五十一話 交わす愛情
あっという間に飛び去っていった蒼佑を呆然と見ていた幸多だったが、元気そうな彼を見て吹き出すように笑う。
夢愛とアシュリーも、愛する人が死んだと思い悲しみに暮れていたところで、当人があっという間に目を覚まして、どこかへ行ってしまったことでヘナヘナと腰を下ろしてしまう。
ロックとバレットも徐々に口角が上がり、心の底から安堵していることが見て取れる。
やれやれといった様子であるが、また元気な蒼佑と会える日が来るだろうことに凄く嬉しそうだった。
チュリカは人知れずに目元を拭い、グレッタはドデカイため息をついてしゃがんでいる。
バレクトは若者が元気でいることに喜びを感じる老人であるため、楽しくしていればそれでいいだろうと笑っていた。
先程までの悲しく沈んだ空気は無くなり、今では清々しいほどに明るい雰囲気に変わっていた。
チュリカが手をパンと叩き、皆がそちらを向いた。
「ソウスケが無事で良かったし、さっさと戻ろ」
彼女がそういうと皆は頷いて馬車を進めるのだった。
今は夕方より少し前の時間、蒼佑とソフィが二人で街に向けて歩いているところ。さすが飛んだままの状態で街に行けば怪しまれてしまうので、徒歩に変えたのだ。
ちなみに蒼佑はソフィから意識をなくしたあとの話を聞き、半信半疑になりつつ とはいえ、信じるしかない状況となっていた。
「もうマジで色々訳分かんねぇけど、一番謎なのはお前だよ魔王」
「えーなにさぁ魔王とかやめてよ、ねぇソウスケぇソフィって呼んでよぉ?」
「えぇい纏わりつくな……っていうか冷静になるとおかしいんだよ、そもそも回復魔法って言っても死んだ生き物は生き返ることは無いはずなのに……」
当然の疑問だが、その質問にはソフィにも答えられなかった。ただ彼女はできたからやっただけということである。
「そんな事なんてどうでもいいからさ、ねぇほら呼んでよ。ね?ね?ソウスケお願い」
「あぁもう仕方ないな、落ち着きなさいってソフィ」
「うん♪」
じわじわと理解を進めつつ、今になって他のメンバーに罪悪感を感じる蒼佑であったが今更後にも引けないので、とりあえずこれからの旅を楽しむことにしようと思う彼であった。
街に到着し、まずは宿を探す二人。
ちなみにある程度の手持ち金はあるが、ほとんどパーティ全体のお金とまとめてしまっているため本当にある程度しかない。
つまり、明日からはユニオンで依頼をこなす必要がある。
彼はソフィにもその旨を話し、彼女もノリノリであった。
「へぇ、宿ってこんな感じなんだ」
今の二人は宿の一室に入ったところで、ソフィは初めての宿に目を輝かせていた。
ずっと城に閉じこもっていただけあり、彼女は好奇心旺盛だった。
「しかし、理解してもらえてよかったよ。もしダメだったら大変だったね」
「まぁその代わりだいぶやりにくいとは思うけどな」
先程のことを思い出したソフィ、彼女は魔王であるため当然だが魔族の姿だ。街に入る前にも相当怪しまれ、危うく戦闘が始まるところだった。
当然だが二人とも以前よりも遥かに強くなっているため遅れは取らないが、それでも戦う必要性はなく蒼佑のユニオンカードを出すことで何とか理解を貰えた。
ユニオンで冒険者として登録すると、自身の身分を示すカードを渡されるため、ランクが高ければ高いほど信頼される。
今の蒼佑はマスターのAランクであり、かなりの信頼性があった。
ちなみにこの部屋はベッドが一つしかない。
懐事情で狭い部屋しか取れなかったのだ。ちなみにソフィは二人で寝ようと言い張っている。
「いやでもいきなりそんなのマズくないか?年頃の男女でこんな……」
「やだ!絶対ソウスケと一緒がいい!ほらほら早くこっちきて」
「あぁちょ引っ張るな」
ワガママを言ったソフィは彼を逃がすまいとベッドに押し倒し、彼女はペロリと舌なめずりをした。
彼女は今、蒼佑が愛しくて仕方がないらしい。
「ねぇ、ソウスケはエッチな事……嫌い?」
「嫌いって訳じゃないが……え?なに、そういう……」
蒼佑がソフィの意図に気付いた時には、唇が彼女によって塞がれていた。そうして二人は身体を重ね合う。
何度も何度も繰り返し、時間が経った頃には二人揃って疲れ果てて眠ってしまった。
真夜中とも言えるくらい時間に蒼佑は目が覚める。彼が横を見ればそこには すやすやと眠るソフィがいた。
仰向けになりながら ボーッとしていた彼が、なんとなく初めて行為に及んだ時のことを思い出す。
それは蒼佑が 夢愛と幸多の二人が想い合っていると確信し、夢愛と別れたすぐ後のことだ。
複数の女子生徒達に見守られながら二人が抱き合っているところを見た蒼佑が帰っている途中、彼は信号待ちをしている時に別の学校の女子生徒と目が合った。
その女子生徒は蒼佑をじっと見つめ、彼が ふっ笑いかけた時に彼女は声をかけた。
『あの、今って時間ありますか?』
本来ならば応える必要のないモノだったが、その時の彼はもうどうでもいいかと思いソレに乗った。
彼女に連れられて向かった先は、そういうことをする為に利用されるホテルで、話を聞けばその女子生徒も、付き合っていた男に浮気され別れたところだったらしい。
それで気分が沈んでいた彼女は蒼佑を見て少しだけ惹かれ、また笑顔を見たことで一晩の愛をすることに決めたらしい。
その後の二人は肉欲にまみれ、思いのままに互いの身体を貪りあった。気の済むまで行為に及び、夜と言える時間にようやく外に出た。
互いに満足し、もう会うこともないだろうと名前も聞かないままに別れ、行為に耽った夜をいい思い出として胸にしまった。
しかし出会った場所が通学路であるならば、再会するのも必然の話であり、その度にどちらともなくホテルへ誘い行為に及ぶのだった。
蒼佑はその事を思い出し、相手の女子生徒のことをぼんやりと浮かべ幸せを願うのだった。




