望郷
「かんぱーい!」
ギルドに戻った後、私たちはキメラ討伐の祝いで飲んでいた。
……疲れた体に、お酒が染み渡る。純粋に、美味しい。
「ほんっとうに凄かったです!一生付いていきます、ソフィーさん!」
「何度も言うが、其方たちが弱らせてくれたお陰。半分ぐらいの体力は其方たちが削っていたぞ?」
「いやいや、逆に言えば残り半分はソフィーさん一人で削り切ったってことでしょ?!やっぱり、ソフィーさんはすごい!」
「ふふふ、ありがとう。だが……其方たちがこの一年間で、とても成長したのは事実。其方たちの一番近くで見ていた妾が言うのだから、間違いない。皆、頑張ったな」
四人とも、瞳が涙で潤んでいた。
……そんなにお酒、飲んでいたかしら?と、内心首をかしげる。
「ありがとうございます!」
「嬉しいです!」
「これからも頑張っていきます!」
「これからもご指導を、よろしくお願いします」
四人が興奮したように、思い思いの言葉を口にしていた。
そしてそれから、飲めや騒げやの大宴会。
夜が深まっても尚、手と口が止まることはない。
「……そういえば、ギルドの者たちに聞いたぞ?皆、今回の依頼達成を機に、暫し休養を取るのだと」
「え、ええ。僕の姉が結婚することになりまして。せっかくだから、帰省がてら結婚式に出席しようかと。そしたら、皆も着いてきてくれることになりまして」
「ディオンが帰るなら、僕たちも一緒に帰ろうって話になったんです。最近、依頼を高頻度で受けていたので、少し体を休めたいな、と」
「ほう……其方たちは、同郷であったか」
「あれ、言ってなかったでしたっけ。僕たちは、ヴェルナンツ王国との間にある、ど田舎の村出身です」
「仲が良いと思っていたが、そうか……。ふふ、一度は訪れてみたいものよ」
「是非!」
「ソフィーさんは、どの辺り出身なんですか?」
「妾は……」
カロルの問いに、暫く固まった。
「王都に来ると決めた時から、故郷は捨てた。今の妾の故郷は王都よ」
「そ、そうですか……」
想定外の回答だったのか、カロルは困ったように視線を泳がせている。
そんな彼女の代わりに、アメデが反応した。
同時にカロルを注意するように、肘で小突きながら。
「気にするでない。根無草もハンターらしかろう?……それよりも、きっと、村の皆も其方たちのことを心配していたであろう。元気な姿を見せてやるが良い」
「ありがとうございます!」
その後も楽しく会話をして、解散したのは夜明け前だった。
……故郷、か。
帰り道、カロルの質問を頭の中で反芻しながら歩く。
愛しくて、けれども、憎らしい。
そんな相反する想いが同時に芽吹く、そんな場所。
この国に来てからヴェルナンツのことを思い出すことなんて殆どなかったのに、急に色んな思い出が浮いては消えていく。
良いそれも、悪いそれも。
全ての歯車は、ルナである私が力を授けたことから狂った。
そして狂ったまま回り続ける歯車の延長線上で、私ことソレイユは生まれた。




