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その2

でき上ったものが硬化(こうか)しないように、

作りかえるために、

永遠(えいえん)の生きた活動(かつどう)(はたら)いている。

……………………

それは活動し、創造的(そうぞうてき)行動(こうどう)し、

()(かたち)をなし、ついで形を変える。

瞬間(しゅんかん)とどまることはあってもそれは外見(がいけん)だけである。

永遠なものは一切(いっさい)のもののうちに活動し続ける。

万物(ばんぶつ)存在(そんざい)(しゅう)(ちゃく)するならば、

崩壊(ほうかい)して()()する(ほか)はないのだから。

                    (ゲーテ『神と世界』)


 

2. プロペラジェノサイド「回天翼」


(あと7人)

 異世界(いせかい)パイガ。

 超大陸(ちょうたいりく)アーキアの北西部(ほくせいぶ)

 17の王国が(ゆる)やかな関係でつながる領域(りょういき)。マルコジェノバ連邦(れんぽう)

 その連邦を構成する一国の乾燥(かんそう)領域(りょういき)屹立(きつりつ)する一枚岩の頂上。

 地殻(ちかく)変動(へんどう)浸食(しんしょく)によって残った巨岩の天辺(てっぺん)

(早く起きろ)

 黄金製の懐中(かいちゅう)時計(どけい)を手にする天使(てんし)苛立(いらだ)ちを(かく)しつつ、優雅(ゆうが)な表情を保つ。

 (きぬ)の衣をまとう天使の名前はサンダルフォン。

 現在の身分は、天使。

 その身分はあくまで「現在」。

 すなわち執行(しっこう)猶予(ゆうよ)身分(みぶん)の天使。

 もうじき天使でいられるかどうかが、決まる。

 ヒュオオオオオ……

 雲より高い巨岩エアーズロックの頂上で、絹衣(けんい)の天使は学生服(がくせいふく)の人間たちをもう一度よく観察する。

供物(くもつ)にささげた教師と運転手、旅行添乗員はいない。ゆえに全部で三十五匹)

 安否(あんぴ)を互いに確認し合う少年たち。

 肩を寄せ合い、自分たちの置かれている状況(じょうきょう)把握(はあく)しようと(つと)める少女たち。

 天使サンダルフォンの様子を(おび)えながらそっと(うかが)う少年少女たち。

(こんな連中に、この私の運命を(たく)さなければならないとは……)

 微笑(ほほえ)みを浮かべる天使の内心は(くら)い。(はらわた)()えくり返るほど、暗く熱い。

「うっ……む」「……ん?」「う……」「……あ」

(あと3人)

 苛立ちのあまり懐中時計の盤面(ばんめん)をぶち割りそうになるのを必死にこらえる天使。異世界(パイガ)への召喚において、召喚者の最初の覚醒(かくせい)に、天使は干渉(かんしょう)できないルール。

(干渉すればこいつらのスキル発現(はつげん)に関わる。(ゆえ)(こら)えろ。(いか)りは(てき)。怒りは破滅(はめつ)(たね)

 天使サンダルフォンは自分にルールを言い聞かす。

 ルール。

 つまりは〝ゲーム〟の中に、天使サンダルフォンはいる。

 ゲーム。

 その名も「ソロモン」。

 使命(しめい)遂行(すいこう)できなかった自らの失点(しってん)を取り戻すための、たった一度きりのチャンス。

 たった一度きりのゲーム。

 失敗すれば天使たる身分を剥奪(はくだつ)される。

 絶対(ぜったい)(しん)モレクによって。

「おい、大丈夫(だいじょうぶ)か」

「え?……ここ、どこ?」

(あと一人)

 手に脂汗(あぶらあせ)を浮かべながら、天使はゆったりとした微笑を顔にはりつけ、最後の一人が目覚めるのを辛抱強(しんぼうづよ)く待つ。

(ちが)うことに思いをはせろ)

 天使サンダルフォンは召喚した修学旅行生たちを(ちが)視点(してん)検査(けんさ)しはじめる。

 ゲーム「ソロモン」のために一度に呼び寄せられる召喚者の数は35名まで。

 決められた瞬間(しゅんかん)に、同時(どうじ)召喚(しょうかん)しなければならない神のルール。

知的(ちてき)にも肉体的(にくたいてき)にも問題ない)

 サンダルフォンの(ひとみ)(うつ)る、(わか)人間(にんげん)集団(しゅうだん)

 東洋(とうよう)比較的(ひかくてき)(めぐ)まれた島国の普通科(ふつうか)高校(こうこう)のホームルーム一クラスをそのまま拉致(らち)召喚(しょうかん)したこと。

飢餓(きが)戦争(せんそう)といった()に直面したことがない富裕層(ふゆうそう)。ゆえに精神的(せいしんてき)(おさな)い。よって行動は読みやすい)

 人選(じんせん)不備(ふび)はないと自分自身に伝えなおす天使。

(問題はここから。どのタイミングでジョーカーを選ばせるか)

 サンダルフォンが自分の闇に呑み込まれそうになったところで、最後の生徒一人が目を覚ます。サンダルフォンは我に返る。平静を装いながら、周囲を見渡すように今一度首を動かし、そして優雅に一声を放つ。

「ごきげんよう。皆様」

 天使の爽やかな声に導かれ、元高校生にして召喚者35名は天使を見る。人の理想とする若い健康青年を象った上位精霊のエリートは、微笑みを絶やさない。

 しかしそのエリートは、ミスをすれば今度こそエリート身分を剥奪され、ただの精霊に成り下がる。

 すなわち崖の縁に立つ天使。

(ジョーカーをいつ選ばせるのが最適(さいてき)(かい)か)

 思案のまとまらないまま、甘いマスクの天使は涼やかな声を続ける。

「ここはパイガ。皆様が先ほどまでいらした世界とは異なる時間軸で進む異世界でございます。そして皆さまは不幸にも元の世界で死にかけ、神モレクの慈悲により異世界へ召喚されたのです」

 エリートは〝(せん)(だつ)〟から予習できることは全て予習してこの場に来ている。

 先達。

 つまりゲーム「ソロモン」の生還者(せいかんしゃ)にして天使身分を死守(ししゅ)した者。

 先達曰(いわ)く、

 (うそ)を言えばペナルティで天使身分を剥奪(はくだつ)される。

 かといってゲームの(こま)として拉致(らち)してきたと人間たちに高圧的(こうあつてき)にふるまえば反感(はんかん)を買う。それは後々(あとあと)面倒(めんどう)ごとを(まね)く。

 (ゆえ)に嘘を言わず、本当のことも言わない。ギリギリのラインを()める。

 それが無難(ぶなん)であり最適解だと〝ソロモン経験者(けいけんしゃ)〟は後輩(こうはい)に教えてくれた。

(ジョーカー……いつ決めたらいいのだ?)

(もう)(おく)れました。私はサンダルフォン。天使サンダルフォン。神の慈悲(じひ)伝令(でんれい)する者」

「異世界……」「天使?」「まじかよ……」「嘘でしょ……」「召喚って、え?」

 ざわめきがさざなみのように広がっていくのをゆっくり見届けるサンダルフォン。召喚者同士の人間(にんげん)関係(かんけい)をこの時点までにある程度見定(みさだ)めておかなければ勝率(しょうりつ)は下がると、先達はサンダルフォンに言い含めた。

(それが、ジョーカースキルを発現させるタイミングを誤らないための条件)

 青空を吹く強い風にプラチナ色のくせ毛をなびかせながら、サンダルフォンはまた言葉を()ぐ。

「神モレクは、死に(ひん)した者に選択(せんたく)を与えます。すなわちそのまま死ぬか。転生(てんせい)するか」

 バスガイドに(ふん)した天使が教師と運転手と添乗員(てんじょういん)の命を刃物(はもの)()き切った記憶だけ欠落(けつらく)している一同は、バスが高速(こうそく)(どう)から轟音(ごうおん)とともに落下していく記憶だけをまざまざと思い出す。

「そのまま死ぬというのは、この異世界(パイガ)でただ、生きるということ」

 言葉を区切って伝える天使の言葉に、召喚者たちの(くも)っていた表情が明るくなる。

(けもの)のように。つまり死ぬときはただ死に、生きられるまでただ生きるということでございます」

 記憶力の高い天使はゲーム経験者にして〝合格者(ごうかくしゃ)〟の言葉を一言(いちごん)一句(いっく)間違わずに伝える。

 合格者。

 モレク神の()したゲーム「ソロモン」において、勝利(しょうり)条件(じょうけん)()たし、天使の座に居座ることを許された者。サンダルフォンにとっての真の(せん)(だつ)

(合格者がいるのだ。決して絶望的(ぜつぼうてき)遊戯(ゆうぎ)ではない)

 自分にそう言って聞かせる天使サンダルフォンの語調は強くなる。

「一方で転生とは、獣のごとくただ生きるのではなく、神モレクの課した過酷(かこく)試練(しれん)に異世界でたち向かうこと。その果てに用意された祝福(しゅくふく)です。望む人種。望む家庭。望む地位。望む若さ。望む健康。望む富。望む瞬間(しゅんかん)。望む記憶(きおく)。元の世界に戻り、しかも(おのれ)の望むあらゆる条件を満たす次の人生。それが転生です」

 転生(てんせい)(かみ)試練(しれん)

 三つのパワーワードが召喚者たちの中を()()う。電流が走ったように鳥肌を立たせる。

「試練」

 天使サンダルフォンは一度間()を置く。(うつむ)く。そして顔を上げる。

「試練とは、魔王(まおう)ラクシャラーヴァを(たお)すこと」

 芝居(しばい)()たっぷりの天使はしかし、(くら)い。(よる)山中(さんちゅう)彷徨(さまよ)幼子(おさなご)のように、内心(ないしん)は暗い。

(合格者の中でも分かれた。ジョーカーをいつ決めるのかは、意見が分かれた)

「皆様が神によりこの異世界に召喚された真なる理由は、勇者として、地上の支配を(くわだ)てる魔王ラクシャラーヴァを覆滅(ふくめつ)すること」

(そもそもこいつら(こま)どもにジョーカーを決めさせるのが正しいのか?こちらで決めた方が良いのか?それについてもっと、判断(はんだん)材料(ざいりょう)()しかった)

「もちろん、そのために必要なだけの能力(のうりょく)をモレク(しん)は皆様に用意(ようい)しました。ですが、それでも魔王を討伐(とうばつ)できるかどうかは(さだ)かではありません。(かみ)より(さず)かりし力を真に発揮(はっき)できず魔王に(いど)めば、残念(ざんねん)ながら(むな)しく死ぬのが定め」

法則(ほうそく)がいまだない。ジョーカーを決めるタイミングも、ジョーカーを決める者についても、勝利(しょうり)法則(ほうそく)確立(かくりつ)していない。現段階(げんだんかい)ではあくまで経験則(けいけんそく)。勝利のための判断材料が(とぼ)しすぎて私が判断材料になる(おそ)れがある。これでは完全な博打(ばくち)。そんなものがあっていいはずがない)

「そうかといって、皆様(みなさま)永遠(えいえん)の時間は用意されておりません。元の世界と同じく、時間の流れに(したが)い、皆様はここで()いていく。成長と同時に老いは(せま)ってきます。生きるとは老いること。魔王に挑める肉体と精神の限界(げんかい)には期限(きげん)があるのです」

(私は天使。精霊(せいれい)頂点(ちょうてん)にして完璧(かんぺき)なる者の一つ。天使が自分の命運を(うん)(まか)せになどしていいはずがない)

 必要(ひつよう)事項(じこう)の説明を終える天使サンダルフォン。


(くび)をナイフで()られた先生(せんせい)たちは、どうなったんですか?」


 一同が口を(はん)(びら)きにしたまま、天使から視線(しせん)を外す。声の方へ目が向く。

「は?」

 そして声を()らしたのは、ほかならぬ天使だった。

「先生です。ほら、あなたによく似た目と雰囲気(ふんいき)の女性のバスガイドがナイフでこう、先生の首を()して()った」

 声の(ぬし)はそう言いながら、指二本を動かし、自分の首を斬る真似(まね)をする。

(なぜ死の直前(ちょくぜん)(おぼ)えている?その記憶は全員消()したはずなのに)

 天使の頭の中が白くなる。山の中で突然(とつぜん)(いや)な感じがして立ち止まる登山者(とざんしゃ)のように。

(こいつは何者(なにもの)だ?)

何訳(わけ)の分からないこと言ってんのよ!」「そうよ!先生がそんなことになるわけないでしょ!!」

「え?みんな見ていなかったの?」

 天使の眼が素早(すばや)く動く。召喚者三十五名の挙動(きょどう)一瞬(いっしゅん)でとらえる。

「おめぇふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!」「頭おかしいんじゃね?」

 そして天使は、()められる中心(ちゅうしん)人物(じんぶつ)をまじまじと見つめる。

(シウラソラ……確か教師のすぐ後ろの席に、一人で座っていたガキ)

 志甫蒼空(しうらそら)

 黒いミディアムヘアの毛先(けさき)は、地を()(かぜ)(はじ)くように()ねている。

「おかしいなぁ……」

 その細身(ほそみ)の少年が今、バッシングを受けて不思議(ふしぎ)そうに首をかしげる。

 ギョロリ。

 首はそのまま。けれど、足元に向けていた視線をもう一度、天使に向ける。

 パチン。

 天使サンダルフォンは懐中(かいちゅう)時計(どけい)(ふた)を指で閉じる。

(モレク神よ。もうソロモンゲームは始まっているということですね)

 天使は決断(けつだん)する。森の暗闇(くらやみ)懐中(かいちゅう)電灯(でんとう)の光を向ける登山者のように。

(シウラソラ……お前をジョーカーにする)

「皆様落ち着いてください。異世界(いせかい)召喚(しょうかん)の際の余波(よは)で、誰しも混乱(こんらん)されておられるのです。先生と呼ばれる方も筐体(きょうたい)操作(そうさ)していた方も異世界へと召喚されております。ただ、こことは異なる場所です。世界はいくつも並行(へいこう)して()るのです」

 (うそ)は言わない。しかし本当のことも言わない。

 ()という異世界へ二人が消えたとは、天使は()げない。

「今一番大切なことは、皆さまの〝今後(こんご)〟でございます」

 (はら)(くく)った天使サンダルフォンは、志甫(しうら)に最初に()みついた女子召喚者に視線を送る。

 和布浪芽衣(わふなみめい)。拉致された2年6組の学級(がっきゅう)委員(いいん)

「……」

 天使に見入(みい)られた和布浪は一瞬(いっしゅん)ビクついたが、すぐに思ったことを口にする。

魔王(まおう)、でしたか?私たちが魔王と戦った場合の勝率(しょうりつ)とは、一体どれくらいのものなのですか?」

 自分と()完璧(かんぺき)主義(しゅぎ)(にお)いのする和布浪(わふなみ)を指名した天使はニコリと微笑(ほほえ)む。

「先ほども申しましたが、それは皆様方(みなさまがた)次第(しだい)でございます。多くの時間をかけて経験値(けいけんち)を積んだとしても、老いと忘却(ぼうきゃく)が勇者様を(とら)え、魔王討伐(とうばつ)に失敗した例もございますし、若さと勇気を(たよ)りに早々に(いど)み、さっさと()って()かれた勇者様もおられます。ただ……」

 天使の目が冷たく光る。

「魔王討伐に成功した事例(じれい)には全て、共通点(きょうつうてん)がございました」

「共通点?なんだよそれ?」

 和布浪(わふなみ)ばかりに目を向けていた天使に、タメ口を聞く男子召喚者。

 大音師(おおとし)(れん)

 学級ヒエラルキーで(うら)頂点(トップ)君臨(くんりん)するワル。

「ジョーカースキルでございます」

 目をガラス玉のように光らせたまま、天使は大音師(おおとし)の方へ首を水平に動かす。

「ジョーカースキルだと?」

 天使の人形(にんぎょう)じみた不気味(ぶきみ)さにオウム返しするしかない大音師(おおとし)

「はい。ジョーカースキルです。()の様々(さまざま)なスキルの発現(はつげん)有無(うむ)頻度(ひんど)はその時々によって異なりましたが、魔王討伐に成功したいずれの場合においても、ジョーカースキルの発現だけは(かなら)()きておりました」

 首だけをロボットのように動かしながら、全員に公平に視線を送りだす天使。

「あっ、あのあのあのあの!」「()て待て。俺がかわりに聞く。ジョーカースキルって、な、なんですか?」

 バスの座席でも、異世界召喚されてもずっと四人で固まっている集団の一人が天使に(ただ)す。

 仙石(せんごく)大輝(たいき)

 学校で一人しかいない歴史(れきし)研究会(けんきゅうかい)の部員にして部長。

「ジョーカースキルとはトランプスキルでございます」

 新たに質問(しつもん)せざるを()ない答えを投げ返し、召喚者の様子を楽しむ天使。

「トランプスキルとはなんですか?」

聡明(そうめい)のクラブスキル、稀少(きしょう)のダイヤスキル、肝心(かんじん)のハートスキル、協力(きょうりょく)のスペードスキル、堅固(けんご)のジャックスキル、柔軟(じゅうなん)のクイーンスキル、王道(おうどう)のキングスキルなどの総称(そうしょう)です。いずれも魔王討伐に役立つ能力で、皆さまはそれぞれ、何らかのスキル発現(はつげん)資格(しかく)召喚(しょうかん)完了(かんりょう)時点(じてん)で神より(さず)かっております」

 説明をしながら、天使サンダルフォンは(すで)呪文(じゅもん)詠唱(えいしょう)を始めている。

「この世界には魔王をはじめとする魔物(まもの)が数多く存在します。魔物とは魔力素(まりょくそ)という因子(いんし)()ざった生命(せいめい)のなれの()てでございますが、それらを倒すことで皆様は各自の所有するトランプスキルを発現かつ成長(せいちょう)させることができます」

「すげぇ」「まるで、ゲームの世界みたい」「パラメーターとかも見えるのか?」「何も見えないけど」

 ()かれた声がそこかしこで()きあがる。

 その中で、無表情(むひょうじょう)で大空を見ている志甫(しうら)深刻(しんこく)な顔つきで地面を見つめている和布浪(わふなみ)(うれ)しそうに、天使にガンを飛ばす大音師(おおとし)。「夢ではござらぬかぁ」と不必要に大声で叫び自分の(ほお)を手で(たた)(せん)(ごく)

「とはいえ、成長(せいちょう)速度(そくど)通常(つうじょう)、微々(びび)たるもの。トランプスキルの極致(きょくち)であり魔王討伐に必要な〝英雄(えいゆう)シリーズ〟の(とびら)見事(みごと)(ひら)けられるものはごくわずか。通常であれば」

 (だま)り込む一同。(つば)をのむ。

「そこで必要になるのが邪道(じゃどう)のジョーカースキルでございます」

(((((ジョーカースキル?)))))

「ジョーカーとはすなわち疑似(ぎじ)魔王(まおう)。ジョーカースキルの所持者(しょじしゃ)(ころ)せば、召喚者様はスキルの極みである英雄シリーズをただちに解放(かいほう)することができるでしょう。魔王討伐に成功した勇者(ゆうしゃ)(さま)はみな英雄シリーズの解放者でした。そしてその誰もがジョーカースキル所持者の(しかばね)()()えてきた召喚者(しょうかんしゃ)でした」

 静まり返る少年少女たち。(かぜ)の音だけが強くなる。

「てことはジョーカーは、俺たち勇者に(ころ)されるってわけか?」

 自分=勇者の方程式(ほうていしき)が頭に()み込んだらしい大音師(おおとし)が、沈黙(ちんもく)(やぶ)る。

左様(さよう)です。そしてジョーカースキルの所持者は皆様で決めることになります。トランプスキルが(だれ)もまだ発現(はつげん)していないこの状況(じょうきょう)、この仲間内(なかまうち)で」

(それって)(つまり)(同級生(どうきゅうせい)を)(クラスメイトを)

(((((殺せってこと?)))))

 天使の言わんとしていることを理解した召喚者たちの背筋(せすじ)(こお)りつく。

(あと少し)

 長い詠唱(えいしょう)がクライマックスに近づく天使は、丁寧(ていねい)に言葉を()ぐ。

「ジョーカースキルの所持者(しょじしゃ)は、他の召喚者すべてに居場所(いばしょ)がばれてしまう呪いを受けます。つまりどこにいても(いのち)(ねら)われる」

(ジョーカーを(えら)ばせるつもりはない。道化師(ジョーカー)は私が選ぶ)

 特定(とくてい)召喚者(しょうかんしゃ)にジョーカースキルを(あた)えるべく、既に詠唱を進めていた天使サンダルフォン。

「しかしそのようなデメリットがある()わりに、ジョーカーに(えら)ばれた(もの)だけは、(みずか)らが(おも)(えが)能力(のうりょく)(かみ)懇願(こんがん)することで、それを(さず)かることができます。邪道(じゃどう)(あゆ)代償(だいしょう)です」

(私が選ぶ。が、自分たちでジョーカーを選んだと思わせないと、(のち)公表(こうひょう)されるビトレイヤーの処分(しょぶん)(こま)る)

 計算し()くし詠唱終了目前の天使が刮目(かつもく)する。

「それでは皆様。御決断(ごけつだん)を」

 強張(こわば)る召喚者たちに問う天使。

「どなたを。ジョーカーに。なさいますか?」

 重い沈黙が始まる。草も木もない岩肌(いわはだ)までズシリとした沈黙に包まれる。


「おい、志甫(しうら)


((((((きた))))))

 大音師(おおとし)の声に、ヒエラルキーの頂点の声で、ほとんど全員の緊張(きんちょう)(きわ)まる。

「なぁに?」

 ぼんやり答える、黒の(そと)ハネミディアム。


「お(まえ)、ジョーカーになれ。(おれ)今度(こんど)こそまじでブッ(ころ)してやるよ」。


 (つね)にいじめる(がわ)の男が愉快(ゆかい)そうに宣言(せんげん)する。

「う~ん、どうして(ぼく)なの?」

 常にいじめられる側の男がまたぼんやり返す。

目障(めざわ)りだからに決まってんだろ」

「ちょっと大音師(おおとし)君!」「ああうざいうざい!じゃあアンタがジョーカーやるわけ?」

 大音師(おおとし)を注意しようとした和布浪(わふなみ)(さえぎ)ったのは、大音師のカノジョ。

 世良田莉子(せらだりこ)。大音師にべったりくっついている。

「……」

 何も言い返せず、天使をキッと(にら)みつける和布浪(わふなみ)

「ジョーカーは、すぐに(えら)ばないといけないんですか!?」

「いいえ。何時(いつ)でも構いません。ただ後手(ごて)に回れば回るほど、勇者様方にとって不利(ふり)になるかと私は(かんが)えます」

「?」

 勝負(しょうぶ)をかける天使。風がやむ。空気が()(わた)る。

「ジョーカースキル所持者(しょじしゃ)は、同時に召喚された人物(じんぶつ)全員(ぜんいん)が生きている状態(じょうたい)でないと決めることができません。例えばここで誰か一人でも頂上から滑落(かつらく)()した時点(じてん)でジョーカースキルは発現(はつげん)しなくなります。すなわち生存者(せいぞんしゃ)全員(ぜんいん)が通常のトランプスキルで魔王討伐に挑むことになります。そもそもジョーカースキルなしでスキルの英雄(えいゆう)シリーズを開いた事例を私はあまり聞き(およ)びません。そしてジョーカースキル所持者を決めずして魔王討伐に成功した事例はございません」

 嘘ではないギリギリの線を攻め続ける天使。

「ここに全員でずっと一緒にいることは(かな)いません。前提(ぜんてい)としてここは安全(あんぜん)地帯(ちたい)ではありません。高所(こうしょ)ゆえに滅多(めった)に魔物はよりつきませんが、例えば魔物(まもの)ロックバードなどは平然(へいぜん)とここを上回る高度を飛んでまいります。ロックバードは強敵(きょうてき)です。まだスキル発現すらしていない皆様方であれば、出遭(であ)ったその場で即死(そくし)見舞(みま)われるでしょう」

 天使が言い終わると風が()く。召喚者たちの体温を急速に(うば)う冷たい風が吹き始める。

「お分かりですか?大集団で固まって行動することは全滅(ぜんめつ)のリスクを増やすことにつながります。ですから、私は皆様をこれから小規模(しょうきぼ)集団(しゅうだん)分散(ぶんさん)させる予定です」

 有無(うむ)を言わさず一気に説明した天使はここで一息つく。

「そういうことですので、ジョーカースキルは今決めた方が良いかと思います」

 イラついた表情を浮かべる大音師(おおとし)にニコリと余裕(よゆう)()みを送る。

「……」

 血管(けっかん)(ひたい)に浮かせた大音師が口を開く。

「聞いただろ。今、ジョーカーを決める。文句(もんく)がある奴がいるならこっちに来い。(がけ)から落ちるかジョーカーになるか、(えら)ばせてやる」

 天使の思惑(おもわく)(どお)り、天使にとっての模範(もはん)解答(かいとう)を、ドスの効いた声で周りに発する大音師(おおとし)

 キャッキャするのは世良(せら)()だけで、もちろん誰の声も出ない。

「おい志甫(しうら)

「わかったよ」

「はぁ」とため息をついた志甫がその場で立ち上がる。

「ジョーカーをやればいいんでしょ」

 (あざけ)るような笑みを()かべる大音師を見ず、志甫は答える。

「そうだ。俺のためにな」

「はいはい」

 志甫は最後まで大音師(おおとし)に顔を向けず、そして天使を見る。

 ギョロリ。

 つまらないものでも見るように、下らない者を哀れむように、天使へ視線を送る志甫(しうら)

「で、どうすればいいの?ペ天使(てんし)(さま)

「少々(しょうしょう)お()ちくださいませ」

 志甫の目線(めせん)(まと)射過(いす)ぎたギャグに(いか)りを(おぼ)えるも、ぐっとこらえ、胸を張り、大仰(おおぎょう)両腕(りょううで)を振り上げる天使。

「神モレクよ。お聞きくださいませ。たった今しがた、ジョーカースキルを()る者が(さだ)まりました」

 本来ならここから数分に渡って続く天使の長い詠唱は既に、終わっている。

 ヴヴヴヴヴヴヴン。

 一瞬にして志甫を中心にして円形(えんけい)魔法陣(まほうじん)がいくつも(かさ)なって展開(てんかい)する。

「召喚者よ、(なんじ)の名を正しく神へ名乗(なの)りなさい」

(ぼく)の名前?僕はシウラソラ」

「シウラソラよ。これより(かみ)直々(じきじき)の御言葉(おことば)をいただきます。(うそ)(いつわ)りなく、ためらいなく、簡潔(かんけつ)に申し述べること」

「はーい」

 青かった空が(あか)()まっていく。冷たい空気がサウナのように極端(きょくたん)(あつ)くなる。


 《……シウラソラニ()ウ。(ナンジ)(ノゾ)ミハ(ナン)ゾヤ》


 赤い空に浮かぶ(くろ)太陽(たいよう)

 そこから()(そそ)ぐように(ひび)く声。その中心にたたずむ志甫(しうら)

「望み、か」

 赤く染まった空の黒陽を静かな眼で見つめる志甫。その足元の魔法陣の光は、今か今かと待ち望むようにじりじりと回転(かいてん)している。

「召喚者よ、(すみ)やかに答えよ」

 (あせ)りをひた(かく)しに隠しながら、天使サンダルフォンが水を差す。

「…………」

(夜の雪山、橋から川へ飛び降りた高校生の動機(どうき)……分かる気がする)

 神に問われた少年は、修学旅行中のバスで、天使の禁厭(まじない)を思いだしていた。


(つばさ)をください」。


(は?)(え?ツバサ?)(何言ってんの?)(()んで()げるつもり?)((うた)かよ)

 志甫がふざけているのか本気(ほんき)なのか分からず、思いがけず混乱(こんらん)する魔法陣の外野(がいや)

 《(ツバサ)トハ、イカナル翼カ。形象(カタチ)ヲ望メ》

 魔法陣の光の回転(かいてん)速度(そくど)()す。()年輪(ねんりん)のようにいくつも巻いた光の陣は時計(とけい)(まわ)り、反時計回りと、ばらばらの向きに、ばらばらの速度で回転している。

「そうだね」

 首の後ろに手を当て、うなじをポリポリと()き始める志甫(しうら)

(どうせ哺乳類(ほにゅうるい)鳥類(ちょうるい)前肢(まえあし)由来(ゆらい)(つばさ)であろう)

 笑いをこらえるのに必死な天使サンダルフォンが、()(つむ)る。

(あるいは羽虫どもの表皮(ひょうひ)由来(ゆらい)(はね)か?なんでもよい。どのような剛健(ごうけん)(つばさ)(こしら)えようとも、私の計画(けいかく)の邪……)


「ヤコブレフVVP-6」。


 志甫の注文で、魔法陣の回転が(にぶ)る。一切(いっさい)の回転が止める。

((((ヤコ?え?))))(((なんて言った?は?)))

 頭に「?」の浮かぶ一同。

 ドサ。

 その困惑(こんわく)の中、エアーズロックで体育(たいいく)(すわ)りをしていた男子(だんし)召喚者(しょうかんしゃ)一名(いちめい)突如(とつじょ)、横に倒れる。

「どうしたアイツ?」「あれ、(てい)(ざき)じゃね?」「あいつ、()たんだ」

 シュン。

「「「「「「!」」」」」」」

 黒い太陽の真ん中に浮かぶ、さらに赤い円。それはまるで、巨大(きょだい)眼球(がんきゅう)

 《認証(ニンショウ)シタ。……飛翔(ヒショウ)のための全細胞改造(ゼンサイボウカイゾウ)支持(シジ)

 天空の眼球が血走(ちばし)る。

「おネガいシマす」

 魔法陣(まほうじん)(かがや)きが増す。光輪(こうりん)が全て反時計回りに高速で回り始める。

 《承諾(ショウダク)準備測量開始(ジュンビソクリョウカイシ)遣形墨出完了(ヤリカタスミダシカンリョウ)

 キイイイイイイイイイイイイイイイイイイ……

 《杭打及(クイダオヨ)基礎工事完了(キソコウジカンリョウ)仮設(カセツ)高力(コウリョク)ボルト接合(セツゴウ)溶接接合(ヨウセツセツゴウ)、開始。鉄骨工事(テッコツコウジ)完了》

(なんだよ、あれ)

 魔法陣の光が志甫(しうら)に吸い込まれていく。

 《型枠設定(カタワクセッテイ)RC躯体工事(クタイコウジ)完了。建具(ケング)配線(ハイセン)、石工事、防水、耐火被覆(タイカヒフク)塗装(トソウ)完了》

(トラえもんのダケコプター?)

 志甫(しうら)の全身を、志甫自身から生えてきた(くろ)(つる)(おお)う。頭部の頂端(ちょうたん)で蔓は(から)まりながら放射状(ほうしゃじょう)に、開いた(かさ)のように広がる。

 状況(じょうきょう)()み込めない者たち、思考が追い付かない者たちはただ、記憶の中にあるモノで〝それ〟を認識(にんしき)しようとする。

 そうするしかない。

(キノコになった?)

 召喚者にとっての、その見た目は、(しわ)だらけの、大きな黒いキノコ。

「…………うゴけ」

 見た目は。

 キュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!

 〝黒キノコ〟から、空気を切り()く音と(なぐ)るような風圧(ふうあつ)が全体へ(ひろ)がる。

 エアーズロック頂上で容赦(ようしゃ)のない暴風(ぼうふう)が吹き()れる。

「うあああああっ!」「助けて!!!」「飛ばされる!!」「きゃああああああ!!」

(どうして死んだのか)

 (つばさ)

 志甫の希望した翼はヤコブレフVVP-6。

(高校生はどうして入水(にゅうすい)自殺(じさつ)したのか)

 全長(ぜんちょう)47.7m。(ぜん)(ぷく)44.3m。高さ4.2m。

(〝それ〟は自殺じゃない。ただ知りたかったんだ)

 飛べるはずのない超大型(ちょうおおがた)ヘリコプター。

恐怖(きょうふ)不安(ふあん)だらけの地上に降り立ち、行方(ゆくえ)不明(ふめい)になりそうな(とり)視界(しかい)と)

 垂直(すいちょく)離着陸機(りちゃくりくき)VTOLを発進(はっしん)させるための空中(くうちゅう)空母(くうぼ)

(恐怖も不安もない上空(じょうくう)へ飛び立ち、安心して下界(げかい)を見下ろす鳥の視界)

 合計24()のターボプロップエンジンに、6基のローター。

(二つの鳥の視界は異なるけれど、どちらにも(おぼ)れないのが()ぶことだと、()るため)

 飛べるはずのない、(まぼろし)回転翼怪物(プロペラジェノサイド)

神様(かみさま)(ぼく)(おぼ)れない。溺れない(プロペラ)を望んだ。だから僕を、()かせて)

 《魔法改造終了(マホウカイゾウシュウリョウ)

 天の眼球(がんきゅう)()れる。無数(むすう)悲鳴(ひめい)(こぼ)れる。

 《回天翼(プロペラ)完成》

 黒い光線が眼球の割れ目から志甫に降り注ぐ。黒い眼球が、黒い太陽がかき消える。

 《飛翔可能(ヒショウカノウ)

 ボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ――――ッ!!!!!!!!!!

 エアーズロック頂上全体がさらなる強風に見舞われる。

 地面がひび割れて、しかも、めくれる。

 侵食(しんしょく)された岩が(かみ)のように容易(たやす)くひっくり返る。

 天使が魔法で逆風(ぎゃくふう)を発生させて召喚者たちを必死(ひっし)(まも)る。

(この私の魔法が押されるだと?これがジョーカーの力だというのか?)

「ありえねぇ……なんだよ、あれ」「うそでしょ……」

 メキメキメキメキ……

「キモイ!まじキモイんだけど!!」「ねぇ!あれヤダ!あれ、違うよねアレ」

 ゴキンッ。ガチャチャチャチャチャ……

 爆風(ばくふう)放射(ほうしゃ)しながら巨大ドローンのように浮かぶ、黒い志甫。

「風が強すぎて立ってられない!」「おい!なんか変だぞあれ!!」

 天使の魔法による庇護(ひご)があっても目を開けているのがやっとの召喚者たち。その彼らの前で、〝黒キノコ〟がさらなる異形(いぎょう)をとる。

 《弾薬(ダンヤク)口径(コウケイ)弾薬(ダンヤク)寸法(スンポウ)(ジュウ)身長(シンチョウ)発射(ハッシャ)薬量(ヤクリョウ)弾頭(ダントウ)重量(ジュウリョウ)初速(ショソク)設定(セッテイ)最大(サイダイ)射程(シャテイ)確認(カクニン)装填(ソウテン)方式(ホウシキ)選択(センタク)

(うで)の先にあるこれは(かざ)り、じゃないよね)

 巨大で禍々(まがまが)しいドローンを首に生やした機械(きかい)生命体(せいめいたい)が、確かめるように無骨な腕を持ち上げる。

 《装填(ソウテン)準備(ジュンビ)全工程(ゼンコウテイ)完了(カンリョウ)

(ちから)がアル……」

 まるで砲身(ほうしん)のような(うで)が、

「と思ウユえに、(ちから)があル……発射(はっしゃ)

 《発射》


 ドムンッ!!!!!!!!


 火を()く。

 ドボグシャッ!!!

「「「「「「!?」」」」」」

 暴風の中、血煙(ちけむり)土埃(つちぼこり)が一か所で炸裂(さくれつ)する。

 《報告。召喚者1名の死亡を確認。伊藤(いとう)(けん)(すけ)。男17歳。クラブスキル所持者(しょじしゃ)残存(ざんぞん)(てき)(すう)残り33名》

 出来立(できた)てのクレーターとそこに散らばる無数の肉片(にくへん)と大量の血だまり。

 抑揚(よくよう)があまりなく内容(ないよう)(むご)いが、黒い太陽から降り注いできたのとは(こと)なる天の声。

 それらが合わさり召喚者たちを恐怖(きょうふ)のどん(ぞこ)()き落とす。パニックになる。

「きゃああああっ!」「おい!(けん)(すけ)!!」「(たす)けて!誰か助けて!!」

(神よ。何という(ちから)をお与えになられたのですか!)

 《風圧偏流(フウアツヘンリュウ)計算(ケイサン)終了(シュウリョウ)。105mmL74ライフル(ホウ)砲外(ホウガイ)弾道(ダンドウ)軌道(キドウ)修正(シュウセイ)

 天使の心の(さけ)びを無視(むし)し、黒い太陽の声が再び上がる。

「!?」

 志甫(しうら)の右腕の先はライフル(ほう)(もん)。そして左腕(ひだりうで)は、

 《反動(ハンドウ)予測(ヨソク)演算(エンザン)終了(シュウリョウ)。20mmガトリング(ホウ)発射(ハッシャ)可能(カノウ)

掃射(そうしゃ)縦射(じゅうしゃ)追射(ついしゃ)ハじメ」

 《承諾(ショウダク)

 ブロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロロッ!!!

 岩が、空気が、肉が、血が、ボコボコのグチャグチャになって吹き飛ぶ。

 《報告。召喚者4名の死亡(しぼう)確認(かくにん)寺田理沙(てらだりさ)。女17歳。スペードスキル所持者。窪沢瑠奈(くぼさわるな)。女17歳。ハートスキル所持者。梅山(うめやま)(たかし)。男17歳。クラブスキル所持者。原雄一(はらゆういち)。男17歳。ハートスキル所持者。残存(ざんぞん)(てき)数残(すうのこ)り29名》

「天使の愛シタ者たちは早く死ヌミたいだネ。……テクニカルデータ再回収(さいかいしゅう)

 死亡結果を聞いた黒い空中(くうちゅう)空母(くうぼ)は内臓スピーカー()しに天使を挑発(ちょうはつ)する。

「くっ!」

(やはりジョーカースキル発現は博打(ギャンブル)だったか!!)

 天使サンダルフォンが急ぎ別の魔法(まほう)詠唱(えいしょう)開始(かいし)展開(てんかい)する。

 《連絡(レンラク)転移(テンイ)魔法陣(マホウジン)展開(テンカイ)準備(ジュンビ)確認(カクニン)

「そレハ?つマリ?どイウうこと?」

 火薬(かやく)(てつ)と血の臭いの中に、赤い空が志甫(しうら)の声を(ひろ)う。答える。

 《報告。天使ハジョーカーノ遠方(エンポウ)転移(テンイ)ヲ決断》

「そッカ。それハイイ決断(けつだん)ダ」

 志甫の両脚(りょうあし)の付け根。二つの鼠径部(そけいぶ)から(とう)距離(きょり)の部位。すなわち股間(こかん)から前方(ぜんぽう)へ、勃起(ぼっき)した(だん)性器(せいき)のように伸びる、黒光(くろびか)りする(つつ)

興奮(こうふん)シて(ひさ)しぶリニ射精(しゃせい)シソう」

 そそり立つのは120mm対空砲(たいくうほう)最大(さいだい)射程(しゃてい)18キロメートルの超重(ちょうじゅう)高射砲(こうしゃほう)

 〝射精〟すれば、エアーズロックの召喚者(しょうかんしゃ)陣地(じんち)ごと木端(こっぱ)微塵(みじん)に吹き飛ぶ。

「あア。イく」

 (あお)空中空母(シウラソラ)に、天使が転移魔法(ワープ)を急ぐ。

 ヴ。

()えよ!悪魔(あくま)!!」

 ズゥドォオオオオオオオオオオ――ンッ!!!!!

 シュウウ――ンッ!


 《報告(ほうこく)。召喚者8名の死亡を確認。若尾樹(わかおいつき)。男17歳。ダイヤスキル所持者。家村航平(いえむらこうへい)。男17歳。ジャックスキル所持者。芳野将(よしのまさる)。男17歳。クラブスキル所持者。青木(あおき)(るい)。女17歳。クイーンスキル所持者。梅津(うめつ)(あき)(ひろ)。男17歳。キングスキル所持者。久保(くぼ)千秋(ちあき)。女17歳。ダイヤスキル所持者》

 赤かった空が、白く、そして青くなる。

 雲が流れる。静けさがもう一度戻る。

(なんということだ……34匹中すでに13匹も(うしな)った。ミスった!)

 肩で息をする天使サンダルフォンの全身を()(あせ)が流れ落ちる。

 《報告(ほうこく)。ジョーカースキル所持者(しょじしゃ)転送(てんそう)終了(しゅうりょう)を確認。現在(げんざい)南西(なんせい)3000キロメートル先の離島(りとう)フィリニアに滞在(たいざい)

 黒い太陽出現の時とは異なる軽い天の声が、また淡々と事実を告げる。上空(じょうくう)特有(とくゆう)の冷たい風が汗と土まみれの召喚者たちに吹き始める。

(しかもダイヤスキル所持者が2匹も死んだ。まずい!)

 戦争(せんそう)跡地(あとち)のようになったエアーズロック頂上。召喚者たちは砂礫(されき)からゆっくりと起き上がる。ある者は恐怖でただ(ふる)え、ある者は血に染まる傷口(きずぐち)無我夢中(むがむちゅう)で必死におさえ、ある者は骨の折れた腕の痛みに歯を食いしばり、ある者は(すす)(よご)れた顔面を両手で(おお)い、泣きじゃくる。

 ギョアァ……ギョアァ……

 120mm対空砲(たいくうほう)からの生存者の確認をしようとしている矢先、天使サンダルフォンの耳に、最悪の鳴き声が届く。

(もうロックバードが!?……ジョーカーの出した爆音(ばくおん)のせいで、予定よりかなり早く(かん)づかれた!)

 天使の想定していた時刻(タイミング)をはるかに前倒(まえだお)して、魔物ロックバードがエアーズロック頂上を目指して飛んでくる。

(どうする?どうする?召喚者の能力は、一堂(いちどう)(つど)う今この時に確認しておきたい!エーススキル所持者は後でいい!!せめて、せめてビトレイヤーが誰かだけは今、絶対(ぜったい)()りたい!)

「うお?」「なんなの、光ってる」「あ、私ちょっと、何かきた!」

「!?」

 天使の焦燥(しょうそう)とは無関係(むかんけい)に、志甫の〝艦砲(かんぽう)射撃(しゃげき)〟から(いち)(めい)をとりとめた召喚者たちの体に次々と異変(いへん)が起こる。

 《報告(ほうこく)。ジョーカーによる攻撃から生還(せいかん)したことにより、佐々(ささき)(りょう)。スペードスキル発現(はつげん)剣術(けんじゅつ)スキル(およ)(かぜ)魔法(まほう)スキル解放(かいほう)。同じく庄子結奈(しょうじゆいな)。ハートスキル発現。杖術(じょうじゅつ)スキル及び水魔法(みずまほう)スキル解放。同じく横田(よこた)(ひろ)(のぶ)。クラブスキル発現。種子(しゅし)鑑定(かんてい)スキル及び(つち)魔法(まほう)スキル解放。……》

(ジョーカーから生き延びたというだけで、スキル発現のタイミングが早るとは……)

 魔物ロックバードの鳴き声を遠くに()きながら、呆然(ぼうぜん)となりつつ、自分の境遇(きょうぐう)に少しでも僥倖(ぎょうこう)を見出そうと気持ちを切り()える天使サンダルフォン。生き残る召喚者全員を転移(てんい)させる準備に取り()か……


 《警告(けいこく)。ビトレイヤーを決定(けってい)


 天使の心臓(しんぞう)が思わず止まりそうになる。

 次々にトランプスキルの発現者(はつげんしゃ)が明らかになる中、天使の待ち望んだ〝その言葉〟がとうとう天から届く。

(来たか!)

 天使はうなだれ、(こぶし)を握りしめる。

 《ビトレイヤーは2名。一名はクイーンスキル発現者世良田莉子(せらだりこ)。もう一名はダイヤスキル発現者綾瀬(あやせ)(けい)(すけ)。以上2名に確定》

 頭を上げたサンダルフォンは目を(さら)のようにして二人を探す。

「ちょっ!?何よビトレイヤーって!」「なんだ?俺、何かやらかしたか?」

 ビトレイヤー。

 神が、天使(てんし)抹殺(まっさつ)に向けて放つ猟犬(りょうけん)

 すなわち天使の(いのち)()る特殊スキルの所持者。処刑人(しょけいにん)

 神のゲーム「ソロモン」において、絶対(ぜったい)安全(あんぜん)の位置にいる者はないという証明(しょうめい)

 《世良田莉子(せらだりこ)。クイーンスキルの裁天(さいてん)シリーズ「天使(てんし)篭絡(ろうらく)する(もの)」を確認。綾瀬(あやせ)(けい)(すけ)。ダイヤスキルの裁天シリーズ「天使を斬獲(ざんかく)する者」を確認》

(クイーンやキングはある程度(ていど)覚悟(かくご)していたが、ダイヤまでぶつけてくるとは……)

 天使サンダルフォンはビトレイヤーに抹殺(まっさつ)された幾多(いくた)先輩(せんぱい)天使(てんし)を思い出しつつ、(あご)()れてくる汗を(ころも)でさっと()きながら、次の一手を早々(そうそう)に打つ。

「皆様、よくお聞きください」

(神はよほど私を(うと)ましく思っているらしい)

「先ほどごらんになったように、ジョーカースキルはあまりに無慈悲(むじひ)にして出鱈目(でたらめ)。ですので、神の使徒(しと)である私は皆様を先の暴風(ぼうふう)から(まも)ったように、皆様を加護(かご)(みちび)くためこの地上パイガに存在します」

(私は疎まれし者……上等(じょうとう)。この程度の障害(しょうがい)()()けてみせる!)

「とはいえ私も不死(ふし)ではありません。そして皆様への私の過剰(かじょう)介入(かいにゅう)援助(えんじょ)干渉(かんしょう)を神モレクは()しとしません。ですから、そのような私を排除(はいじょ)するためにビトレイヤーはこの世に存在(そんざい)します」

 頭の回転の速い天使はここにきて真実を語る。

 志甫の虐殺(ぎゃくさつ)砲撃(ほうげき)()()たりにした召喚者たちにはその方が()みていくと咄嗟(とっさ)に判断した天使は、終始(しゅうし)冷静(れいせい)に語り続ける。

「聞こえますか?魔物ロックバードの(さえず)りです」

 生存者たちは言われて、キョロキョロと辺りを見渡(みわた)す。

 スキル発現者の中で遠方(えんぽう)()られる召喚者が「こっちに何かが飛んできている」と(さけ)ぶ。(ゆび)さす。全員がそっちへ目を()らす。(ちゅう)に浮く小さな点。

 やがて鳴き声が風に乗って、召喚者の耳にもようやく届く。小さな点が徐々(じょじょ)に大きくなる。

「〝(わたし)は〟皆様を地上に()がしたい。けれどその邪魔(じゃま)をするのがビトレイヤー。私の魔法を妨害(ぼうがい)するのがビトレイヤー。天使の邪魔をすることは、いうなればジョーカーに(くみ)するのがビトレイヤー」

「は!?ちょっと待てふざけんな!」「え?……え?」

 召喚者たちが目を丸くして世良(せら)()綾瀬(あやせ)を見る。すぐに理解した世良田が「決めつけんな」と怒鳴り散らす。少し遅れて綾瀬(あやせ)がオロオロし始める。

 グギャーオ……

「皆様。この二人をどういたしましょう?私は天使。ビトレイヤーとはいえ召喚者(しょうかんしゃ)を排除することができない(おきて)に天使は(しば)られております。そんな非力(ひりき)な私にできることと言えば、()の者たちを〝どこか〟へ転移させるくらいのものです」

 ギャンブラーのように今度は無表情を顔面に張りつかせた天使サンダルフォンが召喚者たちに問う。ロックバードは着実に近づいている。ロックバードの捕食対象は召喚者だけでなく天使も含まれている。

「大音師君」

「ああ?」

「さっきみたいに、決めないの?」

 学級委員の和布浪(わふなみ)()れた眼鏡(がんきょう)の奥の(ひとみ)で、大音師を見据(みす)える。

「……」

「じゃあ、今度は私が決めていい?」

 低く言われて、大音師の(ひたい)に汗が浮く。

「……知らねぇし。好きにしろよ」

「はぁ?ちょっと何言ってんの?そこは「決めさせない」ってアタシを庇うところでしょ!?リコはどこにも送らない!ブス委員長のテメェを送るってワフナミに言えよ!」

「うるせぇんだよカス!テメェのことなんざ知ったことか!!」

 大音師と揉みあい、張り飛ばされる世良(せら)()

「なあ、和布浪……俺を一体、どこに送るつもりなんだ?」

 まだ思い至らず、半泣き状態で立ち尽くす綾瀬(あやせ)

 全員の視線(しせん)が今度はゆっくり、和布浪(わふなみ)に集まる。

(ガキ!早く言え!)

 天使は無表情のまま、心裡(こころうち)(さけ)ぶ。

「……二人を」

 何かにとり()かれたように爛々(らんらん)と眼を(かがや)かせる眼鏡少女は、(かわ)ききった口の中から声を(しぼ)る。


志甫(しうら)(くん)と同じ場所へ」。


「「!!!」」

 志甫をジョーカーに選んだ召喚者が、志甫のもとに飛ばされる。

 クマを(おり)に閉じ込めた者が、クマの檻の中に入れられる。

 要するに、()ね。天使を殺すような召喚者は死ね。

 要するに、(ころ)されて()い。天使を殺そうとする奴は怪物(かいぶつ)に殺されて来い。

 学級委員は世良田、綾瀬二人の命の在り方をそう、提案(ていあん)した。天使の計算(けいさん)(どお)りに。

承知(しょうち)しました。ビトレイヤーではない皆様、異議(いぎ)はございますか?」

 自分が生き残ることしか念頭(ねんとう)にない自分自身に気づき、恐怖(きょうふ)し、(おのの)き、何も言葉にできない一同。

 泣き崩れて地面を(たた)世良(せら)()(まぶた)を閉じ、ギュッと口を結ぶ綾瀬(あやせ)

「意義はなさそうなので、さっそく送還(そうかん)いたしましょう」

 心で笑う天使が展開する魔法陣が召喚者二名を包む。

「お願い!助けて!!」「ちくしょう……ちくしょう……」

 精神的(せいしんてき)疲労(ひろう)から解放された天使は残る魔力全てを使い、世良田と綾瀬を絶海の孤島フィリニアへ飛ばす。

(勝った。いや、それは尚早(しょうそう)だとしても、少なくとも敗北(はいぼく)は去った)

「「「「「……」」」」」

 エアーズロック頂上。

 身も心もすり減り、憔悴(しょうすい)した召喚者たち。

 グギャーオ……グギャーオ……

 自分たちで(まね)いた悲劇(ひげき)感傷(かんしょう)(ひた)っていられないことを知らせる魔物の声がかなり近づく。

 《注意(ちゅうい)神鳥(しんちょう)ロックバードは上位(じょうい)魔物(まもの)

 天使サンダルフォンが咳払(せきばら)いをする。

「いわゆる鳥葬(ちょうそう)と申しますか。魔物に勇者の肉を食わせるのは少々(しょうしょう)抵抗(ていこう)がございますが、天におわす神に一番近い所で神に見守(みまも)られながら、肉体(にくたい)(おり)より(たましい)()(はな)たれるとすれば、これもまた立派(りっぱ)葬儀(そうぎ)と言えましょう」

 召喚者全員が目視(もくし)できる範囲(はんい)にロックバードが現れる。極彩色(ごくさいしき)(きょ)大鳥(だいどり)。そしてトランプスキルを発現した召喚者たちの脳内にそれぞれ「天の声」が再生される。一同はロックバードの恐ろしさを聞き知る。

「また、その魔物ロックバードを倒せばなおのこと、(こころざし)(なか)ばで(たお)れたお仲間の無念(むねん)(こた)えられるというもの」

(人間の新鮮血肉(レアステーキ)に気を取られている(すき)に、生存者(せいぞんしゃ)を連れて逃げ切る)

 全部を計算に入れて、死体(したい)放置(ほうち)を提案する天使サンダルフォン。

 グギャーオ……グギャーオ……

「それとも全員の遺骸を皆様が手に持ち、地上に向かわれますか?」

 天使はそう言って死者の方へ(てのひら)を向ける。

 バラバラの残骸と化した同級生の死骸を改めて見てしまう召喚者。胃袋(いぶくろ)からせりあがる吐気(はきけ)を必死に()える者。耐えられないで嘔吐(おうと)する者。再び(なみだ)(あふ)れ出させ嗚咽(おえつ)する者。そんなことより近づいてくる鳥型魔物の威圧感(プレッシャー)に耐えきれず尿(にょう)()らす者……。

「何かを得るには何かを失わねばなりません」

「「「「「「「「「「「!!??」」」」」」」」」」」

 そして。

「それがこれから進むべき道。心してください」

 いつの間にかドラゴンに姿を変えた天使サンダルフォンを目の当たりにして仰天する召喚者たち。

「皆様全員を転移させる時間も魔力も私には残されておりません!さあお早く私の体におつかまり下さい!」

 白金色(プラチナ)の毛でおおわれたドラゴンの体に生存者たちは我先(われさき)にと慌ててしがみつく。

「先ほど(たお)れた召喚者(しょうかんしゃ)のお仲間(なかま)鳥葬(ちょうそう)により、(てん)()されます!ジョーカーとビトレイヤーを除き、残るは皆様(みなさま)十九名!」

(全部で19匹。この中からあとは見つけ出すだけ)

 現れた魔物ロックバードが急旋回(きゅうせんかい)し、天使サンダルフォンに(するど)(つめ)で襲いかかる。その爪攻撃を羽ばたいたドラゴンは器用(きよう)(かわ)して天空へ(のが)れる。

「「「「「うわああああああーっ!!!」」」」」「「「「「きゃああああっ!!!」」」」」

 ()り落されないよう必死にドラゴンにしがみつく召喚者たち。

(エーススキル。鬼札(ジョーカー)対抗(たいこう)するための、唯一(ゆいいつ)切札(トランプ)

 ロックバードの執拗(しつよう)追跡(ついせき)を振り切り、日没(にちぼつ)間近(まぢか)、天使サンダルフォンは超大陸(ちょうたいりく)アーキア北西端(ほくせいたん)大国(たいこく)、すなわちマルコジェノバ国に召喚者(しょうかんしゃ)たちを()れて行った。



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