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十六夜は神殿の屋根にのぼり、狗奴国軍に向かい、進軍する邪馬台国の軍勢を見ていた。

壱与と采乎は屋根の下から、彼女の様子を見ている。


(あの中に、彌眞が見る)


 今すぐにでも追いかけていきたい気持ちを堪えながら、屋根下の二人がいる場所へ飛び降りる。

とんと、軽い着地の音がする。


「壱与様、出発しました」


 十六夜は、いてもたってもいられないと、二人のいる場所からでも、邪馬台国の軍勢を見ようと縁のギリギリまで立ち外を眺める。


「無事だといいですね」

 

十六夜の背後から、壱与が気づかいの声をかける。


「彌眞様なら大丈夫ですよ。勿論、邪馬台国の兵士の皆さんも」


 采乎は彼女を励ます。

 十六夜は振り返ると、何度も頷いた。

 不覚にも涙が溢れ、また背を向けて涙を拭った。

彼女は振り返ると、精一杯の笑顔を見せる。


「はい、きっと」


 不安を押しとどめ、彌眞を邪馬台国を信じる。


「私が来て、助かっただろう」


 行軍する中、余波は胸を張り、隣の彌眞に言う。

彌眞は、何度も恩着せがましく言う余波の言葉に辟易しながらも「はい」と相槌を打つ。


「余波殿・・・」


「なんだ。礼を言うのか」


「いえ、ここは弓隊ですよ」


「それがどうした。聞いたぞ、鏡片の持つ力の事を、ならば共にいた方が邪馬台国にとって、好都合だろう」


「・・・・・・」


 余波の一理ありそうで全くない言葉に返す言葉もなく、彌眞は溜息をつく。

 こんな問答が、行軍がはじまってからずっと続いている。

夜邪狗は、弓隊の中に余波達数人の弥奴国の者達が鉄剣や鉄矛を携えて、この部隊にいるのを快く思っていないようだ。

しかし、夜邪狗が彼等を追い出さないのは、きっと鏡片の事を考慮してのことだろうと思い、彌眞も余波に強く言おうとはしなかった。

彼のとんでもなく破天荒な態度に、部隊が凍り付くこともしばしばで、常識として慎むように彌眞は柔らかく伝えるが、今の所すべて受け流されている。



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