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#01 現代日本から異世界に

周藤有紗はスマートフォンの画面をじっと見つめていた。アプリの画面上でプロフィールを一つ一つ慎重に見ていく。


「どこかいい人はいないかな」


そう呟きながら、自分の理想像をイメージしつつ、数々のプロフィールを見て回っている。仕事で忙しく、普段出会いの機会も少ないため、こうしてマッチングアプリを活用してる。


マッチングアプリとは、スマートフォンのアプリを使って、自分に合った相手を探し出すことができるサービスだ。自分のプロフィールを登録し、相手のプロフィールを閲覧して気になる人がいれば、メッセージのやり取りを始められる。お互いに「いいね」をすれば、マッチングが成立し、本格的なコミュニケーションに発展していく仕組みになっている。


「...この人、いいかも」


その時、有紗の目に留まったのが、金髪蒼瞳の男性の写真だった。ほりが深く明らかに日本人ではない顔立ちだ。こういう人たちも日本でマッチングアプリを利用するんだ!?と驚きながら、プロフィールを開いてみると、何やら文字が乱れてよく分からない。


「これって、何か不具合かな」


困惑しながら、有紗は男性の写真をしばらく眺めていた。文字が判読できないのは残念だったが、少なくとも容姿だけは理想的だ。


「まるで王子様みたい、これCGじゃないよね?」


最近はAIで実写と見分けがつかないような顔写真を生成するのも簡単だと聞く。さっきも銀髪黄眼の人がいたが、偽物っぽく見えてスルーした。これもそんなふうにAIで作った顔写真で、実際会ってみたら全く違う人が来るってことかも。


「まあ、でも会ってみれば分かるよね」


そう考えた有紗は、躊躇うこともなく、その男性ににメッセージを送ることにした。


<こんにちは。プロフィールの文字が読めなかったのですが、お写真拝見したところ、とても魅力的だと思いました。是非お会いして、お話しできればと思います>


そう書いて、送信ボタンを押した。些細なことに構わず、自分の直感を大切にしようと決めたのだ。


そのメッセージを送った瞬間、有紗の体が突然光に包まれた。驚いて目を閉じると、今いた部屋の雰囲気が一変していた。


見渡すと、見たことのない荘厳な祭壇が立っている。そして、そこにいたのは衣装を纏った男女の姿だった。男女は日本人ではない、と言うことしかわからないが、それだけに年齢なども有紗にはわからない。有紗は思わず声を上げそうになるが、その前に男女のうち、男性が話しかけてきた。


「ようこそ」


「えっと……」


「とてもびっくりしていると思うが、貴女に危害を加えるつもりはないので、まずは心を落ち着けて欲しい」


「ここは、どこ?これは夢……?」


「儀式の間ではあまり長居できないので、まずは応接室に来てもらえるかな?すべて説明する」


「……はい」


男女の先導で、別室に移動する。落ち着いたシックな雰囲気の部屋に通され、ソファに座るように促される。


「では、自己紹介から始めよう。私はロベール・フォンティーヌと言う。こちらは妻のエリザベスだ。貴女のお名前を頂戴できるかな」


「私は周藤有紗、周藤が家の名前です」


「そうか、ではスドウ家の御令嬢、順に説明をーー」


「アリサでいいです。明らかにあなたの方が年上だし、私はそんな風に呼ばれ慣れてないから」


「……わかった。ではアリサ、ここはあなたにとっては異なる世界だ。魔法の儀式によって、あなたにはこちらに来ていただいた。この建物から外に出ない限りは、元居たあなたの世界に戻れるから、安心して欲しい」


「異世界に召喚されたってことですね」


「そうだ、話が早くて助かる。あなたの世界には魔法はないが、そのような創作はあると聞いている。だが、誰しもが嗜んでいるわけでもないと」


「つまり私が初めてではなく、明確な目的があって以前にも召喚してる、ってことでしょうか」


「そうだ。これから"儀式を成功させる条件"と"あなたを召喚した目的"について話す」


「条件と目的ですね」


「そうだ、まずは儀式を成功させるには条件がある。魔法の儀式を執り行う者は実子のいない夫婦に限られている」


「すごく限定的な召喚の儀式なんですね」


「その由来を話し始めると長くなるから、今は、責任を持って身請けするためだ、と思ってくれ。私はこの国、アルデルフ王国の公爵家の当主だ。私とエリザベスと間には残念ながら子供に恵まれなかった。そのため、今回の儀式の執り行う者に選ばれた」


「なるほど、無責任に召喚するのは誘拐と同じですね」


「その通り」


「他に条件はありますか?」


「ああ、誰でも良いというわけではなく、アリサは私たちの養子としての条件を満たしている」


「養子の条件?」


「魂の繋がりだ」


「異世界の私と、あなた達との繋がりがあるというの?」


「ああ。魔法のない世界のアリサには理解し難いとは思うが、血の繋がりより重視するものがある。その繋がりは、私とエリザベスの両方とつながっていなくてはならない」


「魂の波長みたいなものが合うってやつかな」


「その理解で十分だ。今こうして話をしていても、私はアリサとの繋がりがはっきりと分かる。エリザベスもそうだろう。私やエリザベスにとっては、もはや他人とは思えないほどに、強く繋がりを感じている」


ずっとにこやかに黙っていたエリザベスが、もう堪らないと言う風に口を開いた。


「ええ、私はもう貴女を我が娘のように……、ずっと待ち侘びた愛おしい娘にしか思えてないの。アリサ、ごめんなさいね、こんな見知らぬおばさんに娘と思われても迷惑よね」


「いえ、少しわかります。あなたたちには親近感を感じています。上手く言えないけど、久しぶりに会った親戚の人と話してるみたい」


「アリサは聡明で、冷静だな。今まで召喚した者の中には話ができないほど取り乱して、そのままお帰りいただいた者もいたと聞く。非常に良い縁に恵まれたようだ」


「縁で思い出した!私はマッチング……、えっと、何と言えば良いのかな……」


「マッチングアプリ、だな」


「そんな事まで伝わってるのね。そう、それで文字が読めないプロフィールの男性に会えないか、って申し込んだところだった」


「ああ、わかっている。君が姿絵を見た男性はこの国の王子だ」


「え、本当に王子様だったの!?」


「ここからがあなたを召喚した目的の方だ。私たちが君に望むのは、私たちの養女となり、そして、この国の王子の婚約者になって欲しい」


「婚約者!?しかも王子様の!急に言われても、心の準備が出来ないかも」


「すまない、当然のことだ。しかしさらに申し訳ないことだが、アリサにはこの場で決断をしてもらわなければならない」


「決断?」


「そうだ、先ほども言ったが、この建物から出ない限りは元の世界に戻ることができる。しかし、あまり長居は出来ないんだ。だから、この場で私たちの養女となってくれるか、あるいは元の世界に戻るのか、決めて欲しい」


「ごめんなさいね、アリサ。でも、もし私たちの養女となってくれるなら、私たちはアリサを娘として大切に扱うわ」


二人の真剣な様子に、有紗はじっと見つめていたが、意を決して、口を開いた。


「私は二人の娘になる。そして、王子様に会う」


「良いんだね?」


「仕事ばかりの生活にうんざりしてたところなの。憧れの王子様に会えるなら、未練はない」


「簡単な手紙ならアリサの世界に戻せるけれど、ご家族にお知らせするか?」


「私に家族はいません。両親はすでに亡くなってるから」


「そうか、辛いことを聞いてしまったな、すまない」


「いいんです。だってあなたたちが私の家族になってくれる。ね、お父様、お母様」


こうして周藤有紗改めアリサ・フォンティーヌとして、異世界での生活が始まろうとしていた。

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