師走 葬儀屋も走る
師が走るくらい忙しいから
師走とは本当にいい表現だと思う。
かまこは仕事と家事に追われていた。
性格はどちらかというと完璧主義な方だが
病気やヘルニアを患ってからは
自分がやりたい事と出来る事のギャップに悩んでいた。
あれもこれもは出来ないのだ。
そんなある日仕事で葬儀用具を持ち運ぶのを手伝うことになった。
そこそこ重たい物がある。
営業職なのだが、時々手伝っている。
葬儀現場で人手が必要な時は必然的に駆り出されることになる。
良く言えばギブ&テイクの関係の職場なのだが、悪く言えば何でも屋といったところだろうか。
その日は冷たい雨が降っている中、仕事は半日かかった。
ホールで執り行われる葬儀が主流の中でも、
ご自宅葬という選択肢をする地域が存在している。
葬儀道具をトラックに積み込んだりして片づけていく。
葬儀代が高いという問題はテレビでも取り上げられているが、
葬儀屋としては自前のホールでなるべく高く上げていただきたいと願うのは致し方ない気もする。
だが、道理からかけ離れているオプションの押し売りは迷惑でしかないからやっぱり問題になるのだろう。
かまこは葬儀屋に就職して、営業をし始めたおかげか葬儀屋に対しての抵抗感はなくなった。
いつ利用するかわからない、でもいつかはお世話になる、
尚且つ決して安くはないサービスだからこそ
お互い相談のしやすい関係性を築いておくのもいいんではないか?
それが嫌な思いをしなくてもいいひとつの道のような気もしている。
就職した会社は適正価格がモットーだったから、
金額面ではクレームはあまり耳にしたことは無いのだが、
その日手伝っていたご自宅葬に関しては下請けだったから、儲けなど無いようだった。
「これが昔ながらのお葬式なんだよ。」
トラックのハンドルを握る先輩がミッションのギアチェンジをしながらお葬式の話をしてくださる。
この会社では日常茶飯事な光景だ。
ひと通り話が終わるとあーでもない、こーでもないと談笑が始まる。
雰囲気の良い会社だ。
雨はまだ降り続いていて、だんだんと空が暗くなっていく。
「カーポートがあって良かったですね。」
「時間内に戻れなかっただろうな。」
会社の事務所が見えてきた。
「おかえりー!」
他のスタッフに迎えられる。
あたたかい会社だ。
かまこは自然と笑顔になった。
「さあ!帰るよー!」
皆でタイムカードを押して、いっせいに帰る。
平和な会社だ。




