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かつての勇者がもう一度  作者: 隆頭
蒼佑とソフィの新婚旅行?

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六十一話 やれること

 不死に極めて近い命……チュリカが初代魔王、アスラに向けた言葉。

 強すぎる上に死なないとなると、例え彼が暴れ回ったとしても止める方法がないということ。


「フシ……?えっとそれは?」


「死なないってこと」


 蒼佑もソフィも、チュリカの言葉に苦い顔をした。どうしようもないじゃないかと、二人はそう考えた。

 そんな二人を見て、チュリカは続けた。


「でも、どうしようもないわけじゃない。アスラに施されていた封印は私たちの家系で代々受け継がれている。もちろん、やり方さえ分かれば蒼佑にもできる」


 それは光明であったが、しかしそんなに上手く言うだろうかと、二人は半信半疑であった。

 チュリカがどうというより、アスラの規格外の強さのせいである。

 そもそもその封印のやり方自体、二人は知らないのだ。理論上は" できる " だけで、そう易々と"できる "ものでもないだろうと、そう思っていた。


「大丈夫。たしかに過去に封印したときは五十回とかやってようやく上手くいったみたいだけど、成功すれば確実だから……しっかり鍛えてあげる」


 チュリカは、二人が心の準備が出来ていない内にそこまで決めてしまった。

 流されるままに、しかし他に方法もないからと彼女の言う封印を教えてもらう二人であった。



 そして二人が封印の方法を教えて貰っているその時、幸多率いる帝国兵たちはアスラの元に来ていた。

 目的は戦闘ではなく、様子見だ。元の場所から離れているのか否かを確認するために、彼らはやってきた。

 万が一どこかに言っていた場合、更なる被害が発生するかもしれないからとのことだ。



 しかし、アスラのいた森……その奥はすっかり様変わりしていたようで、ソコには大きく広がる絶壁が出来ていた。

 高さは8mほどだが、横には果てしなく広がっており、その奥行は分からない。


 兵たちは現状を報告するために一部が帝国に戻り、幸多とまた大半の兵士たちは絶壁にポツンの空いている、まるで獲物を誘い込むような穴へと足を踏み入れた。

 2.5mほどの高さ、1mほどの幅の入口、そして道がずっと続いており、どこまで続くか分からないほどに奥が見えなかった。

 しかし不思議と視界は確保されており、大体5mほどの範囲は見ることができた。


 それから時間にして三十分は経っただろうか、かなり警戒しながらゆっくり歩いてきたこともあり進みは遅かったが、遂に先が見えた。

 そこには一際大きく明るい空間が広がっており、その中心には玉座がある。

 そしてそこに威風堂々たる態度で大きく座るアスラがいた。


「ほう?お前あの時の羽虫か?一撃で眠ったヤツがこんなにも烏合うごうを引き連れて、まさかもう一度か?俺は構わんぞ」


 あまりにも圧倒的な格。隔絶とした実力を前に思い知らされた幸多は、身震いしそうな身体を抑える。


「いっいや……俺たちはただこの場所を見に来ただけで、まさかアンタがいたなんて……」


「そうか。面白くないが、懸命ではある。俺も敵には容赦しないが、何もしなければこちらもしない。そう怯えるな」


 座ったままのアスラは幸多にゆっくりと告げる。その表情は余裕たっぷりの笑みであった。

 攻撃されることもなければ、そもそも負けることすらありえないということを分かっているのだろう。


 幸多としても、信用ができるという訳では無いが、そもそも勝ち目などない以上大人しくするしかないと、そう思っていた。


「コウタ殿、なぜ戦わないのですか?」


「おいバカ、何言ってやがる」


 しかし、なぜ幸多が戦おうとしないのかを知らない兵士が、彼にそう問いかけると隣の兵士が肩を掴んで止める。


「数の利はこちらにあります、負ける道理はないでしょう。勇者であるあなたなら、負けることはないはずですが」


「もしそうなら、一撃で負けることはありませんよ」


 幸多がいることでいきがった兵士まが、彼の言葉に押し黙る。


「……ここにいても仕方がありません、行きましょう」


 そう言って踵を返した幸多に合わせ、共に来た兵士たちは疑問を抱きつつも彼について行く。

 アスラはただ何も言わずにそれを見送るだけだった。



 彼らが立ち去ったあと、アスラは考え込むように俯いていた。


「アレはたしかにあの羽虫どもから感じたものだ。俺がいない間にすっかり様変わりしたということか……」


 幸多から感じた気配に、彼は過去を思い出していた。

 かつての侵略者たちとの戦い、そして彼らから感じたソレは蒼佑や幸多から微かながらに感じとった。


 強い違和感だが、それだけで命を奪おうというほど血に飢えた性格はしていないのがアスラである。


 過去は平和主義者と言われていたほどに戦いを好まない性格の彼は、人間との思想の相違によって戦いを挑んだ。

 その果てが封印であるが、彼はその事を事実として受け入れており、これ以上人間に対して争うつもりなど毛頭なかった。


 ただそれを彼らに伝えたところで信じて貰えないことも理解しており、だからこそ襲いかかってくる相手以外には何もしない。


 現に彼の作った洞窟の中には無数の魔物たちが大なり小なり息を潜めていたが、コチラからは手を出さないように言い聞かせ、現に幸多たちが何もしなかったことで戦いにはならなかった。


 これから先一体どうなっていくのかと、これからに思いを馳せるアスラはただ、空を仰いだ。

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