三話 再結成のために
『そうすけ!』
どうしたんだ、幸多。
「ようやく魔法が使えるようになってきたんだ!」
凄いじゃないか、さすが勇者は違うな!
「あはは、教えてくれる人達がみんな上手だからかな!
良かったら蒼佑も一緒に修行しないか?」
いや、俺はやめておくよ。
「そう言わずにさ、俺は蒼佑と一緒に冒険がしたいんだ、お前がいてくれたら助かるよ。」
そうか、そう言われると嬉しいな。
「どうやらこの世界にも魔法が使えない地域があって、そこでは魔法とは別の文明があるらしい。
もし向こうに帰れなかったらその場所を目指してみない?」
それもいいな…でも俺は…。
「分かってるよ、でも考えてみてくれないか?」
あぁ…すまない、俺はもう…。
『ソウスケェッッ!!』
「ッッ!」
どでかい怒鳴り声に目が覚める。
どうやら夢を見ていたようだ。
「よーやく起きたかっ!ったく、随分ぐっすり眠ってやがってよぉ、ほれ飯だ。」
寝ぼけている俺にジト目で保存食を渡してくる黒髪の青年。
「あぁ、悪いなロック。」
保存食の干し肉をかじりながら出発の準備をする。
「しっかし久しぶりに会ったと思ったら帝国から逃げるだなんて、一体何やらかしたんだ?」
「やらかしたと言うかだな…どっちかと言うと巻き込まれた…?」
「なんで俺に聞くんだよ…。」
数日後、俺だけ個別で呼び出されることとなり、とんでもない暴論で命を狙われることになったのだ。
先代勇者と同じ名前をした勇者の友人が戦を前にして我が身可愛さに逃げようとした。
自国が召喚した勇者の仲間がそんな醜態を晒したなどという醜聞がたたないように、俺を殺そうとしたのだ。
そこから全力で逃げた俺はビジランテユニオンに向かいロックと再開した後すぐさま帝国を出ることにした。
その時を彼は何も言わずに着いてきてくれたので、感謝しきりだ。
彼には禄な説明もないまま連れてきてしまったので、その説明とこれからの目的を決めることにした。
「それで、あいつらを捜してもう一度あのパーティを再結成するってわけか。」
「そういうことだ、だからまずはフレシア王国に行こうと思ってな。」
帝国から離れる為に話をしつつそう告げると、ロックは少し顔を顰めていた。
「…どうした?」
「…いや、お前にそんなフザけたことをしやがるとはな、前々からクソみてぇな皇帝だとは聞いてたが。」
そう、現イルギシュ帝国皇帝は、暗君とされていた。
先代皇帝は優秀で、善政を敷き、民たちの事をよく考えていた。
だが何年も前に病に伏して、後に亡くなった。
後に現皇帝に引き継いだ後、貴族と皇族が一緒になり私腹を肥やす事ばかりで民のことは後回し、先代勇者の時の魔族との戦争時も、力を貸さなかったことで他国からの印象も悪い。
「何より、お前だって仮にも勇者なんだ、そんなのに喧嘩を売るってことは、国ごと滅ぼされても文句は言えねぇ。」
「まぁそこまでの事にならないよう願うよ、ただ残されたアイツらが心配だな。」
「まぁ今更心配した所でだろ、何かあったらその時対処するしかねぇよ。」
とにかく今出来ることは先代勇者パーティの再結成だ。
然る後、現勇者パーティのサポート、そしてイルギシュ帝国との敵対関係を解消する。
「勇者の友人で、俺自身も勇者って……もう訳わかんねぇ…。」
「はっはっはッ!それはそれでおもしれぇじゃねぇか!それに、またソウスケと暴れられるんならこんなに楽しいことねぇよ!」
大笑いしながら俺との再会を喜んでくれる、先代勇者パーティのオフェンス担当、ロック。
今から五年前に俺を召喚した国、フラシア王国に向かい、今後のサポートとパーティの再結成を行うことにした。
しかし帝国に残してきた三人が心配でもある、きっと大丈夫だとは思うが…。