妖精たちの親愛
キーアたちが初めて妖精の森に立ち入ってから約1週間が過ぎた、ファイとローは何処かに遊びに行こうとしていた
「今日はどこにいこう?」「やっぱり」
「「あそこだよね!」」
妖精で人間の場所に遊びに行く者は基本、月に1回行くか行かないかである、楽しいと思う者でも「安全」とは限らないからである。今までに妖精で人間に捕らえられた者がいた、というのは有名な話、しかしそれで妖精が「人間」を恨んでいるということはない、魂で感じることが出来る妖精は種族で判断せずに、あくまで個でみるのである。
さて、今日、ファイとローが遊びに来たのは王都サルエードである、時間は夜だった。
楽しみ方は飛んで見て回るだけで楽しいのだが、今日はあわよくばあの3人に会えたらいいなぁっと思いながら王都を選んだのである。
夜だったので人は少ない、上空をゆっくり飛んでいて、時折地上付近に切り替え建物を見たり人を近くで見たりしていた
門の傍を飛んでいる時だった
「……キーア・トイエック………」
ファイとローはキーアの名前が聞こえて気になって傍に寄って隠れた、話していた人は二人で二人共魂がすごく穢れていたのである、普段なら絶対近寄らないような者である
「全然見つからないぞ」「そうだな、はやく終わらせて遊びに行きたいな」
「「???」」
ファイとローはお互いに顔を傾げる、キーアを探しているらしい。お互い頷き合う
「「嫌な感じがするね」」
ファイとローは急いで家に帰る
「「ハハー!」」「どうしたの!」
ファイとローの剣幕に何かあったのかと居住まいを正した、二人は今日見た事を話すとフィンリィは思考を次々に巡らしていく
「(キーアちゃんが狙われている可能性が高いわね!、まだ会って間もないけれど恨みをかう娘でも与える娘でもないわ、一方的な何かがあったとみるべきね)。
いいわ、あの娘は出逢ったばかりだけどとてもかわいい娘、助けてあげましょう♪」「「うん♪♪」」
「まずは情報ね…、私が見張ってくるから少し家を空けることをみんなに伝えてもらえるかしら?」
「母、ぼくがやるよ!」「わたしがやる」
危険なのは承知だ、友達のためならそんなこと知ったことじゃないと二人が買って出るとフィンリィはあまりにも真剣な様子に「そうね…」と悩んでから一人の強力な協力者になるかもしれない、という者を訪ねなさいと話して任せることにした。
ファイとローが再び王都に行くとファイはお城にローは門に分かれて行動した。
ファイはお城のとある窓をリズミカルに4回ノックすると、小さい穴が開き通過すると戻っていく
「わぁ!!、いけない、いけない!」
楽しくなってしまう心を引き締める、言われた通り道を通り三つ目の部屋で少し不安そうに待っている、数分経った頃に音も無く扉も開かずに掃除道具を持った執事らしい男性が部屋の入り口に立っていた、男性は部屋を見回すとファイの方を見て
「///?」
妖精の音の殆ど無い言葉で用件を尋ねてきた、ファイは理解して妖精の言葉で会話する
(※この部屋での会話は妖精の言葉です)
「用件は何ですか?」
「ぼ、ぼくはファイです!、協力をして欲しくて、母フィンリィに紹介されました」
「フィンリィ様にですか!、分かりました。
何をお望みなのでしょうか?」
ファイはこれまでの経緯を話す
「・・・分かりました、こちらでも調べさせてもらいます」
ファイはこんなにあっさりと協力してくれるとは考えていなかった
「ありがとうございます!」
「いえ・・、分かりましたらフィンリィ様にお伝えするので、そのことをお伝え下さい」
「わかりました!」
早く帰った方がいいと男性はファイを帰らせる、ファイはローと合流して特に動きはなかったと家に帰るとフィンリィと情報を共有して休んだ
チェスターは第二王子クエルのお付きをしている、しかし今は人間だが元は妖精であった。
クエル様のお仕事中に城に入ってくる妖精を結界で感知した、現在ここに来る者など、フィンリィ様くらいしかいないはずだが、クエル様に許可をもらい向かってみればそれは違った、結界を潜れるのだから悪い者では無いので用件を尋ねる、その内容は国にも関わる事だった…、確かに個人の恨みの問題っぽいが「兵士」「報酬」「命令」この辺りに置き換え出来るだろう、クエル様には報告するべき事案に辟易しつつ調べることにする
しかしすぐにその一部が分かることになった
クエル様のお友達のキーア様方がやってきて、何やら魔法の実験をしている時でした、隠れて門を監視していると門兵をしている者が移動し始めキーア様を窺っていて魔法の準備をしていました、止めようかとも思いましたがキーア様の状態で大丈夫と思い証拠を出させる方へと切り替えました、すると案の定門兵はキーア様を攻撃してそれが失敗し逃げて行ったので追いかけ魔法で拘束して眠らせておいた、戻って観察していると、兵の総隊長様を知らない姿で連れている、魂で誰だか分かるが兵士を敵にしている中でその者と一緒というのはよっぽど信用しているのだろう、事実綺麗な魂をしている。関係者は分かったので先程の兵を連れてクエル様へ報告すると、早速動いて下さった。
わたしは妖精の森の入り口(チェスターには壁に見えている)に姿を隠蔽しながら前で立ち、手を翳しフィンリィ様へと一方的だが伝言を送る
「ふぅー…」
少しフラつく足取りで帰るまで姿を現さないよう維持させて、暫し休ませてもらった。
「久しぶりね♪、出来ればこんな事で行きたくなかったわ…」
報告を聞いた次の日、フィンリィとファイ・ローは王城に来ていた
チェスターにクエルの自室に案内されている
「あまり時間が取れないから手早に打ち合わせをしましょう!この部屋から情報が漏れることはないから安心してね♪」
「分かったわ♪協力ありがとうございます」
「いえいえ、キーアさんのためなら協力は惜しみません」「「良い人です」」
クエルは妖精を視認することも声が聞こえることもないので、会話はチェスター仲介で会話されています。色々話し合いが始まる。
捕まった兵士については絶対に口を割らなかった。警備兵総隊長による、本人たちからの情報によるとギルド関係者もこの件に関わっている者がいるらしい、現在調査中。
「こんなところかな?」「ええ、そうですね」
「情報を提供してくれた、ファイさんとローさんにはとても感謝しています」「「は、はい!どういたしまして!」」
ファイとローがどぎまぎして返すとチェスターも姿勢を正す
「わたしからもありがとうございます」「「は、はい」」
「ふふ♪クエル様もあの娘たちのお友達とは世間も狭いわね♪」「…えぇ、感謝しております」
また次の日に集まる約束を交わして解散した。
その日の夜にフィンリィとチェスターは捕まっている者達の元へと集う
「迷惑かけるわね」「大丈夫です、クエル様も今回の黒幕に見当を付けておりますので…。ずっと更生を望まれていましたが…」
「そうね…、でも悪いことはいけないわね、お仕置きしてあげなくちゃね」
チェスターも首肯して足を進める、見張り番は眠らせて犯人に接触する、何もかも受け入れた黙秘の構えだ
「えらいわね…」
フィンリィは悲しみの表情をして男達へと魔法を使うとチェスターに顔を向ける、チェスターは一つ頷くと一つ一つ質問をしていく、すると表情でこそ苦悶を浮かべ抵抗しているが正直に答えていってくれる
出てきた名前は予想していた通りだった、今日の仕事はここまでとそれぞれため息をついて別れた
次の日に集まった時に昨夜のことも話し合い、クエルの父にも報告することとなる。
「そっか…、仕方ないとは思うけれどもやりきれないねぇ…。
フィンリィさん、ファイさん、ローさん
本当にありがとうございます、彼の処分はとても重いものとなるだろう!
君たちが求めることはあるかな?」
「ありません♪二人はどうかしら?」
ファイとローは見合わせて
「キーアさんたちが」「レティさんたちが」
「幸せならそれでいいの♪」「危険がないなら一番なの♪」 「「なにもないですよ!」」
フィンリィもとても嬉しそうだ、チェスターがクエルに伝えるとクエルもにこやかに「そうだね、良かったよ♪本当にありがとう♪」とお礼を言うのだった。
キーアたちがトレスタークと会う約束をしている前日、クエルたち4人は証言と証拠を集め彼に、最後に魔法をかけて大きな広間へと赴き裁かれたのであった。