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かつての勇者がもう一度  作者: 隆頭
蒼佑とソフィの新婚旅行?

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五十五話 目覚め

 無事に……というか呆気あっけなくドラゴンを討伐したソフィは、ソレの頭を右手で鷲掴みにして、ズリズリと引きずりながら蒼佑の元に向かった。

 その表情は晴れ晴れとして……おらずまるで当たり前と言ったふうであった。つまりニュートラルである。


「コレどうするの?持って帰る?」


「そうだな、討伐した証拠は必要だ。怪しい影ってのもコレで確定だろ」


 蒼佑はそう答える。彼が確定と言ったのは、ドラゴン以外で異常とされる空飛ぶ生き物など存在しないからだ。ここまでの大きさなどドラゴン種以外に存在しない。


 ……昨日の戦闘機は例外だが。


 とはいえアレも万に一つさえ目の当たりにすることはないもので、気にしたところで対処法がないと皆が知っており、敢えて触れないことにした。


「いやぁしっかし、ソウスケさんがやべぇのは知ってたけどよ。ソフィさんも随分やべぇな……」


「そりゃだって私はソウスケと互角だからね、ソウスケができることなら私もできるよ」


 先ほどまで驚愕していたクアドラのコメントにソフィが胸を張り得意気に言った。彼らパーティは皆して絶句である。

 蒼佑の実力をある程度知っているからこそ、それと同格であるソフィに底知れぬ実力モノを感じたのだ。


 例えありえないと思ったとしても蒼佑が頷いているので、納得する他ない。



 動かなくなったドラゴンだったものを解体し、皆でソレを持ち帰る。

 ユニオンには依頼を受注する受付と別に依頼中に、手に入った物を買い取ってもらうこともできる受付もある。解体したものは基本的にソコに持っていくことになる。


 持っていくと大層驚かれたが、依頼の内容を知った職員は納得するとともに胸を撫で下ろしていた。

 もしこんなものが現れたら街は無事では済まないと分かったからだ。



 無事に依頼を終えて、報酬を受け取りユニオンを出る。クアドラたちはただついて行っただけだからと報酬の分け前を断ったが、あのドラゴンのブレスから守ったのは彼のパーティにいる魔法使いであり、協力して依頼を果たしたことは変わらないからと蒼佑が無理矢理 渡した。

 とても申し訳なさそうにしているクアドラたちだが、それでもこれも一つの出会いだから気にしないでくれと蒼佑は笑った。



 それから数日間、蒼佑とソフィは二人で依頼をこなして金を稼いだ。できるだけ高いランクのものを選んでいることもありソフィのランクは順調に上がりベーシックCランクとなった。

 ひと口にベーシックといっても大半の冒険者はこのランクであり、相応の結果を出さない限りそうすぐにランクは上がらない。


 そしてマスターランクになるには強力な魔物を討伐しなければならない。先日のドラゴンについてはクアドラたちも同行していたため彼らの協力を前提に討伐したとの考えらしい。

 基本的に冒険者たちのいけんはランクに影響されにくいため、いくら蒼佑やクアドラたちがソフィ一人が討伐したと言っても不正防止のため反映できないのだ。


 そのため、できるだけ少人数での討伐が確実だ。いくら蒼佑のランクがマスターとはいえ、さすがに二人では同行者の力無しでは、例えばドラゴンのような大型で強力な魔物は討伐できないだろうとされしっかりとした実績として扱われる。

 ただし依頼を受ける前にユニオンから警告はされるし、命を落としたり極めて重大な怪我を負ったとしても自己責任となるため、高難度の依頼や討伐は計画的に。



 しかし今いる街にはそういった高難度の依頼がないため今日、蒼佑たちは他の街に向かい更なる依頼をこなそうと思ったのだ。

 まだしばらく滞在すると言っていたクアドラたちに二人は別れを告げて街を出る。



 目指すはイルギシュ帝国寄りの場所に位置する街だ。フラシア王国をほぼ横断することになるのでかなりの時間がかかる……のたが蒼佑もソフィも飛翔魔法を使える。

 ソレを使えば大幅に時間短縮になるため二人に距離の問題はそこまで深刻にならなかった。


 途中の街で夜を明かしつつ進んだため一週間はかかってしまったが、馬車無しでこれは普通にありえないと言われているくらいには早い。



 今度はこの街で、二人は冒険者として活動する。




 それとほぼ同時刻、イルギシュ帝国領土の南方にある鬱蒼と茂る森の中にソレはあった。

 昼間であっても薄暗さのある場所に存在しているソレは外見が風化するほどに年月が経っていた。


 石のように固まった蕾のようなソレは中にとある存在を孕んでいた。

 年月と中に封じられた存在の放つ力によって風化とひび割れていたソレが遂に完全に割れた。


 まるで卵から雛が孵ったように中からとある存在がゆっくりと手を出し起き上がる。


「……ぐっぅぅ……体が……」


 千年は封印されていたソレは軋む体に呻き周囲を理解するにも時間がかかった。


 紫の肌に金の髪、筋骨隆々とした身体だが背丈は170cm以下といったところ。

 その目にはどこか優しげな雰囲気があるものの非常に鋭い。


 慈愛と暴力性を同じく孕むその魔族は、かつて世界に戦乱という混沌を齎した、初代魔王であった。

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