3. イカれた研究者
薄暗い研究室のドアが開く。
ドアが開くと、白髪の爺さんに連れらて、3人の男の奴隷が部屋に入ってきた。
何故、3人が奴隷だと気付いたかというと、3人が3人とも隷属の首輪を付けていたから。
何故、俺が、この世界の隷属の首輪を知ってるかというと、片っ端からこの世界の本を読んで記憶してるから。
もう既に、この家。地上2階建て、地下に研究室がある全ての本は読破し記憶しているのだ。
その過程で、爺さんの著書も何冊か読んでいて、魔眼の理論とかも全て、頭というか俺のデーターベースに入っている。
ただの目玉にデーターベース?と、思うかもしれないが、感覚で言うとデーターベースなのだ。
目玉以外の場所に記憶媒体が有る感じな。
言うならば、クラウド?
インターネットを通じて、サービスを必要な時に必要な分だけ使える感じ。
地球の知識などは、インターネットを通じて必要な知りたい知識を取り出して使う感じ。
そもそも、目玉に脳みそ無いしね。
本当に、鑑定眼って、他の魔眼とは全く違う複雑な仕組みで出来ているのである。
まあ、魔眼に、人の魂が入ってる時点で、相当ヤバいと言えるけど。
その点に関しては、全く爺さんは気付いてない。
そんな爺さんが、奴隷の一人の男の顔を、マジマジ見ている。
そして、唐突に、眼窩に指を突っ込むと、おもむろに手を捻りながら、奴隷の男の眼球を引きちぎった。
奴隷の男は、叫ぶなと命令されてるのか、一言も発しない。
どう考えても痛いだろと思うのだけど、無表情。
「ひゃひゃひゃひゃひゃ! やはり、新鮮取り立ての眼球じゃないと!」
イカれ爺さんは、新鮮な眼球が手に入って嬉しそう。そのままま3人の奴隷は、ほったらかしのまま、採れたての眼球で、魔眼作りを始めてしまった。
それにしても、隷属の首輪の効果は凄い。隷属の首輪を付けられると、主人に絶対服従を強いられようだ。
痛みよりも、主人の命令の方が上のようなので、奴隷を戦争に使ったら本当に恐ろしい事になりそうだ。
恐れを知らない兵士って、本当に怖いよ。
人を暗殺する時にも使えそうだ。
爆弾持たせて、暗殺対象のスグ近くまで行って、自爆させればいいだけだし。暗殺対象者を、確実に殺す事が出来てしまう。
本当に、この世界は、想像以上にヤバい世界であるようだ。
ヤバいジジイは、三日三晩寝もせずに、魔眼を作り続けて、そして、やっと1つの魔眼を完成させた。
どうやら、得意であろう、透視の魔眼であるようだ。
新たに出来た透視の魔眼は、瓶に入れられラベルを貼られ、俺と同じように棚に並べられる。
ラベルの表示を見ると、3等級で、2000万Gと書かれている。
ちょっと、メッチャ悔しいんだけど、新参者の癖に、先輩を差し置いて値段が付くなんて。
ヤバい爺さんは、新たな魔眼のコレクションを、棚に整頓すると、おもむろに、眼球をくり抜いた奴隷の右手を手刀で切断した。
切り口からは、血がブシャー!と出てるけど、お構い無し。そしてそのまま切断した腕をムシャリ。
て?ん?
ヤバい爺さんは、美味そうに腕にむしゃぶりついている。
『うん。これは見なかったことにしよう』
ちょっと、衝撃的なヤバいジジイの行動を見て、軽いショックを受けてしまったけど、多分、この世界では人食は普通の事なのだと言い聞かせる。
爺さんは、食事を終えると、なにやら魔法を使い、奴隷の腕の止血をして寝に行ってしまった。
研究室に残された3人の奴隷は、ボーと立ったまま。
多分、ジジイに寝る事も許されていないのだ。
敢えて触れてないが、奴隷達は、糞尿を垂れ流しにしてるし、きっと俺に鼻があったら、物凄く臭いのだろう。
次の日、また、ジジイが研究室に現れて、魔眼作りを始める。片手を切られた奴隷の、もう一方の目で。
ジジイは、オヤツ代わりに両目を失った奴隷を食べつつ、魔眼作りにいそしむ。
そして、更に3日後。2人目の奴隷の眼球をくり抜いた時点で、3人の奴隷は全員死んでいた。
無理もない、だって爺さん、奴隷達に食事も睡眠も与えていなかったのだ。
そりゃあ、スグ死ぬよって話。爺さんに食われて死ぬか、衰弱死するかどっちかしかないのだ。
まあ、爺さんは、死んでしまった死体を個切りにして、魔法の鞄にせっせとしまってしまった。魔法の鞄とは、所謂、インベントリの事。異世界アニメとかに出てくる時間が止まって、たくさん物が入る鞄ね。
それにしても、3人目の奴隷の目玉は使わないんだ……。
生きた人間から、眼球を取り出して使う事に拘ってるなら、3人の奴隷に食事や睡眠を与えれば問題無かった筈なのだが、魔眼作りにしか興味が無いのか、そんな簡単な事にも頭が回らないらしい。
そして、このイカれた爺さんの生活は、この繰り返し。
どこからか奴隷を買ってきて、魔眼を作り、食事は、目玉をくり抜いた人間。
ある意味、素材を無駄にしてないが、それでいいのか?
三国志でも、劉備が人肉を食べるシーンとかが書かれていたけど、この世界では、三国志の時代みたいに、多分、人肉を食べるのが普通なのだろう。
そう思わないと、俺の精神が病んでしまう。
そんなヤバい爺さんの日常を観察しつつ、先輩や後輩の魔眼達が、たまに爺さんに持ち出され、売りに出されるのを、悔しく悲しく見送る日々が続く。
そして、そんな有り得ない凄惨な日々に慣れた頃。
俺の未来に係わる猫耳奴隷の幼女が、爺さんに連れられ、研究室にやって来たのだった。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
ついに、ヒロイン?の奴隷幼女登場です。