六十八話 再びフラシア王都へ
イルギシュ帝国を発った蒼佑たちは今、フラシア王国にいた。
本当であればマハラに向かい、アスラとの戦いについてチュリカに話をしたかったのだが、夢愛たちが加わったことで、移動のフットワークの軽さが削がれてしまったのだ。
飛翔魔法の対象は本人のみだからである。
そのため夢愛たちからフラシア領内にいると聞いたロックたちと、もう一度顔を合わせようとの考えがあったのだ。
王都に入った蒼佑たちは、まずバレットの元へと向かった。
彼は過去に自分が世話になっていた孤児院に顔を出すことを知っており、特別な理由がない限りは毎日と言っていいほど孤児院に訪れる。
今回もソレが目的だ。
「そうか、あれからそんな関係になったとはな、アシュリーとサラが聞いたらなんて言うか見ものだな」
楽しそうにそう言ったのはバレットだ。
彼と再会した蒼佑は互いにそのことを喜び、今は蒼佑が去っていった後のことを話したところで、その中でも彼がソフィと結ばれたという話をしたのだ。
「バレットさん?私たちも結構ショックだったんですけど、それも見ものだって言うんですか?」
「私たち?え、私も?ちょっと夢愛?」
バレットに抗議するように言ったのは夢愛であるが、さらにその言葉に反応したのは紅美であった。
実際のところ彼女も蒼佑に対してかなり好意的な気持ちではあるのだが、如何せん過去の行いが罪悪感を抱かせていたのだ。尤も、散々 蒼佑の心を傷付けたわけなので当然だが。
その罪悪感から彼への好意を隠していたが、夢愛にはすっかりソレを見抜かれていたようだ。
「あぁ見ものだな。これからどうやってソウスケと良い関係になるのか、楽しみで仕方ない」
「笑い事じゃねぇっての」
「これから……?」
嬉しそうに言ったバレットに首を傾げる夢愛だが、それもそのはずでこちら側では蒼佑たちのいた向こうと違い、複数の相手と恋仲になるというのはよくある話だ。
そのため、結婚という考え方はあるものの制度は存在しない。
バレットの言ったのはつまり、蒼佑がソフィだけでなく夢愛やアシュリーたちに迫られたことで、困る姿を見たいということだ。
人の恋路を眺めることはちょっとした余興のようなもの。
結ばれたのなら良しではあるが、蒼佑が困る姿を見れるのなら、それはそれで面白いということである。
「そうだこれからだ、もし本当にソウスケが好きだってんならまとめて愛してもらえば良いんだ。自分の気持ちは最後まで貫けばそれでいい」
「貫けば……はい!」
夢愛はバレットに言われた言葉を噛み締めて、力強く頷いた。
その瞳には強い力が宿っているようにも見える。
「変なこと教えんな」
「何言ってやがる、アシュリーもサラもお前が好きで仕方がねぇんだ。サラは遠慮しすぎだし、アシュリーのヤツは諦めてやがるし……とにかく見てらんねぇ。ソウスケからも寄り添ってやってくれ」
「……まぁ、頑張るさ」
蒼佑とて好意を向けてくる相手を無下にするような性格ではない。困りはするが、嬉しくもあるのだ。
「ま、こっちはこっちでぼちぼちやるさ。お前はユメとクレミに寄り添ってやれ、アシュリーたちもこの街にいるから、ユニオンに顔を出してみろ」
「分かったよ」
話を終えた蒼佑たちは孤児院を出て、バレットの言葉通りにユニオンへと向かい、妙にざわついている建物の中に入った。
右に左に視線を向けて目的の人物を探すが、それっぽい影はなくまた後で来ようと思った蒼佑達であった。
だが、踵を返した時に建物の中に入ってきたのは、アシュリーとサラ…だけでなく、ボロボロになった幸多までいたのだ。
見ればグリエラと思しき人物もおり、彼女も同じくボロボロとなっていた。
その光景に当然だが周囲はざわつき、蒼佑たちは彼らの元に駆け寄った。
「幸多!大丈夫か、何があった?」
「えっソウスケ……?」
「蒼佑……よかった、ここに、いたんだね……」
蒼佑の姿を見たサラとアシュリーは驚くものの、今はそれどころでは無いと幸多の言葉に耳を傾けた。
「もう、帝国はダメみたいだ……突然軍隊がやって来て、城が……」
「コウタ殿、無理をしすぎです。今は少し休みましょう」
フラフラの幸多を支えるグリエラ。
二人から話を聞くために、ユニオンの奥の部屋を借りることになった。




