。

って思ってたら、グレンの雰囲気が少し柔らかくなってる。


ん?

何かメモでも読んでるのか?


こっそり後ろから見てみたら……手紙?


……ああ、そういうことか。


懐に入れてあったからか、少し皺になった紙。

決して上手とは言えない、辿々しい文字。


たすけてくれてありがとう

けがしないでね


インクのつけ方も知らなかったんだろうな。

ところどころ字が太くなって滲んでるところもある。


お、二通目?

なになに?


ぶじにかえってきますように


さっきのと違ってしっかり折り畳まれた紙に、少し青っぽいインクで書かれてる。

インクが少し光ってるな。


つか、こっちのは手紙なのか?


「レゼル、どうしました?」


……っと。

ここでは本名なんて使わない。

今は「レゼル」、これが俺の名前だ。


「何でもねぇよ、アルヴィン」


鮮やかな金髪と青い瞳を変身魔法で茶色に染めたアレンに振り返る。


「なぁ、サクラに字教えてやったんだろ? どうだった?」


「彼女ならとても頑張っていましたよ。似ている形の字は覚えにくそうにしていましたが……どうしても“彼”の名前だけは書きたい、と」


「なるほどねぇ」


そりゃアイツが可愛がるワケだ。

きっと本人に言っても「可愛がってねぇよ」なんて返ってくるだけだろうけどな。


「……書けてなかったぞ」


「え?」


「俺のも、お前ら二人の名前も間違ってた」


マジか。


「……アルヴィン、本当にお前が教えたのか?」


「勿論です、その場では完璧に読んで書けるようになっていましたよ」


「俺は“ぐわん”、お前は“あねん”、お前は“わおん”になってた」


逆にすげぇ!

よくそこまで器用に間違えたな!

なるほど、似てる字ばっかだ。


ひとしきり笑って……さて。

じゃあ任務といきますか。


なーんて意気込んだのは最初だけ。


結果から言えば、任務は成功。


ただ、疲れた。

すんげぇ疲れた。


ハハッ……アレンって、キレると怖ぇのな……。


さすがのグレンも疲れたらしい。

寮に戻って、サクラが一晩無事に過ごせたのを確認すると、とっとと部屋に戻っちまった。


さーて、俺も寝るかな。


んで、今日は休みだ。

起きたらアイツらみたいに街に行って、チョコレートでも買ってみるか。


きっと、甘いんだろうな。


あけましておめでとうございます

本年もよろしくお願いいたします

そしてここまで読んでくださって、ありがとうございます。

新年一発目、まさかの(?)レオン視点で始まりました。

何だかんだグレンやサクラのことを気にかけてくれているイイ奴なんですよね、彼。

ではまた次回、エイルメーアでお会いできますように。

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