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85/108

85

 余波が邪馬台国にやって来たのは、二日ほど前の事だった。

 彼はいつもの高慢さで、年長者と新たな五人の従者とともに現れた。

門前にて尊大な態度で、卑弥呼との面会を要求した余波は、邪馬台の兵士に文字通り門前払いで拒否された。

 彼はそれに怒り狂い、鏡片をこれ見よがしに見せびらかした挙句、兵士を口汚く罵った。

 その場にいた夜邪狗は苦笑し、隣にいた彌眞は、顔を真っ赤にして自分の事のように恥じた。


 しばらく続く余波の罵声に、夜邪狗は呆れかえり眺めていた。


「あれが・・・鏡片を持つ者か」


 彌眞は俯き頷いた。


「成程・・・とんでもない奴だ」


 彌眞は恥ずかしさで、身体を小さくしている。


「では、彌眞。あれはお前の仲間だな」


 彌眞は首を振って否定したいところだったが、鈍重な遅さで頷いた。


「五月蠅くてかなわん。行って連れて来い」


「はい!」


 彌眞は言われた瞬間に飛び出し、ものすごい形相で余波の元へ駆ける。

 真っ赤な顔をして、余波に注意をしたが、逆に怒り狂ってしまった彼を止められず、何故か謝ってなだめすかしたのであった。

 そして、今に至る。


(これ以上は本当に御免だ)


 彌眞は再会の時を思い出し、身震いする。

 余波は急に黙り込んだ彌眞に、言いくるめたと得意満面の顔で年長者を見た。

 

 その時であった。

 行軍の動きが止まる。

 よそ見をしながら歩いていた余波は、前の兵士とぶつかり、厳しい形相で睨まれる。


 邪馬台国軍は川を狗奴国軍は山を背にして、見晴らしのいい平野で対峙している。

 前線にいる邪馬台国軍、指揮官将軍難升米は対峙する狗奴国軍を睨みつけている。

 伸びきった髪に、日焼けした精悍な顔つきは壮年に達していて、背は高くないが、屈強な筋肉質の身体からは気迫が漲っていた。


難升米は目を凝らす、狗奴国軍に混じり、蘇奴国軍が見える。


「ふん、狗奴国連合軍という訳か」


 難升米は一人呟く。

 副官の男が訝し気に指揮官を見る。

 彼は独り言を言った自分に苦笑いを浮かべる。

 それから鋭い眼光で対峙する敵を見つめる。


(兵は、やはり憔悴しているようだな)


 難升米は対峙する兵士の動きが鈍い事を見逃さない。

 両国は対峙したまま互いの様子をうかがい、静観を続けている。

 難升米はじりじりと照りつける日差しに目を細めると、


(そちらが動かぬなら、もっと苦しめるか)


 彼は動かない事を決め、副官に、


「敵が動かぬ限り、こちらは動かぬ。その旨を各部隊に伝えよ。ただし警戒を解くなよ」


 副官は頷くと、早速伝令に告げ、前線部隊には自ら大声で伝える。



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― 新着の感想 ―
[良い点] もう一周回って、余波というキャラの運命が気になり始めました。戦死か反乱か、はたまた戦で大きく成長するか。 [気になる点] サブタイトルの話数が前回と被ってます。 [一言] 各章の始まりがサ…
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