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夜明け前

少しずつだが、腰痛が良くなってきている。


無理のない範囲で家事をして、調子がいい時は散歩へ行く。


だいたい、自分の部屋でのんびりしている。


タロット教室の先生から次回はタロットクロスとタロットカードを用意しておくように言われていた。

時間はあるから、タロットクロスも手作りしてみた。

気に入った生地をお手ごろな値段で手に入れることができて、なかなかうまく出来た。


そして、かまこの部屋にはいつも手の届くところにメソッドの本とタロット教室のテキストが置いてある。


気が向くとメソッドをしてみる。


自分の幸せとは何だろう。


お金持ちにはなりたい。


お金持ちになって何をしたい?


自分がお金に不自由のない暮らしをしているイメージをしてみる。


豪遊したいわけではない。


お金の心配をしなくてもいい状態であれば問題ない。


仕事は…自分も満たされて、関わる人を満たしてあげられるものがいい。


仕事仲間とは協力し合って利益を追求していきたい。


サービス残業とかは御免だ。


『そんなところあるわけないだろ!』


大きな鳥の目(あいつ)が現れる。


相変わらずネガティブだな。


なぜ、あいつが出てくるか?


あいつは、かまこにとって都合がいい存在でもある。


あいつの言う事を聞いていれば

なんとなく仕事ができて、評価される。


あいつの言う事を聞いておけば

なんとなく友達もできるし、人間関係は良好だ。


あいつの言う事を聞いておけば

機嫌もいいから、少しお小遣いをくれる。


あいつの言う事を聞いておけば…


幸せだっただろうか?


いつも将来やお金に不安を感じて

安全な方ばかりを選んでいた。


でも、不安はなくならない。

そして、なにも残らない。


言う事を聞いて上手くいっているときは可愛がられるのに

使い物にならなくなったら

暴言を吐いてはき捨てる。


どういうつもりだ?


あいつはどうして私の前にいつも形を変えて現れるのか?





自分に自信がないからだ。

自分の判断で動いて恥をかくのも、

責任を取る事もできないからだ。


だから、あいつについていこうとした。


そうすれば楽だから。

しんどい思いなんてしたくないんだ。


小さなかまこが現れる。


両手で膝を抱えて落ち込んでいる。


どんなに頑張ったって、仕事は大変になるばかり

時間はない、やることは増えていく、出世しても変わらない

ずーっとこのまま体を壊して死ぬだけなの?

ねぇ、何のために働いているの?


認められるため?

お金のため?

人のため?

自分のため?


ねぇ教えていつまで頑張れば

私のために本当にやりたいことをしてくれるの?

本当に食べたいものを食べさせてくれるの?

こんな腰じゃ遠くまでいけないよ。

いつになったら、素敵な景色を見せてくれるの?

ねぇ…


どうしたいの?


何もイメージできない。


他の誰でもない


縛りつけているのは


自分でしかない。


今まで睨みつけられていたあいつの目が少しだけ悲しげに感じられた。


ハッと目が覚めた。


座椅子に座ったまま、本を片手にいつのまにか眠っていた。


夢かぁ…


メソッド本の開かれているページには


【自分で未来のコマを選びなさい】と書かれていた。


もし、何の制限もなく選べるなら…


時間や労力を切り売りしたくない。

自分のエネルギーは限られているから、有効に循環させたい。

不安もなく穏やかに笑う自分がいい。


今までごめんね。


そして、頑張ってくれてありがとう。


あなたは最高だよ。


もう無理するのはやめよう。


少しずつ貯めた貯金があるから、しばらくはそれで暮らしていこう。

元気になったら、きっと何倍にもなって返ってくるはずだから、

今は自分の身体を回復させることにエネルギーをつかおう。


焦ってつまづくのはもうやめよう。


自分が自分を大事にしないでどうするんだ?


大丈夫あなたならやれる。


あいつに言われた気がした。


あいつが目を閉じて眠りにつくイメージをした。


あいつが目が覚める頃には陽も昇る。


そして私も目が覚めて、自分のコマを演じられるはずだ。


それまではエネルギーを蓄えておこう。


夜明け前は一瞬だけ真っ暗になるという。


ずっと、このままではない。大丈夫。


何か温かいものに包まれたような感触がして、自然に瞼が閉じていく…


窓からは春の日差しが差し込んでいた。




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