七十五話 すぐにでも
ドラゴンたちに協力してもらうという約束を、彼らの長と無事取り付けるできた蒼佑とソフィ。長から連れていくようにということで預けられた、灰色ドラゴンのランドルの背に乗ってマハラに訪れた。
当然周囲は騒然とするものの、蒼佑の姿を見たことで物騒な事態は避けられたようだ。人間たちと戦う可能性を考えていたランドルにとって、蒼佑の存在があったとしても、歓迎されていることに驚きが隠せないでいた。
そして、マハラの中でもっとも大きな建物の一室。そこでは蒼佑とソフィが、チュリカとバレクト、グラット兄妹にタリッサたちといった、マハラでのまとめ役たちに、アスラ封印から現在までの流れを話した。
「一難去ってまた一難……だな」
一連の流れを聞き終えたグラットが、大きな溜め息の後にそう言った。他のメンバーの表情もかなり険しく、事態の深刻さを物語っている。
「ドラゴンなんか連れてきたからなにかと思ったら、あれは援軍だったってことだね。それにしても、蒼佑たちの世界から来たって、日照国軍だっけ。彼も異世界から呼ばれたってこと?でも軍勢なんでしょ?」
「そうなんだ。勇者召喚だとしたら、呼ばれるのは基本一人のはずだし、今回のはそれこそチュリカの言う通り軍勢って規模だ」
蒼佑の胸中にふたたび過るのは、ひとつの可能性だ。それは "この世界と向こうの世界が同じ世界" ということ。
もちろん、ここにいる全員がうっすらと同じ考えに至っていた。
「事実はどうあれ、今考えるべきはどう戦うかだろう。相手は空を掌握しているのだ、だからこそドラゴンの協力は必要不可欠。それに、魔族もな」
僅かに漂った沈黙を切り裂いたのは、チュリカに続いて年長であるバレクト。彼の言葉に、獣人であるタリッサも頷いて続けた。
「連中は空から、好き勝手に攻撃できる可能性があるんだろう?あんまりのんびりしていたらそれこそ先にやられちまうし、今すぐにでも攻撃を開始するべきだね。まだ来ていないのは謎だけど、それなら好都合じゃないか」
タリッサの言葉を否定する者はなく、それを確認した蒼佑が、意を決したように口を開く。
「あぁ、タリッサの言う通りだ。だから俺は、一週間後までに準備をして、イルギシュ帝国にいる連中に戦いを仕掛ける」
蒼佑の言葉に、場の全員が目を見開いて驚きを露にした。それはソフィも同様であった。
一週間──それまでにドラゴンたちを連れて、他の冒険者たちを纏めて日照国軍に立ち向かうということだ。
いくら今すぐにでもと言っても、さすがにタリッサも気概のつもりだった。
しかし、覚悟を決めたであろう蒼佑の言葉に、誰も反対はしなかった。大事なのは、これからの流れである。
「戦いを仕掛けるのはいいが、人員はどうする?コウタたちとの連絡は?」
「幸多たちは既にこっちに向かってる。俺たちがドラゴンたちに話を付ける前にな。だから、合流してすぐにでも他の冒険者たちに話をするつもりだ。ロックたちのネームバリューもあるし、帝国の状況だってそろそろ話が広がってるはずだから、力を貸してくれる冒険者たちはいると思うし」
気を取り直して尋ねたグラットに、蒼佑が淡々と返す。今はとにかく、拙速を尊ぶべきだと考えているのだ。
相手が態勢を整えきる前にダメージを与えられれば、予想外の打撃になる。それで相手の戦力が大きくダウンすれば、戦いの主導権を握りやすくもなる。
蒼佑たち勇者パーティーともなると、一人一人の戦力は極めて高い。それこそ生身の戦いにおいては負けることはない。
ただ、相手が兵器を用いたとき、戦いは相当に苦しいことになるだろう。だからこそのドラゴンだ。
集めた冒険者たちとドラゴンの協力を得れば、圧倒的に不利ということはない。それが蒼佑の考えであった。
「ただ、それだけじゃまだ不安なんだ。だけど、皆の力があれば心強い……力を、貸してくれないか?」
そんな彼の言葉に、マハラのメンバーが頷いて協力を約束した。




