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白兵戦の様相は凄まじさを増していた。
邪馬台国の軍勢が、一気に狗奴国軍を押し込むと、統制の取れていない敵軍は脆くも崩れ去ってしまう。
が、一方で追い詰められた狗奴国軍の兵士が死に物狂いで押し返そうとする。
強烈な反撃にあい、邪馬台の兵が浮足立つ場面もあり、戦いの最前線は凄惨とした修羅場が繰り広げられている。
離れた場所から援護射撃を行おうとする夜邪狗率いる弓隊は、状況を逐一推し量っていたが、混乱する戦場に敵味方入り乱れての乱撃に斉射する機会を見いだせない。
難升米は状況を見極め、推し量り、ここら辺りかと判断すると、一旦、兵を退かせる。
押し込み邪馬台国が逃げたかのように思えた狗奴国指揮官は、勝機と思い突撃を命じる。
邪馬台の兵は難升米の絶妙なかけひきで退き、弓矢の射程範囲外へとさがる。
それを見計らい、夜邪狗は命じる。
「放て!」
と大音声で叫ぶ。
一斉に矢が放たれる。
彌眞も躊躇なく弓を放つ、躊躇すれば自分がそして仲間が危うい。
鏡片の力が発動し、彼の放った矢は眩く光を放ち、次々と兵を撃ち抜く。
無数の矢の雨が、狗奴国軍に容赦なく降り注ぐ。
勢いに乗じたと思った狗奴国指揮官は、敵の策に落ちてしまったことを、歯軋りして悔しがる。
「退却っ!」
悲痛な叫び声をあげ退却を命じると、自分は一目散に逃げる。
そのような状況では、伝令も伝わらず、狗奴国兵の犠牲は後をたたない。
難升米は勝利を確実とするため、敗走する敵軍に追撃を命じた。
そんな最中、邪馬台国軍弓隊の側面から鬨の声があがった。
蘇奴国の騎馬隊は一気に弓隊を切り裂き、突き破る。
彌眞の眼前を蘇邑はすり抜ける。
瞬間、二人の視線が合う、蘇邑は薄気味悪く笑った。




