出生も不明な孤児で
(どこだここは?)
目覚めた場所は薄暗い石造りの建物の中だった
視界の隅の方でユラユラとロウソクの火が揺れている
上手く体を動かせないが視線を左右に動かしてみる
ボロボロの柵だろうか?
木で出来ているが天井が空いているから檻とかでは無いのだろう
声を出そうとしたが全然声が出せない
少し体をよじるとゴワゴワとした布の感触がした
コッコッコッと歩く音が聞こえ大きな何かが覗き込んだ
見たこと無い顔だった
何か話している話しているようだが聞き取れない
ユラユラと柵が揺れ段々と俺は眠くなってきた
眠気に抗えずそのまま瞼を落とし眠りについた
1年後
ある程度動け言葉も理解することができ
色々とこの世界について理解することができた
ここは孤児院の地下にある部屋でありどうやら俺は孤児院の前に捨てられていたらしい
ここで使われている言語は日本語ではないが何故か読めるし書くことも出来るようだ
そして数カ月間顔を合わせていたのはここの修道女らしい
またゲームのようにMPやステータスなどもあり魔法も存在する
それらを上げるには限界までMPを削る、ステータスならひたすら鍛えることで上がるようだった
とりあえず気配遮断と聞き耳をとってみたがそれを後悔した
どうやらここは孤児を奴隷商に売る仕事をしているらしい
そのために孤児や赤子を育てているらしい
5歳になると神からステータスの恩恵がありそれによって価値が変わるらしい
ここの孤児院は教会を兼務しているらしく
ベルナリオ神を主とした神々が天恵を与える
そしてどのようなことを言われたかを子供から聞き出し奴隷商に売り出すとのこと
5歳は奴隷として売れる最低年齢ではあるがさらに育てるよりはコスパがよく言うことに従いやすいため良いらしい
(それに……転移者や転生者なら億単位で値がつくと……)
うん、確実にバレたら終わるな
一応自己申告制なためその場ではバレなくても取引や競りの際に強制的に吐かされるとのこと
(詰みゲーじゃね?)
一応お世話係として何人か修道女や修道士以外にも少女達が居るがそれらは幼い子供の世話を手伝わせるが15歳になると売り出すとのこと
(男は無理なんだよなぁ……)
レアではあるが神父の寵愛を受けることでここのシスターになれるらしいが……
まぁ寵愛なんて聞こえが良いが◯行為をしているだけだ
しかも結局は奴隷なことは変わらない
(最悪すぎんだろ……)
一応男として生まれ名前はナーヤとつけられたがこれはただの番号73番を名前風にしただけらしい
とりあえず色々と動き回り多少ステータスを上げれたがあまり手間をかけすぎると反省という名で閉じ込められる
あれから仲の良い友人ができた
まずはサナと呼ばれるお姉さん
サナは10歳を超え修道女たちの手伝いをしている優しいお姉さんで長い金髪に青い瞳、少し痩せては居るが美人だとは思う
そんなサナには秘密があった
たまたま夜中に目を覚ましバレないよう部屋を抜け出し歩いていた
満月が輝く夜にふと外を見ると少し離れた生け垣が光っていた
近寄っていくと徐々に光は弱くなっていく
光が消える前に生け垣の隙間から覗くとサナの背中から跳ねが生えていた
「誰か居るの!?」
すぐに気づかれて顔を覗かせる
「ナーヤかぁ……よかった……
ほらこっちおいで?」
言われる通り近づくと
サナは腕と翼でナーヤを包みこんだ
「ねぇ……ナーヤ?私は普通の人じゃないの
満月の夜の間だけこんな綺麗な翼が生えるみたい
結構珍しいから私みたいなのは凄く高く売れるって修道士さんが言ってたの聴いちゃったんだ」
サナが言ってることはよくわかった
あの生け垣から覗いた瞬間見惚れてしまった
丸く囲まれた生け垣の中央に月の光に照らされた白い翼のサナはこの世の者とは思えないほどだった
「きっと私はこの羽を利用されたりしちゃうのかな……
嫌だなぁ……」
少し涙を浮かべたサナの頬を優しく撫でると驚いた顔をするがすぐに微笑んだ
「慰めてくれるの?ありがとう」
そう言うと翼から羽を1枚羽を取る
少し顔を歪ませたから痛いのだろう
しかし平気そうなふりをして手に握らせる
「私からのプレゼントだよ
ナーヤのこれからが幸せに暮らせますように」
柔らかな羽とサナの温もりで段々と眠くなってきた
「ふふふ、まだ幼いのね
眠っていいのよ?私があとでベットに戻してあげるから」
温かい……安心する優しい温もり
前世から始めて優しさの温もりを知った気がする……
瞼が段々と重くなってくる
「ナーヤくんを買ってくれる人がいい人でありますように」
そう言ってくれた気がした
目が覚めると自分のベットの上だった
ボロボロ柵が辺りを囲んでいる
柵はささくれ触れるだけでも怪我しそうだ
「なぁなぁお前何持ってんだ?」
隣から声が聞こえてきた
見ると同い年の男の子がベットから降りこちらを見ていた
名前はハロ 86番と裏で言われている
茶色に赤い瞳をしている笑ったときに見える八重歯が印象的な子だ
「それ羽か?俺に綺麗だからくれよ」
見るとサナから貰った羽を握っていた
「これは僕の宝物だから上げないよ」
「ふぅん?まぁいいや
とりあえずそろそろ朝ご飯だから遅れんなよ?」
そう言うとそのまま部屋から出ていった
(とりあえず僕も食べに行かないと……)
遅れるとご飯を貰えなくなるし罰までが与えられる
(その前に……)
近くにあった箱の中に羽をしまう
昨日の秘密はずっと心にしまっておこう
僕が売られ酷い扱いを受けたとしても心の支えとして