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2. 卍魔眼

 

 俺は、一瞬。爺さんに握り潰されて、死んだと思ったのだが、どうやら死は間逃れていたようだ。


 俺は、鑑定眼として失敗作だったとしても、イカれた爺さんの集大成だったらしく、潰すに潰せなかったのだろう。

 とても、爺さんは大激怒してたのだが、普通に、液体の入った瓶に入れられて、蓋を閉じられた。


 多分、長年の自分の研究の結晶を、自分自身の手で握り潰すのは、はばかられたのだと思われる。


 因みになのだが、俺は、爺さんの研究室の棚に置かれている。


 研究室は地下にあるらしく、暗くてカビ臭い。

 棚には、俺と同じように、瓶に入れられた眼球が、ズラリ並べられていて、とても不気味だ。

 まあ、俺も同じ眼球で、俺自身も不気味なんだけどね。


 しかも、全ての眼球入りの瓶には、しっかりラベルが貼ってあり、分類されている。

 なんか、透視眼やら、石化眼、千里眼、未来視眼、レーザー眼やら色々な魔眼が有る。


 丁寧な事に、1級から10級まで、能力や効能によって等級が付けられている。


 ん?俺の等級?

 俺は、なんと15級。


 どう考えても10級までしか無いのに、なんで?て、感じ。


 まあ、俺が、爺さんの事を、イカれジジイとか、鼻毛ジジイと鑑定した事を根に持ってるとしか思えない。


 しかも等級だけでなく、値段まで全てのラベルに書かれており、1級の未来視眼には、3億Gと書かれている。因みに、俺はというと、値段が付いてない非売品。売り物にはならないという事らしい。


 まあ、考え方によっては、非売品って、他の魔眼と違いを感じられ、特別感を感じられて嬉しい。

 なんか、涙が止まらないけど。多分、俺が裸眼だからだろう。


 まあ、冗談は置いといて、俺が15級にされてしまったのは、俺の反応が遅かったのも理由の1つだったりする。

 爺さんが、何度もステータスオープンと言ってたのに、30秒くらいたって、やっとステータスオープンしたり、後から鼻毛ジジイと付け加えたのが、主な原因。


 ハッキリ言うと、使い勝手が、物凄く悪いのだ。しかも、大した情報開示もできないし。

 主に、ジジイの悪口しか鑑定してないし。

 確かに、ダメダメな鑑定眼だよね。


 そんなダメな魔眼なのだけど、気付いた事もある。

 俺って、物凄く格好良い魔眼なのだ。

 間違いなく、棚に並んでる魔眼の中では、一番格好良い。だって、瞳孔に卍が刻まれてるんだよ!しかも、なんかよく分かんない魔法陣まで、刻まれてるし。

 俺が中二病なら、機能はさておき、絶対に欲しいと思うしね。


 ん?見た目だけのダメ魔眼?


 イヤイヤイヤ。俺は、意志を持つ魔眼なんだって。これって、物凄く凄い事なんだから。


 だって、人の言葉を理解できちゃうんだよ。爺さんの独り言だって理解してるんだから。


 なんか、とても独り言が多い爺さんで、ずっとぶつくさ言ってたのを聞いて分かった事なんだけど、俺って、異世界勇者の持つ鑑定スキルを模倣して作られた人工鑑定眼であるらしい。


 勇者の持つ鑑定スキルって、それはもうチートスキルらしく、敵の弱点は看破できるは、物の価値も何でも分かるは、そりゃあ、冒険者も商人も王様も貴族も、誰もが、喉から手がでる程の欲しいスキルらしいのだ。


 だって、人を見るだけで、名前、性別、趣味、思考。何でも分かるって凄すぎるもん。

 占い師になったら、めちゃくちゃ儲けれるよ。だって、人間関係やら何でも鑑定できちゃうんだもん。


 そんな鑑定スキルを、300年生きてるという大錬金術師の爺さんが、得意分野の魔眼作りの集大成として、鑑定スキルの魔眼を作ろうと思った訳。


 因みに、俺の眼球に描かれてる魔法陣は、転移の魔法陣らしく、それにより、俺は魔眼に召喚されちゃったらしい。

 何で、転移の魔法陣かというと、鑑定スキルが、異世界勇者の特有のスキルらしいから。異世界に関係ある事なら、召喚魔法陣だろ?って、爺さんは考えた訳。


 しかも、情報収集の魔法陣も眼球に組み込まれてるらしく、俺は、何でも色んな事を検索出来ちゃうのだ。地球の知識限定で、ネットで調べるみたいに。というか、ハッキリ言うと地球のインターネットと繋がってる。


 なんか、召喚の魔法陣と情報収集の魔法陣がバグって、地球の知識限定になったみたい。そもそもこの世界にはインターネットが無いしね。


 簡単に言うと、召喚魔法陣が地球とこの世界をリンクさせて、情報収集魔法陣がスマホの機能を果たしている。


 解り易くスマホと言ったけど、俺が調べようとしなければ、一切分かんないという事。


 どんなに宿主が知りたかったとしても、俺が教えたくなかったら、教えないし、調べたくなかったら、調べない。だって、俺って、意思がある魔眼だからね。


 俺の正しい使い方は、俺の宿主が、何か知りたいと思った事を、俺が代わりにスマホで検索して教えてあげるような感じ。

 なんか、物凄く、ハイテクのようでローテクなんだよね。


 しかも、こちらの世界の知識は全く分からないから、本当に役立たずだと、爺さんに思われちゃったんだよね。


 しかしながら、こちらの世界の知識は無くても、俺には一応、情報収集の魔法陣も組み込まれてるので、情報収集はお手の物。無ければ、新たに集めればいいだけ。今現在も、ノンストップで、情報収集してる所。


『イカれジジイめ。俺を早くに見限った事を、スグに後悔させてやんからな!』


 これが、今の俺のモチベーション。


 なんか、俺には、透視の魔眼や千里眼の魔眼も組み込まれてるらしく、遠くにある本とかも、色々読めちゃうのだ。


 そして、多分、俺に透視の魔眼が組み込まれてるのは、理由があると思う。


 何だと思う? ほら、俺って、格好良いじゃん!

 何度も言うけど、黒い瞳孔に白字の卍が描かれてるんだから!

 しかも、眼球全体に魔法陣が描かれてるし!

 人に見られたら、『キャー!卍の魔眼、カッコイイ!』て、なるじゃん!


 だから、普段、宿主は眼帯付けて、俺を隠す感じね。

 眼帯付けて片目になると、平衡感覚が狂っちゃうから、透視の魔眼が組み込まれている訳。


 なんか、棚にもたくさん透視の魔眼が置いてあるから、この世界にも覗き好きが多いのだろう。需要と供給だよね!

 それか、ただ単に、爺さんが、透視の魔眼を作るのが得意なだけかも?


 まあ、全て、俺の妄想なんだけど、まず、間違い無いと思う。

 ほら、俺って、唯一無二の意志を持つ鑑定眼だからね!


 俺は、こんな感じで、毎日、妄想して過ごしている。

 だって、俺、瓶の中から出れないから、妄想する事しか出来ないのだ。


 全ては、爺さんに無価値な魔眼と思われてしまったのが、大失敗だった。

 ファーストインパクトの時、ダンディーでイケオジと鑑定していれば、俺の人生も変わっていたかもしれない。


『なんで、あの時、俺は、鼻毛ジジイと付け加えてしまったのだ』


 悔やんでも悔やみきれない。だって、そのせいで15級だぜ!

 もう、爺さんにも、ましてや、他の人に使われる事はない。

 なにせ、俺は、売り物にもならないと思われてる魔眼なのだから。


 なので、今は、ただただ目玉にされたショックを忘れようと、俺は出来るだけプラス思考で生きている。

 現実逃避だけが、俺の心を保つ唯一の方法なのだ。


『非売品なんて…… 俺は一生、棚の上で、瓶の中で過ごすなんて絶対に嫌だよーー!!』


 現実に戻ると、いつもこんな感じ。

 俺の心の叫びが、虚しく響く。

 心の叫びなので、実際、何も響かないけど。


 だけれども、今日から3日後に、そんな虚しい日々も吹き飛ぶ、衝撃的な出来事が起こったのである。


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