最終話 打ち切りの果てに
【戦闘回避スキル】が発動した俺は、自動で目的地の丘の上に着いた。
ゴーグルに新しい通知が届く。
クエスト:周りを見てみよう→達成
『ミニマップが開放されました』
『未登録地点:1件/名称不明』
「村か?上から見た感じは何も無さそうだけど……」
地図にはうっすらと半透明な場所が表示されている。
灰色の線で囲まれていて雑に四角い。
(いや待て、これ見覚えあるぞ……)
どこかで見たような地形。村の並び。家の配置。
ゲームでも現実でもない――自分が昔書いた小説の設定だった。
『異世界転生したのに村人がドアを塞いでしまって出れない』
あの短編。Webで数十人にしか読まれなかった駄作。
でも間違いない。あの村だ。
「こんなのが現実化してるのか?」
気づいたときには足が向かっていた。
ゲームや他人の世界なら興味は無いが、自分の作った世界なら見てみたい気がする。
村に入った瞬間、背後で『カチャン』とドアの閉まるような音がした。
振り返ると空間が歪み、道だった場所に家が建っている。
「……え?」
ゴーグルの画面が点滅する。
『警告:現在地はマップ外の領域です』
『ナビゲーションを終了します』
「えっ 出られないの?詰んだ?」
村人が寄ってくる。
閉じ込められた村の住民達は、人生に絶望したような希望の無い顔をしている。すべて自分が文章で書いたままだ。
「まさか……出られない村じゃないか……」
もう、帰り道は存在しなかった。
まるで――最初から出口など用意されていなかったかのように。
――
エピローグ
その村で主人公は暮らしている。
やがて考えるのも面倒になる。
朝が来て、夜が来て、それ以外は何も起きない。
死神はもう来ない。
通知も鳴らない。
世界は平和だ。
神界では幼女神が気だるげにモニターを眺めていた。
「え?あれっ?あのニート、なんでそっち入っちゃったの?」
お菓子の袋をバリバリ言わせながらスクリーンを二度見した。
「私の担当エリアじゃないっていうか、実装してないバグ村だし……」
彼女はしばらく沈黙してから、飽きたように言う。
「まあいっか幸せそうだし――バグにしてはよくできてるじゃん」
そして
ポチっと画面を閉じる。
色々な文体を試す用の連載だったのですが、目的は達成されたため放置されてました。
ちょうど良い他の短編が書き上がったため、その短編の世界にぶっ飛ばして完結させました。
→『異世界転生したのに村人がドアを塞いでしまって出れない』
とりあえずの義務感としての完結。
伏線回収もされてません