ボイジャータロット
扇状に青い背表紙のタロットカードが並べられる。
リリさんが
『まず、聞きたい事を確認するわね。
あなたが知りたい事は
仕事を辞めた後、新しい仕事が見つかるかどうかでいい?』
「はい。」
かまこにはなぜか迷いがなかった。
迷っていたら、ここに来るよりも仕事へ行ったはずだ。
『じゃあ、好きなカードを1枚選んでちょーだい』
すぐに目についたカードをめくった。
「死神…」
一般の死神は大きな鎌を持った骸骨の姿が描かれていることが多いが、
この死神は違った。
1枚の絵の中に心理学がベースになっている絵がたくさん描かれている。
『この絵の中で1番に気になったのはどれ?』
「青い人…」
『その次に気になったのは?』
「その後ろの大きな鳥みたいなものの目…」
『じゃあ、青い人はどうしてるの?』
よく見ると青い人には雪をかぶったように白いものが積もっていたから
「凍っている…動けなくなってる。」
『その人は何を考えている?』
「疲れたな。難しい事を考えたくないよ。」
『じゃあ、2番目に気になった大きな鳥のどこが気になる?』
「目です。」
大きな目だった。こちらをギロリと見ている。
『何を感じる?』
「ずっと見られていて、
なんか上司に似ている。
気味が悪い。」
リリさんがくすりと笑った。
『じゃあ、この青い人はいつになったら溶けるかな?』
「日が当たらないと溶けないから
いつかな?」
カードに描かれた背景の後に小さな月がみえるがまだ昇り始めたばかりの位置にあるから、当分溶けそうにない…
「まだまだ先だと思います。」
リリさんは頷いて
『じゃあ、もう1枚引いてみて』
目についたカードをめくった。
『どこが気になる?』
真ん中に貝殻があるのだが、ちょうど蝶が羽を広げたように描かれたものに目がいった
「この貝です。
真ん中を指差した。」
『貝はどんなふうに見える?』
「飛んでるように見えます。」
その下にも巻貝の貝殻があって目がいった。
「この貝も貝殻なんだけど、何か話しているように見えます。」
『そうなのね。じゃ次も1枚引いてみて』
少し迷った。真っ先に目が付いたカードではなく、二番目に目がついたカードにした。
『さぁ、何が気になる?』
カード全体を見ることなく、かまこはカードの上部の絵が気になった。指を指して
「この丸い柄の絵です。」
ボタンのような丸い形の中には幾何学模様の絵柄が配置されて同じものはなく大小様々に描かれていた。
『どうしてそこにあるの?』
ようやくカード全体を見て答える。
「りすが集めて来たみたい。」
丸い絵柄が集まっている下にはりすが2匹木の実をかじっている。
『どうして集めてきたのかしら?』
「美味しそうだから…」
正直に答えていく。
『じゃ、もう1枚引いてみて』
慎重に選んで1枚めくる。
『どこが気になる?』
1番はじめに目がいった絵柄を指差すかまこ
「これです。」
『これは、何かな?』
「…わからないんです。」
かまこにはシミュラクラ現象にしか見えない。
『よーく見てみて』
カード全体を見てみると
「後に宝石みたいなのとか、山とか見えるから…これも宝石になるのかな?」
『そうなのね』
リリさんは納得したように頷く。
『じゃあ、結論を言うわね。』