表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

駅の改札を出て、とりあえずこの少年と別れようと思った。

 「じゃあ、僕はこっちだから」

 「え? こっちでしょ? 」

当たり前だろうといわんばかりに少年は僕の腕を引く。少年とは思えないほどの力の強さだ。少年はどんどん歩いていく。既に少年はほとんど小走りだった。

 地元とはいえ、さすがに不安になってきた。道を覚えようと頭をフル回転させる。右、左、U字路をまがって……また左、間違えたみたいだ、右……交差点をまっすぐ、川を渡って……ダメだ、もうわからなくなってきた。 


 覚えていたところで僕がそれを元通りにたどっていけるかも怪しいものだが。

  



「ねえ、まだつかないの? 」

「いや、もうすぐだよ。」

さっきからこの会話を何回しただろうか。もうかれこれ一時間は歩いたような気がする。少年の歩く速さも最初に比べるとずいぶんゆっくりだ。小走りだったのが、今は一歩一歩踏みしめるようにして歩いている。

「疲れたなら休もうか? 」

「休んだらダメなんだ。絶対につけない。」

「そりゃそうだけど……」

「それに、僕は疲れてないから大丈夫だよ。」

本人がいいと言うんだからまあいいか。そう思った僕は話を変えることにした。

「これはどこに向かっているの? 」

「東だよ。」

東と言われても方向音痴の僕にはわからない。進んでいる方向がきっと東なんだろうな。地平線が見える。もうすぐ太陽が沈みそうだ。だいぶ時間がたってしまっているな。





……東?


東の地平線に太陽が沈むことなんてあり得るのだろうか。


「ね、ねえ、これ本当に東に向かっているの? 」

「そうだよ。」

 そう言って振り返った少年の手には方位磁針が握られていた。




 それははっきりと、僕らの進む方角が東であることを指していた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ