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十二話 港町へ

 蒼佑そうすけとバレットとサラ、そして新しくエクロマから付けられた一人、元近衛騎士副長であるメリーナという女性騎士だ。彼女もグリエラ同様魔法と剣の両方を使いこなす者である。


 これからは蒼佑たちのパーティに入るとはいえ、その所属はフラシア王国である。

 これは蒼佑を国として守るという意志を国外に示すためでもあった。


「ソウスケ殿、改めてこれからよろしくお願いします!」


「こちらこそ、よろしくお願いします」


 メリーナが頭を下げ、蒼佑も頭を下げる。

 一応エクロマの前で一通りの挨拶は済んでいるが、改めての挨拶である。

 すると、別行動していたロックがこちらにやってきた。


「よぉ、待たせたな」


「大丈夫だ」


 正体を隠すために被っていたフードを取り蒼佑に声を掛ける。

 メリーナが彼を見て目を見開かせると、すぐに片膝をついて頭を垂れた。


「殿下、長らくお見えにならないとは思っておりましたが……」


「やめろ、今はそんなんじゃねぇ」


 そんなメリーナをロックは手で制しそう言った。

 どこか気まずそうな表情だ。

 それもそのはず、ロックは今まで自身の出自を話したことは無い。もちろん聞かれたことも無かったのだが。

 気まずくなるロックに対して蒼佑らは気にした様子は無い。


「悪い、その…」


「いいよ別に」


 ロックが今のことを誤魔化すために何かを言おうとするが、蒼佑がそれを止める。

 対するロックは疑問を顔に浮かべた。


「今まで言わなかったのは知られたくなかったんだろ、無理して言うことは無いさ」


「そうか……」


 彼を気遣った蒼佑の言葉にロックがホッと胸を撫で下ろした。

 もしかしたら隠していたことを糾弾されるかもしれないと思っていたロックにとって、それはとても嬉しい言葉だった。

 とはいえ今のメリーナの発言でバレたも同義であるが、それはそれだ。


「それじゃ、オラトリアに向かうか」


「だな!」


「ですね」


 場を包んだ気まずさを振り払うように蒼佑がそう言うと、バレットとサラもそれに続く。

 そんな仲間を見てロックは ふっ と笑い、メリーナもホッと胸をなで下ろしたのだった。



「これからオラトリアに向かうのは、確かお仲間に会いに行くためでしたか?」


「そうです」


 メリーナの質問に蒼佑が答える。

 ちなみに今は馬車だ、しかも王国で軍用として使っていたものだ。旧式とはいえその性能は高く、王都に来るまでは歩きだったので速度も段違いである。

 メリーナが御者をし、その隣に蒼佑が座ってこれからの予定を話す。

 予定といってもそこまでしっかりしたものでは無いが。


「話を聞けば勇者パーティの魔法専門だったとか」


「えぇ、俺も稽古を付けてもらいました」


 それはほんの思い出話。彼女のおかげで今の蒼佑があるのだ、大事な人である。

 蒼佑は彼女の好意に応えられなかったことを気にしており、今度はソレに応えたいと思っていた。


『もしまた会うことがあれば、その時は……』


 別れ際に放った言葉、それを果たす時が来たと言える。まぁアシュリーが幸多らと行動を共にしていなければ……だが。

 実際のところどうなるのかは、これから知る話である。


 ガラガラと車輪が地面に弾かれながら回る音が響く。

 馬車特有の振動に揺られながらオラトリアへと出航する船が停泊する港町へ走る。

 そこから二泊三日の時を経てオラトリアへ到着だ、あそこは今いる大陸とは離れている島国であり、肥沃な大地をオラトリアという国が独占している為かなり発展している国である。

 ここから港町まではまだまだかかりそうだと蒼佑は空を見上げた。



 先を急ぐ身であるため、途中にある町を無視して夜中でも馬車を走らせていた。

 過去に旅をしていただけあり、皆 御者の経験があるので交代しながら進んでいる。

 今は蒼佑の番であるが、彼は嫌な気配を察知した。


「お前ら、起きろ!」


 彼の声で皆が目を覚まし、事態を即座に把握した……メリーナを除き。


「えっとっ……まさか!」


「賊だな、バカなヤツらだ」


 僅かに逡巡したメリーナに対しそう言ったバレットがすぐさま盾を取り出して連中のいる向きに飛び出した。

 すぐにロック、サラ、メリーナと続き馬車を止めた蒼佑が先手必勝とばかりに高く跳び上がり賊共に強烈な魔法を叩き込んだ。



 事態は即座に集結し、蒼佑らは動かなくなった ''物'' を魔法で焼却した。

 下手に残せば魔物の餌になったりアンデット系統の魔物に操られることがある為だ。それは然るべき処理だった。


 そういったトラブルは度々あったものの、出発してから五日目には港町に到着することができた。


「いや、やっぱ馬車があると違うな」


 歩きでの旅をし続けていた蒼佑が感動してようにそう言った。実際歩きだったらばこれの三倍近くかかっただろう。

 そう思えば馬車の有用性がよく分かる。


 次は巨大な船の旅となる。

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