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予感 【AINA】

 初めてみた。あんなに混乱した幼馴染を見たのは。

 部活のため体育館に向かう愛奈は一人、暗く、冷たい廊下を歩いていた。この廊下は日当たりが悪く、なんだか不気味だ。

 それと同じで……


「(さっきの未来も……)」


 そこまで考えて、愛奈は自分に吐き気を覚えた。右手で左腕を握りしめる。爪が食い込んでくる痛みに耐えながら、自分のさっきの考えを消した。消しさった。幼馴染のみらいを見捨てるようなことの考えた自分に……嫌気がさす。

 だが……先ほどの未来はどこかおかしかった。笑い声も、表情も。精神的な何かがあったのだろうか?愛奈にはわからなかった。

 

「アイちゃん!」


 優しげな、柔らかな声が耳を打った。愛奈は左腕から手を離し、声の持ち主――瑠奈に手を振った。

 瑠奈は手を振りながら小走りに愛奈の隣までやってくると急に顔色を変え、愛奈の左腕を取った。


「アイちゃん、これどうしたの!?」


「えっ?」


「え、じゃないよ!血、血出てるっ!!」


 瑠奈の言葉に戸惑い、愛奈は自分の左腕に視線を落とした。見ると、先ほどまで握っていた二の腕のあたりから血が流れている。Tシャツだからなおさらよくわかった。


「あ、あはは!ご、ごめん、握ってたら食い込んでたみたいだね。うわぁ、痛いわぁ……」


「もう!あ、ちょっと待ってね」


 瑠奈は自分の持っていたスクールバッグから消毒液と絆創膏を取り出す。そしててきぱきと愛奈の腕の処置をしてくれた。


「あ、ありがと……ってなんでこんなに用意周到なの?」


 苦笑いしながら愛奈は処置された腕から瑠奈に視線を戻した。だが瑠奈はまだ眉間にしわを寄せている。


「用意周到にもなるよぅ……アイちゃん、力加減できないからいっつもケガするじゃん」


 確かに。愛奈は頷いて微笑んだ。


「まぁ、ありがとね!で、どうしたの?用事はこれじゃないでしょ?」


「あ、そうだった!!」


 瑠奈はポンっと手を叩くと愛奈の顔を覗き込む。その瞳はいつもとは違う、悲しげな光を放っていた。


「アイちゃん聞いた?バスケ部のコーチ。やめちゃうんだって」


「ええっ!!ウソっ!?マジで?」


 愛奈は驚きすぎてとっさに瑠奈を両手首をつかむ。それに驚いたのか瑠奈は目を見開き、パクパクと口を動かしてからゆっくりと頷いた。


「う、うん……さっき蓮くんに教えてもらったの。そ、その……未来君の様子もおかしかったから……」


「あ……」


 瑠奈が視線をそらしながらそう呟くように言った。愛奈もそれは同じ。

 これで未来の混乱の意味がわかった。新人戦が近い、この時期で未来はきっとピリピリしているはずだ。その時にこの事態では……


「ありがとね、瑠奈。あたし、部活見てくる。瑠奈も部活頑張って!!」


「あ、うん!!じゃあね!」


 軽く手を振ってから愛奈は廊下を駆け出した。まっすぐ行けば体育館。

 暗い廊下は酷く冷たかったが愛奈は構わず走り続けた。






「あ、水崎!」


「蓮!……ねぇ、コーチが辞めるって話……」


「……うん。本当らしーぜ。未来に言ったら、その……」


「気にしないで。アイツが先走っただけだし」


 体育館に着いたときに蓮が話しかけてきたのでコーチについて聞いてみると本当だったらしい。

 愛奈はそっと蓮の肩越しに未来の姿を見つめたがその背中はいつになく……冷たかった。暗かった。実際はそうではないけれど――そう、感じた。


「とりあえず、未来には帰りに聞いてみる。部活続けてて?」


「あ、あぁ……」


 蓮にそう告げて愛奈は部室の片づけを始めた。

 その背中を見つめる人がいることにも気付かずに――






「未来~」


「お、遅かったな」


「んー……ゴメン」


 笑いながら言ったけれども……ちゃんと笑えていただろうか?

 愛奈はあの後、男子バスケ部部長、女子バスケ部部長とともに校内放送で呼び出され職員室へ向かったのだ。

 そして告げられた。あの噂の真相を。


「今週いっぱいで俺はコーチの職を退職することになった。残念だけど……これからは遠くからお前たちの勝利を祈っているよ」


 コーチの言葉はこれだけだった。そう、これだけ。

 愛奈は言葉もなく部長たちと共にただただ顔を見合わせ、「ありがとうございました」と頭を下げた。

 やめてしまうのにこれだけの言葉しかなかったのだ。愛奈には「ナゼ?」という言葉が頭の中を駆け巡っていた。


「愛奈?どうした?」


 その声にハッとし、愛奈は我にかえる。目の前には夕焼けの逆光で輪郭を縁取られた未来の顔があった。少し離れ、顔をそらす。


「ゴメン。ただの考え事」


「あっそ……あのさ」


 未来は愛奈の隣に並ぶと気まずそうに視線を足元に落とした。その横顔はやけに……大人っぽい。

 別にカッコいいと思ったわけではない。


「その……今日、ゴメンな。俺、おかしかったよな?マジゴメン」


 そう言って頭を下げる未来。その姿が妙に遠く見えたのは気のせいだろうか?

 愛奈は未来の頭をポンポンと叩くように撫で、ニヤニヤと笑ってやる。


「いーのよぉ、別にぃ!愛奈ちゃんがいなかったら未来君はどーなってたことか……」


「ぷっ!!なんだよその言い方!アハハハ!」


「うっわ!失礼だな!!ほんとの事じゃないのよ!!」


 いつもの喧嘩。やはり……気のせいだ。未来は未来。愛奈わたしの幼馴染であることには変わりない。

 たとえ何があっても。




 だが、この出来事をきっかけに愛奈と未来はすれ違い始めるのだ――

さてさて……久しぶりの更新です!!


中身はあれですよ?

続きが楽しみになる書き残し方しましたよ?

え、だってその方が妄sブフッ∵(´ε(○=(゜∀゜ )


ありがとうございました✩

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