ウルフさん
大学生だった頃、学校食堂でバイトをした事がある。
パスタをおもにする、簡単な洋風な食堂だった。
席には1番から10番みたいな形で、番号が振り分けられていて、初めバイトをする時、その席次を覚える訓練を積んだ。
慣れてきたある日、2人の女の子が、新しくバイトに入ってきた。
バイトはお昼ご飯が出る上に、時給も出ると言った高待遇だっため、人気があった。
ある時、忙しい12時のお昼戦線。
パスタの注文を聞いて、伝票を厨房に運んだら、違う席のパスタが出来ていた。
届けようと、伝票を取って勇んで、パスタを運ぼうとした所、伝票番号が書いてない事に気づいた。
だが、伝票番号の所に何か文字が書いてある。
読んでみると、ウルフさんと、書いてあった。
ウルフさん??と疑問符が一杯になったが、パスタは続々出来上がる、だが、ウルフさんというのが、どの席なのか分からない。
どうしよう。困っていた。
その時、後ろに新しく入った女の子がいたので、一応聞いてみた。
すると、髪型がウルフの人だよと謎の解答が返ってきた。
髪型がウルフ??ウルフってどんな髪型だよ。と思いながら、案内してもらい事なきを得た。
だが事件は次の日にも起きた。
ちょっとイケメンな人と伝票番号に書いてあるのだ。
ここで断っておきたい。店の伝票番号の所は、お客様の伝票には複写されず、当然バレない。
しかし、バレないからと、ちょっとイケメンの、ミートスパゲッティの、ジャンボを頼んだ人とは呼ばないし、この伝票を書いた人の男の趣味など、全く分からない状況で、運びようがない。
かと言って、入ったばかりの、同じ学校の女の子を叱る事も難しく、穏便に行きかった俺は、いつのまにか同調してしまうようになった。
当然お客様の特徴を書くのは、もっての他である事は重々承知である。
だが、人は時として、楽な方へ進んでしまう。
気がついたら、俺も、オシャレな黒い服の人などと書くようになってしまった。
だが、事件は起こった。
ある時、可愛い人と書いてみたら、同じバイトの女の子の友達グループだったらしく、可愛い人だってとバラされてしまった。
しかも、俺が書いた可愛い人にではなく、先輩の彼氏がいる、全く別の女性に伝票が渡されてしまった。
先輩からは睨まれるし、その伝票を渡された人にはごめんなさいと言われて、彼氏をいかに好きかと、惚気話を聞かされるハメに。
悔しい。そう思って、女の子への復讐に燃える事になったのだが、中々隙をみせない。
しかし、転機は訪れた。
何と伝票にもろタイプとかかれた伝票が、目の前にあったのだ。
しかも、その男性の位置を聞いて、顔を見てみると、面識のある同級生だった。
これは仕返しのチャンス。と思って、何かタイプらしいよと、男に伝えると、まさかの、まんざらじゃない顔に。
しかも立ち上がって、急に告白し始めた。
これはまさかの両思い??
俺の復讐は、幕を閉じたのである。