思い 【AINA】
ショッピングセンターで昼食を済ませ、愛奈たちはショッピングセンターからカラオケ店へと向かっていた。
「なんでカラオケなんだ~?」
未来がまるでどこかの小学生のような口調で話しかけてきた。振り返って彼を見ると彼は朝と同じようにパーカーのポケットに手を突っ込み、頭にはフードをかぶってだらだらと愛奈たちの後をついて来ている。
愛奈は心の中で「しゃきっとしろ」と思ったが、瑠奈が楽しそうに未来を見ているのでそこは言わないでおく。
「いいじゃん。未来歌うまいし。人の少ないところって言ったらカラオケでしょ?」
「どんな解釈だよ、おい……」
「でもみんなでカラオケっていいね~楽しいもん」
「そーそー。だから文句言うな」
「あーあーわぁったよ!!じゃ、口にチャック」
そう言って口の左端から右端にかけてチャックを閉じるようにした。愛奈は大きなため息をつき、首を振る。
……これじゃあ小学生と話をしているようなものだ。瑠奈は一体こんなやつのどこに『惚れた』と言うのか……
……簡単に要約してしまえば、今日の予定は『瑠奈のため』。瑠奈は未来の事が好きらしい。
「(あたしから見たらただのガキンチョなんだけどなぁ……)」
隣でにこにこと嬉しそうに歩いている親友と後ろをだらだらと歩いている幼馴染を交互に見て小さくため息をした。
彼女のため息を聞いたのはこの街の誰もいない。そう、誰もイナイはず――
「これ。次、瑠奈だよ」
「あ、うん。ありがと未来君」
瑠奈は未来からDAMの機械を受け取り「何がいいかな」と呟きながらタッチペンで画面を叩きながら曲を探し始めた。未来はそれを見て少しだけ微笑んだ。その姿に愛奈の心はなぜか……痛む。ズキズキと。
だが愛奈は歌を歌っていたためそんなことを考えている暇も、二人を見ている暇もない。それに――こんな感情、自分は――自分にはないはず。なにせ、知らないのだから。
それに――自分に本当の感情など――……
「(あ……終わった)」
そんなことを考えながら歌っているうちに曲が終わっていた。ほとんどぼーっとしていたので、点数は……
「何コレ。ちょー低い……」
75点。好きなアニメの曲。この前歌ったときは88点も行ったのに、なぜこんなにも下がってしまったのか……
「愛奈、途中から声めちゃくちゃ小さくなってたけどー。どうしたんですかー」
明らかに棒読みで未来がいたずらっぽい笑みを浮かべながら――声的にそんな感じだった――そう言うのが背中に聞こえる。愛奈は体温が急速に上がるのを感じた。
「う、うるさい!!ほら、次未来の番だよ!!」
そう言ってマイクを未来に押しつけるようにする。未来はニヤニヤと笑いながらマイクをするりと愛奈の手から取った。そしてマイクの電源を入れたり消したり……
愛奈は自分の中で何かがぶち切れ、叫んでいた。
「さっさと歌わんかアホ!!」
「るせー!!俺の癖なんだよ!!」
「み、未来君。マイク持って叫ばないで……」
瑠奈が愛奈のすぐ近くまで来てはぁ、とため息をついた。
どうしたのだろうか?愛奈は心配して彼女の顔を覗き込む。
「……どうしたの?瑠奈」
「アイちゃん……わたし、アイちゃんみたいに話せないよ……なんか、きんちょーしちゃう……」
「んー……大丈夫だよ?普通に男子と話す感覚で行った方が未来も楽じゃないかな?」
愛奈が言いきると未来の歌が始まった。曲は『アゲハ蝶』。
歌うその横顔は本当にあの未来なのか?と思うくらい、大人びていた。
「……かっこいーね、未来君。いいなぁ、アイちゃん、未来君みたいな幼馴染がいて……」
「ええ……あんなのが幼馴染ならきっと瑠奈も冷めてると思うよ?うるさいし」
「そーかなぁ……」
少し羨ましそうに未来を見つめながら言った瑠奈に愛奈は首を振って否定した。言ってることは本当だ。本当の、本当。嘘なんかない。
けど……今の幼馴染は今まで見たことがなかったくらい……カッコいい思った。……少しだけだが。本当に少しだけ。アリくらい。いや、ミジンコくらい。
ツンデレじゃない。絶対に違う。あり得ない!!
愛奈は自分の頭によぎった言葉に自分で否定して自嘲気味に微笑んだ。
それとは別に……未来に焦がれる瑠奈が羨ましいと……小さく思った。
カラオケいいですよねー!!
この前行ってきました!!しかし点数でないですねー。最高88点ですよ、愛奈と同じです。
……それにしても田舎のカラオケ店はやっぱり曲が少ないんでしょうか?県庁所在地にすんでいるいとこが来たときに
「え!?○○○ないの!?」
と言われました。
DAMって全国共通ですよね!?え、東北だけじゃないですよね!!