曇天 【MIRAI】
「――で、ここはいいな。次は――」
数学の授業中。
正直言ってめんどくさい。今さら昨日やった授業をしたって何も面白いことなんてなかった。
七峰未来、高校2年。
未来ははとりあえず黒板の板書だけはしていたが、その内容も昨日の授業とほとんど同じ。『復習』なんてめんどくさいことをなぜやるのだろう。授業を受けるなら新しいことを覚えたいのに、同じことをやっていては意味がないと思った。
「……ちょっと未来」
いきなり横から声をかけてきた少女。
この少女は未来の『幼馴染』の水崎愛奈。
小学校から中学、高校となぜか一緒になってしまった腐れ縁。そう、未来は思っている。
「んだよ、授業中だぞ。静かにしてろよ」
愛奈の方に顔を向け人差し指をたてて口元に当てた。
それを見て呆れたようにため息をつく愛奈。長めの茶髪っぽい髪がさらさらと肩を流れる。
「アンタねぇ……一体どこに板書してんの?」
「へ?」
愛奈が指差した先に視線を落とすとぼーっとしていたせいか、ノートは真っ白で逆に机には随分と汚い字で数字がびっしりと書かれていた。
「げっ!!やっべ」
思わず叫んでからしまったと口を抑える。教室内からくすくすと笑いが起こった。
「こらー七峰。うるさいぞー」
「は、はい!すいません」
愛奈が隣で肩を落とすのが分かった。未来は慌てて机の上の文字を消しゴムで消していく。
「(くっそ、めんどくせぇな……)」
未来は眉をひそめながら静かに文字を消す。
どちらにしろ授業を受ける気は初めからなかったし、新しいことはやらないようなのでどうでもいいと思い、未来は消しゴムのカスを払うと、頬杖を突く。
未来の席は窓側。いつもなら光がさして温かいのだが今日は生憎曇天で太陽の光は一切地上に降り注がなかった。
学校帰り。
愛奈とは家が近いため一緒に帰ることになっている。それを見たクラスメイト達は冷やかしてくるが、別に未来は気にはしていなかった。
学校から家までの距離は1,5Kmくらいだ。もちろん徒歩で学校に通っている。未来の家と愛奈の家は100mくらい離れている。道のりで言えばの話だが。
「未来ってさぁ、何か夢中になってるものとかってないわけ?」
唐突に話題を変えてきた愛奈に未来は前を向いたまま適当に答えた。
「はぁ?うーん。学校に行くことと部活すること?」
「……ふぅん。カノジョとかにきょーみないの?」
愛奈の質問に未来は肩をすくめる。そしてにやりと笑うと愛奈の顔を覗き込んだ。
「何?俺のこと好きなのか、愛奈」
「ばーか。違うよ。……ちょっとね」
「あっそ」
意味深なことを言って顔をそらす。愛奈の顔は最近読めなかった。
いつもなら何を考えているのかさえ分かるはずの少女の顔は最近、未来の知らない顔になりつつある。自分の知らないところで彼女が何をしようと勝手なのだが、なぜか気になってしょうがなかった。
いつもなら見えるはずの星も見えない曇天の空の下、未来と愛奈はにぎわう街の中を歩いていた。
こんにちは!!緋花李です。
恋愛物は初挑戦……友達と書いている漫画でも幼馴染はなかなかいい味出してくれます。
これからよろしくお願いいたします!!