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かつての勇者がもう一度  作者: 隆頭
本編・勇者たちの出立

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十一話 ロックの情報集め

蒼佑とバレットとサラがエクロマと謁見している頃、ロックはフラシア王都で単独行動していた。

蒼佑達が戻ってくるまでに、現代勇者パーティの動向を知る為、情報集めにきたのである。

しかし事情があって、ロックはフードを目深に被りマスクを付け顔を隠している。

王都にはロックにとって信頼出来る情報屋がおり、そこに向かう為に裏路地に入っていた。

暫くすると後ろから軽薄な雰囲気のある男らが現れ、ロックを挟むように前から別の男らがニヤニヤとしながらやってきた。

勿論ロックの知る者ではなく、彼らは物盗りの類である。

後ろから三人、前から二人、彼らは自分らが優位だと感じ高圧的な態度でロックに話しかける。


「よー兄さんよぉ」


「なんだお前ら」


「いやぁね、ちと金に困ってるから恵んで貰いてぇんだけどよ?」


「俺の知ったことじゃねぇな」


「そう言わずによぉ、取り敢えず持ってるもん全部置いてけや」


「死にたくなかったら目の前から消えろ、お前らと遊んでいるほど暇じゃない」


物盗りの態度に苛立ったロックが放った言葉は、確かに彼らに効果的だったようで、青筋を立てながらロックに襲いかかる。


「それはこっちのセリフだよぉ!舐めんじゃねぇ!」


ロックからすればあまりにも稚拙な動きだった、力任せに拳を振り、後のことを考えない正に素人の喧嘩だった。

つまり弱者相手しか戦ったことがない人間のそれであり、人数とそれっぽいチープな圧だけでやってきたのであろう彼らはロックからすれば取るに足らないものであった。




「ったく、無駄な手間取らせんな」


呆れた様子で手を払うロックの後ろにはボロボロになった五人が転がっていた。

殴り飛ばされる者。

高く蹴り上げられそのまま地面に落下した者。

張り手をくらい数メートル先の壁に叩きつけられる者。

顔面を踏みつけられ地面に叩きつけられる者。

そして殴られる者。


手も足も出ない相手だと理解する頃には、既に意識がなく、後に目が覚めたとしても全員満身創痍で瀕死の深手を負っている。しかし盗人に金などなく治療もできず、また助けてもらえる筈も無い。

彼らは喧嘩を売る相手を間違えたが為に二度と動く事は出来なくなった。


ロックは並の魔族どころか蒼佑すら凌ぐ程の怪力の持ち主である。

そんな彼の怪力を、手加減していたとはいえ食らってしまえば勿論五体満足では帰れない。

そんな彼らを気にすること無く、ロックは目的地に向かって路地裏の闇の中へと消えていった。



盗人共を片付けて暫く、ロックはある建物の中へ入った。

その店は表向きは普通の飲み屋だが、裏口から入る者には情報屋として機能している。


「ん?まさかそっちから入ってくるヤツとは久しいじゃないか」


坊主頭の中年男性がそこにはいた。

彼からすると長らくやってこなかった情報を求めた客だ。


「ご無沙汰してるぜ、おっさん」


「ッ!お、お久しぶりです…殿下」


「やめてくれって。俺はそんなんじゃねぇ、頭を上げてくれ」


男はロックを見るや否や、片膝を付き頭を垂れるが、ロックはそれを止めた。

ロックとしては最早王族の立場を捨てており、一人の人間として扱ってほしいのだが、如何せん周りの理解は余り得られていないようだ。



「今の勇者なら今はオストリアに向かってるって話です。あそこには確か殿下のお仲間さんがいるんでしたね」


「あぁ、ウチの魔法使いがな。奴ら、もしかしてアイツを仲間にする気か…?」


現勇者パーティは前勇者パーティの面子を集めているという話をロックは知っている。

なので幸多らがオストリアに向かうと聞いて胸中穏やかではいられない。

アシュリーが、もしかしたら刃を交えるかもしれない連中の仲間になるとなれば、こちら側も大きな被害を覚悟しなければならない。

魔法だけならば蒼佑をも凌ぐ魔法使いを相手取るならばこちらも加減はできないが、蒼佑の存在を知れば少なくとも矛を収めるだろう。

そう考えロックは深く考えることをやめる。


「殿下がこちらにいらしているのは、もしや前の勇者殿絡みですかな?」


「まぁそんなとこだ」


深く話すつもりは無いものの流石に情報屋であるからか、彼はある程度察してしまうので下手に隠すことはしない。

少なくとも信頼出来る関係であることもあってそこまで気を付けなくても良いとも言える。


「あっちの連中についての情報はなんかあるのか?」


「えぇ、あのパーティは四人いて、その内一人はあのイルギシュ帝国の近衛騎士団長らしいです。たしかグリエラと言いましたか。

稀代の魔法戦士らしいです、戦うとなれば気を付けた方が良いかもしれません。」


「確かにそいつはまぁまぁな実力者ってのは聞いた事があるな 」


蒼佑が元の場所に戻った後、ロックはイルギシュ帝国の帝都を拠点に冒険者として活動していた。

その時に近衛騎士団長であるグリエラの話は聞いていたが、実際に戦うとなればそこそこに手こずる相手であると予想した。


後の面子は蒼佑に聞いた方が早い事は容易に予想出来たので、情報集めもそこそこに戻ることにした。


「殿下、お気を付けて」


「おっさんもな、じゃあな」


右手を振り、別れを告げる。

現勇者パーティが向かうはオストリア。そしてグリエラという騎士が幸多の傍にいること。

情報の量はあまりないが、知っておきたかったことでもある。

ロックは蒼佑への土産を持って、路地裏を後にした。

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