表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/11

9. ありがとう

 

『兎に角、人間は絶対に殺さない! これはルールな!ルールを破ったら、め!だぞ!』


 俺は、強く、クロメに言い聞かす。

 まあ、奴隷契約を結んでいるんで、俺の命令を、クロメが破る事は出来ないんだけど。


 それにしても本当に、奴隷契約しといて良かった。クロメがこんなにも選民思想的な性格とは気付かなかったし。

 徐々に、その凝り固まった考えを、俺が正していけばいいだけだしね。


 俺は、心の優しい女の子になるよう、クロメに育って欲しいのである。


 なんか、クロメがプルプルしてるが、今は、そうっとしておこう。自分の頭で考える事も重要だ。

 それよりも、今日の泊まる所なんだけど……


 クロメが、村人にちゃんと話せるとは思えないし。俺は、ただの目玉だし。何で、俺、人と会話できないんだよ!


 本当に困った。人と直接話せない事が、これほどまで大変な事だとは、本当に分からなかったぜ。


 とか、考え込んでると、先程の第1村人の少女が、父親らしき人を連れてきた。


 そして、クロメに話し掛ける。


「君は一人で、この辺境の村に来たのかい?」


 少女の父親は、クロメに優しく話し掛ける。


「ウゥゥゥゥ……ゴメンなさい!卍様ぁぁーー!私を見捨てないで下さい。何でもしますから~お願いします~!」


 なんか、よく分からんが、変なタイミングで、クロメは感極まって号泣してしまった。

 怒られた事で、俺に見捨てられると思ったのだろうか?


「そうか。1人っきりで心細かったんだね。理由は聞かない。もう、暗くなってきたので、今日は、ウチに泊まりなさい」


「ウエェェ~ン。卍様~」


 よく分からんが、会話が成立したようで、第1村人の少女の家に、俺達は泊めてもらえる事となったのだ。


 第1村人の少女の父親に、クロメは抱っこされて、そのまま家に招待される。


 少女の家は、父親と母親と少女と3人暮らし。

 暖かいスープとパンをご馳走様になって、客間に案内された。

 その間も、クロメはずっと号泣。鼻水垂らしながら、スープを啜っていた。悲しくても、お腹は空いてたみたい。

 俺達、ジジイの家から、何も食べてなかったんだよね。


「卍様。どうか、クロメを許して下さいませ。何でも致します。だから、クロメを捨てないで下さい」


 客間で2人っきりになっても、こんな感じ。


『だから、人間を無闇矢鱈に殺さなければ、クロメを捨てないって!』


「本当ですか? しかし、私達に攻撃してきた者が居たら、殺していいですよね?」


『まあ、そりゃあ、攻撃してきたらね……』


「卍様を、ディスってきたら?」


『それは、少し考えよ』


 クロメと、これからの旅のルールを擦り合わせをしていく。

 まあ、確かに暗殺者に襲われて、殺されそうになってるのに、無抵抗とか有り得ないし。


 だけれども、俺に対するディスり程度なら耐えられる。

 ディスりと言っても、目に卍の落書きしてんじゃねーよ!とか、言われるだけだと思うし。


「私が、ディスられるのは良いんです……ですが、卍様をディスられたら、私は怒りを抑える自信がございません!」


 なんか、勝手に、俺がディスられてるのを想像してか、クロメは憤っている。


『まあまあ、もっと軽く考えよ。ムカついた時は、一度深呼吸して考えよ。ディスられたって、死ぬ訳じゃないんだからね!

 そんな事より、良くしてくれた人に対して、ありがとうを言おうよ。第1村人の少女の家族、ご飯食べさせてくれたり、寝床も貸してくれた訳だし。クロメは、まだ、お礼の1つでさえ言えてないだろ?』


「ですが、彼らは、力を持たぬ矮小な人間ですので。力を持つ我々が、頭を下げる必要など無いと思うのですが?」


『だから、そういう考えが良くない! 良くしてくれた人には、ありがとう!これが言えなかったら、もう、クロメの事なんか知らないからね』


「そ……そんな……」


 クロメの瞳に、またまた涙が溢れる。


『ありがとう。出来るよな?』


「本望じゃありませんが、善処します……」


 クロメは、納得できてなさそうだが、善処はしてくれるようだ。


 まあ、クロメが今まで生きてきた10年間の常識。『強い人間は、弱い人間に何をしても良い』という常識を、今すぐに180度変えろというのは、流石に難しい。


 最初は、ありがとう。から、徐々に進めていくのだ。

 ありがとうは、魔法の言葉。ありがとうと言われて、悪い顔する人なんか居ないからね!


 まあ、中には、悪い顔をする人も居るかもしれないけど。


 兎に角、俺は、クロメに、そんな子には育って欲しくない。


 ーーー


 ここまで読んで下さりありがとうございます。

 面白かったら、ブックマークや☆☆☆☆を押してね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ