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かつての勇者がもう一度  作者: 隆頭
蒼佑とソフィの新婚旅行?

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六十話 アスラ

 初代魔王との戦いで逃げた蒼佑たちだが、彼を倒すための方法を考えていた。

 しかし彼らに知識は無く、手がかりがあるとすればそれはソフィが言った、過去に初代魔王を封印したという者の子孫……つまり、チュリカであった。

 もしかしたら彼女の中に彼を倒す方法があるかもしれないと、そう踏んだのである。


 しかし幸多はあくまでイルギシュ帝国に属する身であるため、魔王の存在が分かった以上それを皇帝に報告しなければならなかった。

 そのために彼は帝国に戻ることになり、また蒼佑たちはマハラに行くことになった。

 これから魔王がどういった行動をとるかは分からないが、大きな事が起こる前に彼に対する力を手に入れなければならないと、蒼佑たちは急いだ。

 魔族しか使えないと言われていた飛翔魔法を使うことができる蒼佑にとって、フラシア王国横断はそこまで苦にはならなかった。

 当然だが、急ぎの用事でもなければ飛んでばかりというわけではない。

 もちろん飛翔魔法を人前で使わないというのもそうだが、なにより足腰を使ったり街道近くに潜む脅威を察知することも理由としてあった。

 あまりにも移動に抜群すぎる魔法である故に、自重しなければならないものである。


 話がそれたが、一週間ほどの移動を終えた蒼佑たちは、マハラのある森を視認したところで地に足を着け、そこからは徒歩である。

 時間にして一時間ほどであろうか、ようやくマハラに到着した。


「ソウスケ?……ソウスケか!話には聞いていたが元気そうでなによりだ!」


 見張りとしてコソにいたグラットが蒼佑に気付くなり嬉しそうに彼を抱き締めた。

 その目には薄らと涙を浮かべており、普段の堅い雰囲気とは裏腹に内心では情に厚い人物であることが分かる。

 元気に飛び去って行った蒼佑の姿を知らないからこそ、ずっと心配していたのだ。


「あぁ、おかげさまでな。喜んでくれて嬉しいよ、心配かけて悪かった」


「謝るな、元気な姿を見せてくれればそれだけで充分だ!さぁ行ってくれ、ってアナタは……」


 蒼佑に会えたことで大いに喜んでいたグラットだったが、後ろにいるソフィの存在に気付き目を見開かせた。


「私か?私はソフィだ、よろしくな」


「そうか。俺はグラットだ、よろしく」


 彼はソフィの正体を知ってはいたが、それでも本人から明かされない限り詮索をしない事にした。事情があるのは彼も同じだからである。


 ソフィは蒼佑の手を取り、蒼佑は彼女の手を引っ張った。そのやり取りを見ていたグラットは目を瞬かせながら困惑していた。



 マハラの街に入り、その中でも一際ひときわ大きい建物に入る。いつも通りその中にはチュリカがいた。

 この建物は言わば、役場のようなものである。

 街というだけあって人数もさることながら、様々な種族が共存しているため各種族のリーダー各がルールを決めたりすることもある。

 もちろん役場もそうだが、裁判のようなことも行ったりユニオンのようなこともやっている。

 ここでは普通に自警団と呼ばれている組織。


 そんな街の中心的な建物のリーダーがチュリカだった。

 蒼佑たちに気付いたチュリカは、パタパタと走って蒼佑に飛びついた。


「ソウスケっ、会いたかった!」


「久しぶりチュリカ。元気そうでよかったよ」


「ふふっ、ソウスケも元気そうで嬉しいよ♪」


 いつもより数段ほど機嫌の良い声で話しているチュリカが、蒼佑の傍にいるソフィに気付いて目を見開かせた。


「……魔王?」


「元、だな」


 ソフィの答えにチュリカは そっか……と返したものの、蒼佑との距離感から敵ではないことを理解した彼女はそれ以上の詮索はしなかった。


 チュリカは二人を奥の部屋に案内し、蒼佑の隣に座って彼に抱き着いた。


「それで、何か話があるんじゃないの?」


「そりゃ積もる話もあるけどさ、ちょっと今はそんな余裕が無いんだ」




 蒼佑はチュリカに初代魔王の封印が解かれたものの、あまりの強さに逃げることが精一杯であったことを話した。

 それを聞いているチュリカの纏う雰囲気はとても緊張したものであり、事態が深刻なものであることが分かる。


「初代魔王……名前はアスラ、。世界最大の大国だったクラシア帝国を大きく縮小させ、その対価として封印された存在。でも、自然をこよなく愛してて、一度だけあった世界の危機を救ったことがあるみたい。まぁ詳しいことまでは知らないけどね、あくまで私の家系に古くからある書物の内容の一つ」


 チュリカは思い出すようにゆっくりと話す。

 蒼佑たちはソレを、ただ何も言わずに聞いていた。


「それによれば、アスラの持つ魔力があまりに強すぎるせいで生き物の基本のキが通用しなかったみたい。つまり、不死に極めて近い命であると言われてるみたいだよ」


 彼女から語られたソレは、蒼佑たちにとってほとんど詰みのような状況であると思わせた。

 

 死なない相手と戦うなど、どうすればいいのかも二人は頭を抱えた。

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