不自由さ
「この椎間板がだいぶ傷んできていて、黒くなっているでしょう?」
ショックだった。
もとには戻らないんだろうな。
「で、その下の椎間板が少し飛び出しているから、これが神経を触っているとは思うけど、
このくらいなら軽い方だから2~3週間もすればよくなると思うよ。」
これで軽いんだ…重症だったらどうなるんだ?考えるとぞっとする。
今まで随分重いものを持ってきたし、今ではないだろうけど
若いものが重いものを持つのが当たり前の社会だったから
介護の時なんて、先輩の分まで率先して身体介助をした。
我ながら、頑張っていたはずだ。
睡眠時間を削って働いてきた。
人の役に立つのが嬉しかった。
看取りをさせてもらった利用者さんの笑顔が頭をよぎる。
後悔などしていない。
でも、自分の寿命をふと考えた。
いつまでこの2本足で歩いていられるのだろう?
あの椎間板を見たら、もう介護職は絶望的だ。
足腰が弱れば、寿命も縮む。
多分、そんなに長くは生きられない気がしてきた。
この先の選択は大切だ。
薬を受け取って、会社へ寄る。
上司がいた、目が合うなり怒り出した。
「ずっとこのままでいるつもりか!」
「立って歩いているじゃないか!販売すらできないのか?!」
こんな人の下では働きたくない。
人を奴隷にしか思ってないのだろう。
残念ながら、お前のお金で雇われているんじゃない、会社のお金で雇われているんだ。
会社のものにその態度は失礼だろう。
ましてや、病人だ。
もう、辞めよう。すぐに。
「パートになればいつでも辞められるから。」
なんて上司の都合が優先されていく。
この人、ほんとに30年の経験があるのだろうか?
前職ではエリアマネージャーにまでなったというが、まるで人の上に立てる器じゃない。
さんざん罵倒されてきたが、人事のことなどまるでできない人なんだろう。
不自由な人だ。
なんて思っているとお客様が来店された。
かまこは会社を後にした。




