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かつての勇者がもう一度  作者: 隆頭
蒼佑とソフィの新婚旅行?

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五十七話 異常と再会と

 休日を終えて冒険者活動を再開した蒼佑とソフィであったが、一方イルギシュ帝国では騒動が起きていた。


 初代魔王が復活したことは知らないものの、彼が封印されていた場所を中心に凄まじい魔力を感知したためだ。

 それから数日経過し、その場所に偵察部隊を向かわせたものの帰ってくることはなく、何かしらの異常が起きていることはみんなの知るところになった。


「ふむ、並の騎士では生き延びる事さえ苦しいやもしれぬ事を考えると、コウタ殿に調査に向かってもらいたい」


「分かりました」


 魔王ソフィが蒼佑を連れてどこかへ旅に出てしまったところを見送った彼らは、魔王討伐の任を果たしたとして帝国に戻った。

 ロックたちも自分たちの居場所に戻り、再び日常が訪れる。


 それから幸多は、皇帝ゴードンと共に謁見の間に配置され、また第一皇女との婚約を言い渡された。

 皇帝はそんな彼を帝国領の南方にある異常地帯を調査するという任務を言い渡し、彼はそれに頷いた。自分も蒼佑のように世界を守りたいという気持ちがあったから。


 しかしその時、緊急の連絡が入ったようで騎士が飛び込んできた。

 その内容は、魔族と思しき敵性体が攻撃してきたとのこと。数は一人だがソレが異常なほどに強く、対処不可能として勇者に助けを呼びに来たというものだった。



 それから一週間ほどが経ち一方、蒼佑たち二人はとある気配について情報を集めていた。しかしめぼしい情報ものはなく、精々イルギシュ帝国が南方に軍隊を派遣したというものだった。

 それを聞いた蒼佑たちは、もしかしたらそこになにかあるのかもしれないとそちらに向かうことになった。

 しかし、それはできなかった。


「悪いな。領主様より誰も帝国に行かせるなとのご命令だ」


 街の門、蒼佑たちはその前で門番に止められてしまった。

 なぜなら出発の少し前に帝国の兵が異常事態を伝えに来たためだ。極めて強力な敵性体を発見し、調査部隊が幾度となく全滅したという甚大な被害を被ったため、戦える者たちの強力が欲しいというもの。

 しかし、帝国が過去に行った事が原因で、その要請に応える者も団体も国もない。 



 誰もがソレを応えずにいる中、それに応えようと思ったのは蒼佑たちであった。

 街の門から帝国に行こうとすれば止められるが、そこから遠いところまで管理はできない。

 当然それで命を落としても自業自得だが、それならば実力さえあればいい。蒼佑たちにとっては問題にならなかった。



 帝国領に入った蒼佑たちは二日ほど移動し、鬱蒼とした森が妙に気になった。空は明るく、まだ昼とも言える時間のハズだが、どうしてその場所だけやけに暗いのか……それが気になった。


「感じる……」


「え?」


 ぼうっとその森の奥を見つめていた蒼佑の耳に、ソフィの呟きが聞こえた。

 しかし意味が分からず、そちらを向いた。


「なんとなく、ここに誰かがいる気がする……すごく強いのがいると思う……」


「へぇ、ソフィがそこまで言うなら相当……っ!」


 ソフィの言葉を聞いていた蒼佑が、突如奥から向けられた敵意に強く反応する。そして彼は、あることに気付いた。

 魔族を察知する能力が、今になって森の奥から反応したということに。


 二人は目を合わせて頷いた。すぐにその森へと進み、感じた気配の正体を突き止めることにした……が、それを止めるように後ろから声をかけられた。


「待て!たった二人で無茶だ」


「えっ!」


 その声に聞き覚えがあった蒼佑が咄嗟に振り向くと、そこにいたのは幸多であった。彼も蒼佑に気付いて言葉を失う。


「こっ幸多……いやその……ひっひさしぶり、だな」


 自分もあまり理解を出来ていなかったとはいえ、ロクな説明をせずに幸多たちの前から姿を消してしまったことに蒼佑はずっと後悔していた。

 もう少しゆっくりでも、急がなくても良かったのではないか、皆を困らせてしまったのではないかと。

 だからこそ、彼の胸中には気まずさも多分にあった。


「そう、すけ……」


 震えた声で幸多は蒼佑に近付いた。その足取りはとてもゆっくりで、様々な感情に飲み込まれていることが見て取れた。

 蒼佑の元に辿りつき彼の手を握る幸多の目には、涙が浮かんでいた。

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