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かつての勇者がもう一度  作者: 隆頭
すれ違う者たち

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二十八話 眷属化

 例の魔族との戦いで意識を失っていたチュリカが目を覚まし、ここマハラの主要メンバーと蒼佑そうすけのパーティ、幸多こうたのパーティがそれぞれ集まって話をしていた。


 その内容は魔族、そして紅美くれみについてである。

 蒼佑の攻撃によって気を失っていた紅美は、自身をおぶっていた夢愛ゆめを突き飛ばしグラットたちの方へ向かったという。

 彼女の異常な様子からグラットが思い出したのは " 眷属化けんぞくか " というものである。


 眷属化…それは主となる魔族が他種族の生き物を眷属として従えることが出来る。

 眷属となった者は強い力を得ることが出来る一方、主となる存在が危機に陥った場合本人の意思に関わらず必ず守ろうとする。

 眷属となった紅美がグラットたちと張り合える実力者となったことから、その力がどれほどのものかは分かるだろう。

 彼女が意識を失いながら虚ろな瞳で魔族の元に向かったのは、その守ろうとする行動によるものた。


 眷属となるにはこれといった特別な行程は必要ないものの、それには主となる魔族の魔力と眷属化の為のソレを受け入れる必要がある。

 魔族には眷属を作ることが出来るなどという話が知られていないのは、方法自体は簡易でありながら相手に受け入れてもらうという高いハードルと、そしてそれを行える魔族が圧倒的に少ないからである。


 どれだけ魔族側が魔力を送ろうと、それを受ける側が一切受け入れなければ眷属にはならない。

 つまり、紅美は望んであの魔族の眷属になったという事だ。彼女がそれを選んだ理由を知るのは紅美のみである。


「とりあえず、どうしてコイツが眷属になったのかってところだけど……」


「殺しておけばいいと思うがな。ヤツの眷属だなどと、残しておけば大変なことになるかもしれんぞ、ソウスケ」


 昏睡したまま目を覚まさない紅美を睨みつけるアシュリーと、早々に始末してしまいたいというグラット。

 なぜグラットがそう判断したのかというと、それは眷属が主となる魔族の強さに比例して強くなっていくからである。

 魔族の中でも上位ともなれば、それこそバレクトやアリーシャのような実力者でさえ手を焼くほどだ。

 蒼佑らは五年前、パーティを組んで対魔族のノウハウを独自に身体に叩き込んだため戦えているが、本来ならばそれは常人を凌駕するものだ。到底できるものではない。


 紅美はそれに迫るほどの実力者になっているというのは、もはや覆しようのない事実であった。


「どうしてクレミを殺さないの?コイツのせいで兄さんが死にかけたんだけど」


「ソウスケが止めているから拘束に留めてるけど、もしアンタがいなけりゃとっくに始末しているところさね。だからせめて、説明してもらいたいもんだ」


 未だ紅美が生きているのは蒼佑の意向によるものだ。当然それに対し不信感抱くものもいる。

 それはグレッタもアリーシャも、また他のメンバーは元より、ロックらもあまり納得していない様子だった


「……こんなヤツでも、俺たちのいる世界…その人間なんだ。同胞をそう簡単に殺せない……すまない」


 ばつの悪そうな表情でそう告げた蒼佑は皆に向けて頭を下げる。流石にここまでされて皆文句は言えないし、責めることもできない。

 自らの故郷を強制的に追われてしまった者の心情を察するに余りあると、そう思ったのだ。ましてや蒼佑の場合ソレは二度目のことであり、五年前に魔王を打ち倒したものでもある。

 齢十二の少年にそんな大事おおごとをさせたことも、また彼を責めれない理由であった。


 だからこそ、グレッタは耐えられず立ち上がった。


「…ごめん、ちょっと頭冷やすね」


 彼女はそう言い残し外に出る。誰もがその背中を見送るのみで、蒼佑も彼女とグラットに強い罪悪感を抱いていた。


「…ソウスケ、すまないがグレッタを頼む」


「え?でも……」


「…大丈夫だ」


 そんな彼の胸中を察したグラットがそう言って微笑んだ。

 それでも蒼佑は、今グレッタに近付いても不快にさせるだけだと思っている。

 だがグラットはグレッタが蒼佑を想っていることを知っている。だからこそ頼んだのだ。

 そんなグラットを彼は無視できず、グレッタの後を追った。彼女は建物から出たすぐそこにおり、壁に背中を預け空を仰いでいた。


「あっ、ソウスケ…」


「…ごめんグレッタ、嫌な思いをさせる」


 彼女に何を言えば良いのか分からず、蒼佑は頭を下げる。グレッタは彼の元に寄り クシャっと頭に手を置いた。


「頭上げてよ。ソウスケ」


 彼女にそう言われた蒼佑は おそるおそる頭を上げる。そんな彼にグレッタは困ったような笑みを浮かべて言った。


「少し、歩こっか」

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