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 夜邪狗は突然の出来事に、言葉を失うが、すぐに、


「止めよ!我が国へ向かうぞ!抜かれるな!」


 弓隊は身構えるが、白兵戦に慣れぬ部隊は、なす術もなく抜かれる。


「後方。射よ!」


 蘇邑達は矢の雨をかいくぐって、邪馬台国へと迫る。


「くそっ!何という速さだ」


 夜邪狗は驚きの表情で、駆け抜ける軍を忌々しそうに見つめる。

 彌眞が進み出る。


「私が行きます」


 邪馬台国には十六夜、采乎そして守るべき人達がいる、決意に満ちた顔で言う。

 夜邪狗はそんな彌眞をじっと見つめて頷く。

 瞬間、彌眞は駆けだした。


「足自慢の者は、急ぎ彌眞を追いかけ共に戦え」


 夜邪狗の命に数人の兵士が走り出す。


 難升米も軍の三分の一を副官に託し、邪馬台国へ向かわせる。

 蘇邑の乱入で、弓の攻撃が弱まり、再び狗奴国軍が押し返してくると、残り全軍で応戦する。

 再び白兵戦となり、今回は圧倒的な力で邪馬台国軍が押し込んでいく。

 指揮官は最後尾へと下がり、統制の全くとれない狗奴国軍は、崩壊寸前で逃げ帰ろうとする兵士も現れ出す。

 懸命に副官や部隊の長が、おさめようとするが、すでに歯止めがきかない。


 難升米、夜邪狗ともに勝利を確信する。

 が、懸念は邪馬台国に向かった一軍、が今は、向かった者達を信じて、狗奴国軍を壊滅させるべく兵を進めた。


 余波は長いこと泣き崩れていた。

 無言のまま、痛みに耐え、彼を見守り寄り添う年長者もいる。

 腫れあがった顔をあげ、年長者に無言で悔しさを訴える。

 年長者は力なく、小さく頷くと、


「余波様、我が国へ帰りましょう」


 余波は彼の言葉に、涙を滲ませながら頷く。


 年長者が微笑みかけた瞬間、彼の首に突然、鉄戈が薙ぎ払われる。

彼の首が上空に刎ねあげられる。

血飛沫をあげながら、胴体が倒れ、余波の眼前にぽとりと笑顔を見せる年長者の首が落ちた。


余波の時が止まる。

涙も止まる。

心も止まった。


余波は眼前の敵を呆然と見上げると、狂気の世界へと堕ちた。

落ちた鉄剣を素早く拾うと、兵士に飛びかかり突き刺す。

白い霧が飛沫の線を引くと、兵士は心臓を一閃され絶息する。


ゆるり蘇奴国軍を余波は見た。

先頭を駆けてきた馬上の兵士は、余波の狂気の沙汰に怯む。

しかし、仲間の死に報いようと、馬上から降り一斉に彼に襲いかかる。


彼は狂いの喜悦の奇声をあげる。

無造作に鉄剣を振り回すと、円状に白い霧が発生する。

そこへ突っ込んで行き霧に触れた兵士達は、胸元から血飛沫をあげ次々と絶息していく。


阿鼻叫喚と化す惨場に、足元がすくむ蘇奴の兵士達。

余波は薄ら笑い舌なめずりすると、駆けだし、飛びかかって、襲いかかる。

兵士達は逃げまどう。

背後から、余波は容赦なく剣を一閃する、逃げる兵士を悉く血の海に沈める。


我を失った余波は、凶刃を振るいまくり、多くの兵を死へと追いやる。

鏡片が妖しい光を放つ。



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