秋空 【MIRAI】
なんだか気が冴えない。特にこれと言って思い当たる節はないが……
未来は部活の練習中、フッとため息をついた。
コーチは結局この高校のバスケ部を去って行った。それからもうすぐ1週間。それはつまり新人大会の始まりを告げるものだった。
未来たちの高校の相手校は『丘の上高等学校』。そこそこ偏差値も高いし、バスケも強い。いわゆる強豪校だ。
よりにもよって相手がこれじゃあ結果なんて……目に見えたようなものだ。
「はぁ……」
「そこぉ!!」
「イテッ!?誰だよ!?」
言葉と共にバレーボールが飛んできた。それは未来の後頭部に直撃し、未来は声を荒上げながらそのボールが飛んできた方向を睨みつけた。
その先にいたのは――
「なーにが『誰だよ』だっての!!さっさと走れアホ未来!!」
またこれだ。愛奈の言葉に未来はまたため息をついた。愛奈もピリピリしているのだろうか?最近急に厳しくなった気がする。もしかしたらコーチがいなくなったから、その分頑張っているのか?それもあり得ないことではない。
そんなことを考えつつ未来は少しだけ気を取り直してコートの中を駆け巡った。
「まったく未来と愛奈は仲いいよな」
「どっからどー見たらそーなんだよ……」
湊が笑いながら声をかけてきたと思ったらいきなりそんなことを言ってきた。未来はうんざりといった表情を浮かべながら首を振った。
練習時間もあとわずか。今は最後の練習メニューの前に休憩をとっている。
休憩時間になると男子も女子も仲良く話し始める。やはり同じ部活内でのカップルは多く、バスケ部だけでも部員の半分は女子バスケ部にカノジョがいるやつらばかりだ。
「愛奈くらいならすぐにカレシ、できそーだけどな」
「はぁ?あんな暴力女のどこがいいんだよ?意味分かんねぇ……」
「ははは!よく言うなぁ。幼馴染だろ?」
湊は笑いながら愛奈を見つめる。未来も愛奈を見ると愛奈は他の男子部員に囲まれていた。正確に言うとまぁミーティング的なものだが、湊の言うように愛奈はまぁ……顔もいいし頭もいい。スタイルだってそこそこだし、まぁモテると言えばもてるのだろう。
愛奈の囲んでいる部員の中にも結構な人数が愛奈を好いているというのだから驚きだ。
「ってか、なんでそんなこと気にしてんの?あ、もしかして……」
未来は湊の横顔を見ながらにやりと笑った。すると案の定、湊は慌ててこちらを振り返った。
「な、バカ!!んな訳ねーだろ!?オレがいつ愛奈の事好きだって言った!?」
「バーカ。オレはそこまで言ってねぇよ~」
「……ちぇ。隠してたのに……誰にも言うなよ?」
「わーってるよ」
適当にあしらって未来は立ち上がり、グッと背伸びをした。背骨がぽきぽきとなり、少しだけ気分が晴れた気がする。
湊は顔を赤くしたまま未来の顔を見上げてふぅ、とため息をついた。
未来はそんな友に温かな微笑みをこぼしながら愛奈へと目をやる。
愛奈は――愛奈の横顔は未来の知っている愛奈より、大人びて、綺麗だった。
「で、明日は夜練もあるんだ?」
「そ。参加できるか聞いて回ったらみんな大丈夫だって」
「そっか。よかったな、みんな来れて」
帰り道。未来は愛奈から明日の予定を聞いていた。どうやらさっきのミーティングは夜練の事について話していたらしい。
最近は日が落ちるのが早く、空には星が投げ出されたように輝いていた。その輝きが妙に悲しげに見えるのは、オレだけか?
「何したの、未来?星見るなんて珍しーね?」
「あ?別にいいじゃん。たまには見たくなんの!!」
「あはは!そっか、未来もそーゆーの好きなんだね。あたしも大好き」
『大好き』。その言葉にドキッとした。一瞬だけ。
隣の愛奈を見ると優しい微笑みを浮かべながら星空に目をやっていた。その横顔はいつもの愛奈。怒りっぽくて、ほんの少しだけ女らしい幼馴染。……別に変な意味で言ったわけではないが。
じーっとその横顔を見ていると愛奈が急にこちらに目を向けてきた。突然目があって未来は視線を泳がせる。
「なんでジッと見てんの?何かついてた?」
「あ、いや。髪長いなぁって」
「はぁ?何ソレ」
そう言うと愛奈はくすりと笑って視線を前に戻した。未来はホッと胸を撫で下ろして心の中だけでため息をつく。
幼馴染なのになんでこうも変わってくるのだろうか?昔は兄弟のように何をするのも一緒で遂には高校まで一緒になって。
それなのにここに来て今さらながら男と女の差が見に見えてなんだか少しさびしいと感じた。
新人大会。それまでに気持ちの整理がつくといいのだが……
……すみませんでした。
全然更新していませんでした。それどころか話がまたしてもごっちゃごちゃ!!
あはは♪もういいや♪(ふざけんな)